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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
合い言葉は「RED」
34/42

「教育」

『えええ……』

 どん引きしたのは男たちも同じのようで、女教師風のあまりの剣幕に、3人で身を寄せる。

『……わかりましたよ。「教育」ですね。やりますよ、「教育」』

 そう言って、ヤンチャ男が何か他の2人に合図すると、2人は「いやいやいや」とヤンチャ男に詰め寄る。


『嫌ですよ、俺ら』

『俺だって嫌だよ!お前やれよ!』

『……でも、今更「教育」を止めるってのも、もうできないだろ……』

 最後に、普通顔の男がそう言うと、2人も「ああ……」と、黙り込む。


『ちょっとおおおお!!やりなさいよ!!早くやりなさいよおおおお!!私の命令が聞けないっていうのおおおおお!?やっぱりこの女に、たぶらかされてるんだわ!!』

 女教師風は、そう言って、派手女の胸元をつかんで横倒しに倒すと、その体にまたがって「教育!教育!」と叫びながら殴り始めた。


 鼻血が飛び、美しかった派手女の顔が、どんどん青黒く変化していく。

『教育!!教育!!あなたは間違ってるのよ!!間違ってるから罰を与えてるのよ!!教育!!教育!!さあ、あんたたちもやりなさいよおおおおお!!』


 派手女は、薬がキマっているのか、特に抵抗もなく、ぼーっとされるがままでいる。そして、仕方なさそうに、他の男2人も派手女の胴や足を殴ったり蹴ったりし始めた。


『教育!!教育!!』

『教育!!教育!!』

『教育!!教育!!その感じよ!!痛いのは殴ってる私たちも一緒なのよ!!あなたは革命戦士として生まれ変わるのおおおおおお!!「教育」が終わったとき、あなたは真の戦士になるのよおおおおおお!!』


 派手女の、細かった体が、明らかにボコボコと凹み、突出する。やがて、派手女は、ごふっと真っ赤な血を吐き出した。


『教育止め!!……ふう……これで、あなたは真の戦士だわ。おめでとう。さて、この女を外に出すわよ』


 その言葉に、私たちはぎょっとした。こんな雪の中、ぼこぼこにされて放り出されたら、本当に死んでしまう。

 ウィバー部長は、「ちっ……警察はまだなのお!?」とそわそわしている。


――次の瞬間。


 ぼわっと、画面全体に、蒸気の霧が発生した。それを合図にしたかのように、ばたばたと複数人が駆け出す音がする。

『きゃっ!!……おのれ、魔術使いがあああああああああ!!』

『うわっ!なんだこれ!!』

『ちょっ……マジで何も見えないよ!?』


 男たちと、女の声がして、どうやらセロン先輩が目くらましの魔術を展開したのだと気付く。しかし。


『うわあっ!』

『シュント!?』


 どすん、と音がして、おそらく転んだのだろうシュント先輩が、ずりずりと画面に引き戻される。

 分厚い眼鏡の奥の瞳は、美しいブルーの、大きな瞳。とてもハイティーンの男子には見えず、女装しているからか、美少女女子高生に見える。


「ちょっと、これまずいわよお……」

 画面を見つめながら、部長が呟いた。

 と、同時に、外から警察車両が到着した音が聞こえてきた。


『ちょ……警察だよ!』

『マジでやべえな……とりあえず、こいつを使うか!!』

 そう、ヤンチャ男が言うと、「立てこら!!」と、シュント先輩の華奢な体を羽交い締めにして、窓から顔を突き出させた。


「お前ら、銃を置け!!一度武装を解除して話をしよう!!」

 警察の、スピーカーの音が聞こえる。若い女性の声だ。私たちは、玄関を開けて、外の様子をうかがった。


 警察車両が4台、それに、覆面パトカーなのか、普通の車が1台。そして、装甲車と、その前に大盾を持った特殊班が並んだ。


「武装解除してはいそうですかって話するわけねーだろ!!お前らバカか!?」

 ヤンチャ男がそう叫ぶ。地味風男が警察の方に銃を向けていて、ヤンチャ男がシュント先輩に銃を突きつけている。

「こっちにはなあ、人質がいるんだよ!!女子高生が警察の前で殺されたりしたら、大失態だよなあ!?」

「あ、僕男です」

「え、そうなの?……じゃあ、男子高生だよなあ!!」


 ……どういう会話してるんだこいつら。

 まあ、それはいいとして、男たちはログハウスに立てこもるようである。


「……まずいわあ。あっちにはかなり重傷の怪我人がいるし、シュントの脱出失敗で、犯人を刺激することになっちゃった。……2人帰ってきたのは幸いねえ」

 そう、部長が言うので、警察側に目をやると、毛布にくるまれた、人質だった2人が、警察に保護されていた。


「シュントを無傷で取り返す方法……ねえ。しかも、犯人側にもなるべく傷を負わせたくないわあ」

「え、そうなんですか?」

「え……ロロ、あなた、普通に犯人を怪我させても良いって思った?」

「え?ええ。だって、犯人ですし」

「やだこわい。何この子。サイコパスう?」


 部長に怖がられてしまった。でも、警察も、そんな感じではあるし、多分私の考えの方がおかしいというか、過激派なのだろう。


「でもそうね。私もロロくらいの時はそうだったかもねえ。とりあえず、警察と合流しましょう。ここにいても仕方ないわ」

 そう言って、部長は壁に描いたウィンドウをそのままぱこっと取り外す。外れるんだ、それ?

「一応、今までの記録はバックアップに残ってるわあ。これを、警察への手土産にしましょ」

 部長と私は、警察の方へと駆けだしていった。

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