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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
合い言葉は「RED」
36/42

シュント先輩のグルメ

 ボウ!と、炎が舞った。

 高そうな肉が、炎の中で踊る。それを真剣な目で見つめ、火力を調整しているのは、三つ編みに眼鏡の女子学生姿の美少年、シュント先輩だった。


『おおお!』

 男たちのはしゃいだ声が聞こえる。


 あの後、画像転移魔術を再び使って、私たち報道部一同が画面をのぞき込んだ瞬間、この画像が送られてきたのだった。


『すげーな!これが「フランベ」ってやつか!』

 ヤンチャ男が興奮しながら言う。

『あの……危ないですから、もうちょっと下がってください……』

 と、シュント先輩に言われ、男たちは『お、おお……』と素直に3歩ほど後ろに下がる。

『しっかし、こんなに凝った料理出されるとは、俺たちも思わなかったな!』

 普通顔が、ダイニングの椅子に腰掛けながら言った。

 テーブルの上には、オリーブオイルをかけたチーズをカットした、オードブルが並んでいる。おそらく、私たちがパンを買ってきたら、一緒に出す予定だったのだろう。

『顔も可愛いですしね。ホント、男にしておくにはもったいないですよね……』

 地味顔が、しみじみと言う。

『そ、そうですか?ありがとうございます!』

 シュント先輩も、そう褒められてまんざらでもなさそうだ。


 しかし、それをイライラと見つめているのが、例の女教師風であった。

『ふんっ!でも、男は男じゃないのよ!子供を産めないなんて、所詮女には敵わないのよ!』

 そう文句を言いつつ、ぐびぐびとワインをあおる。

『わっかりませんよー?魔法かなにかで子供作れたりして-?』

 ヤンチャ顔がそう言い返すと、女教師風に『魔法とか革命軍の恥よ!』と、きっとにらまれ、『すいません……』と謝る。


『んー、まあ、魔法というわけではないですけど、一応男性が妊娠できるようにできる方法もあるそうですね』

 シュント先輩がそう答えると、男たちは『ほらほら~!眼鏡君、話がわかるじゃないか~』と盛り上がってみせる。


――

「……何よこれ」

 ウィバー部長が、そう呟く。

 私たちも、「さあ……?」とだけしか言えない。

「あ!で、でも、シュントさんがもしかして、脱出する機会をうかがうために、薬か何かを混ぜた料理を振る舞ってる……とか……」

 そう、セロン先輩が言うが、

「あいつは料理バカだから、多分、美味い料理作ることしか考えてないわよお!」

 と、部長にたたっ切られる。


「部長にバカって言われたくはないですよね」

 私がそう呟くと、

「ああん?」

 と、部長がそれを耳ざとく聞きつける。


「しかし……警察も、何もしてこないですよね?普通、魔術か何かでばーっと捕まえられそうなものですが」

 私がそう疑問を口にすると、セロン先輩が、それに答える。

「多分、魔術が効かないから、警察も下手に手出しできないのよ」

「魔術が効かない?それってやっぱり同じ魔術じゃないんですか?」

「アンチ・マジック装備といってね、装備品……たとえばネックレスとか指輪とかの装備を付けると、魔術に対して対抗できる装備があるのよ。……でも、普通、軍とかそういう特殊な環境でないと、手に入らないはずなんだけど……おかしいわね。銃もそうだわ。いわゆる魔力を持たない『一般人』がそうそう手に入るはずはないんだけど……」

「闇ルートってこともあるかもねえ」

 部長が、セロン先輩の考察に口を出す。

「あいつら、一般人の中ではエリートだったかもしれないけど、そこで魔術を使う私たちのような人間の壁にぶち当たって、逆に魔術を嫌ったってところかしらあ」


 私は、再度シュント先輩の画像に目をやった。

 ちょうど、厚く切った肉をさらにスライスするところで、紫タマネギで作ったソースまでそばにはある。


「……しかし、手が込んでる料理ですね……」

「シュントの料理は最高よお!私の舌が証明するわあ!」

「うわ、珍しく金持ちっぽいこと言った……」

「ちょっと、ロロ、私の扱いどんどん酷くなってない!?」


 そんな言い争いをしているうちに、料理ができあがったようだ。


『どうぞ、召し上がれ』

 シュント先輩が、にこにこと笑いながら、皿を差し出す。

 薄くスライスされた肉は、中まで火が通らないミディアムレア。タマネギとスパイスで作ったソースが、その肉を官能的に仕上げている。


『うんまそ~!』

『俺にくれ、俺に!』

『……私も、食べてあげても良いわよ?』

『姐さん、素直になってくださいよ~!』


 シュント先輩は、『沢山あるので、大丈夫ですよ』と言いつつ、次々と皿に盛りつけた。


「いいなあ~……」

「う……わ、私も、こんな時なのに、お腹すいちゃう……」

「確かに、美味しそうですよね……」


 私は、グルメ漫画よろしく、このままグルメで相手の腹を満たしたら、改心して自首してくれないだろうか、とも思っていた。

 まあ、それはないのだが、「同じ釜の飯を食った」ということで、犯人とシュント先輩には奇妙な連帯感が生まれていたのだった。

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