ガラ警部
「おハロハロー!警察の皆さあん!」
ウィバー部長が、いつもの調子で、背後から警察の群れに声をかける。警察たちは、突然現れた、マント姿の女子学生に戸惑いを隠しきれていない。
「この中で、この事件の指揮を執ってる人は誰かなあ?教えてくれると嬉しいんだけどなあ?」
部長がそう言うと、さっきまでメガホンで犯人と交渉していた、背の高いオーク族の女性がずいっと前に出た。
「私は、ガラ警部と申します。お話があるのなら、私が聞きますが」
ガラ警部は、オーク族特有の青い肌をした、モデルのように身長の高い女性だった。さらに、胸もヒップも豊満で、スーツの生地を押し上げている。その割りに、ウエストはきゅっと締まっており、さすがオーク族であり警察、身体能力は高そうである。
「まずは、ガラ警部、通報をしたのは私たちですう。くわしいいきさつをお話したくてえ」
「ああ、通報ありがとうございました。お話をお伺いしたら、警察車両で駅までお送りさせていただきますので」
「え」
「え、って何ですか。当たり前でしょう。学生を現場に残すわけにはいきません」
そりゃそうだ。私は、ガラ警部に納得した。
「でもお、人質に取られているのは、うちの部員なんですう。部員を残していくわけには……」
「大丈夫です。警察が総力を挙げて、学生さんは必ず救助いたします。ですから、お送りいたします」
「え」
私は、一切口を挟まず、部長がどう言い訳懇願してここに残るのかを見ることにした。
しかし、部長は、
「あ、そうですかあ。でも、送らなくても結構ですう。私たちは怪我もありませんし、自力で帰れるのでえ」
「そうですか?」
ガラ警部は、人員をあまり割きたくないのか、そう言って肯定した。私は、部長に「良いんですか?」とささやく。
「では、私たちはこれで……」
と、部長はガラ警部から離れる。私も、一礼して警察の塊から外れた。
「無視しないでください。良いんですか?部長」
「良いも何も、あの刑事、とりつくしまもないじゃない。ああいうしかないわよお」
「珍しいですね?部長が事件に関与しないって」
「だあれが関与しないって言ったっけえ?」
そう言って、部長はふふふと不敵に笑った。
「とりあえず、セロンとアジャリと合流しましょ。あと、かる~く聞き込みよお」
――セロン先輩とアジャリ先輩は、警察車両で送られる直前だった。
「ちょーっとすみませえん。その子たち、私たちの部活の子なんですよお。一緒に歩いて帰りますから、車から降ろしてもらって結構ですう」
そう、部長が言うと、警察の人は、ちらりとガラ警部の方を見る。そして、「そう言われるのでしたら……」と、2人を降ろしてくれた。
「ありがとうございますう。でも、一体どこの組織なんでしょうかねえ?あの人たちは。確か、自分たちでは『RED』って名乗ってましたけどお」
そう部長が言うと、警察官は、「ああ」と声を上げる。
「REDっていうのは、元々共産主義の革命家が掲げたんですけどね。でも、あの4人は違いますよ。確か……『アンチ・雪の女王軍』とかいう一派です。魔力を使わないのも、そのせいでしょうね」
「なるほど、なるほど」
部長はうなずいて、
「でも、実際は5人ですよお。仲間割れというか、内輪もめで1人が大怪我しているので、早く決着した方がいいですう」
と、忠告した。
すると、パトカーに乗っていた警察は慌てて、「情報提供ありがとうございます!おい、ガラ警部に報告!」と、パトカーを降りて、部下らしき男性と、ガラ警部の下に走って行った。
「ウィバー、ロロさん、無事だったのね……」
セロン先輩が、ほっとしたように言う。しかし、部長は、
「感動の再会は後よお。とりあえず、私たちのアジトに戻りましょ」
と、体を翻して隣の家にまで走って行った。
「……アジト?」
セロン先輩がきょとんとしているので、私は「あはは……」と言葉を濁す。
「早く!早くこっちこっち!」
と、部長が柵の鍵を開けて言うので、セロン先輩は、
「ウィバー!それ他人の家じゃないの!?」
と叱ろうとした……が、何か悟ったのか、
「……ああもう!」
と腹をくくったように柵をくぐった。
寡黙なアジャリ先輩も、それに続く。
こうして、私たちは、再び隣人の別荘に押しかけていた。
「ウィバー、何か考えはあるの?」
と、セロン先輩が部長をにらむ。この真面目な先輩は、「他人の家に忍び込む」というデメリットと、「策があってこそ」というメリットを一生懸命天秤にかけているのだろう。
「んー?考え、ねえ。どうなのかしらねえ」
と、部長ははぐらかしている。
「考えなかったら、ただの不法侵入じゃないこんなの!」
信じられない!と、セロン先輩は、いつもの穏やかな様子とは全く違って、叫んでみせる。
部長は、「とりあえず、パン食べてよお。お腹すいたでしょお?」とさほど気にしていない様子でパンを勧めた。
「まあ、また画像転移使って、中の様子を探るわあ。シュントが人質にされてるのは解決できてないしねえ。とりあえず、第一目標は、シュントを無傷で取り戻すことよお」




