革命戦士
『ホントにおっせーな!もしかして、本気で逃げられたんじゃねーだろうな!?』
イライラした様子で、ヤンチャ男が言った。ちなみに、銃を持っているのは、このヤンチャ男と、さっきからずっと黙っている地味風男の2人である。
『気付かれたとしても、友達置いて逃げますかねえ?』
地味男が、ようやく口を開く。
『わっかんねーぞ?女って陰湿なところあるだろ?』
『ちょっと!』
と、女教師風の女が立ち上がった。
『女が、とか女は、とか、そういうのやめなさいよ!女性差別よ!女性蔑視よ!』
『す、すみません、姐さん……』
女の剣幕に、男3人が謝る。どうやら、この女がこの5人のグループのリーダー格らしい。
『まあまあ。逃げられたとしても、フツーは警察に駆け込むとかでしょー?警察に通報されても、それはそれであたしたちには好都合じゃなーい?』
もう一人の、派手女が言う。男たちは「確かに……」と顔を見合わせるが、女教師風はふてくされたようにそっぽを向いた。
『この革命を、必ず成功させるために、大衆の目に留まるのは、むしろ良いことだからな』
と、普通顔が言った。
『そうだな。事件にでもなって、多くの人間がこの革命のことを知ったら、賛同する人間も増えるかもな!』
『俺たちが捕まったとしても、その革命さえ成功すれば、この国も変わるかもしれない……いや、変えるんだ!』
男たちは、そう盛り上がっている。なるほど、いわゆる「革命戦士」ってやつらしい、こいつらは。
『俺たちの革命軍、「レッド」は絶対に成功させてみせる!!』
ヤンチャ男が叫ぶと、他の男2人も熱く拳を突き上げた。
「ふーん……革命ねえ。共産主義か何かかしらねえ」
部長は、ガサガサと袋の音を立てて、取り出したパンを頬ばる。……この人、よくこんな状況で物食べられるな……。
「ロロも食べなさいよお」
そう言われ、パンを差し出されたが、私は「食欲が……」と断った。部長は、はんっと鼻で笑ってみせる。
「そんなに繊細な神経してたら報道部なんて務まんないわよお?食べなさい」
と、再びパンを強引に握らされ、私は、仕方なく少しずつパンを口に運ぶ。全く味がしないし、口の中の水分が全部持って行かれる。
『ふーん。あたしは別に良いけど。まあ、「ジッパー」でもやって、気分を平和に保ちましょう』
そう言うと、派手女は、バッグからシガレットケースを取り出すと、一本手にとって、火を付けた。
『あ……この香り……どこかで……』
と、セロン先輩が呟くと、派手女はにやりと笑う。
『おや。「ジッパー」を知ってるなんて、おませさんね。これはね、平和の薬なの。これを吸うと、とっても気分が落ち着いて、地球のことがすっごく愛おしくなるのよ』
『それって、麻薬じゃないですか……?』
セロン先輩がそう問うので、私はひやひやした。いつ、相手の地雷を踏むかわからないのに。
『麻薬は麻薬だけど、ただ法に触れてるってだけで、実際は体にも精神にも良いのよ。アルコールなんかよりも全然効くし、なにより体にも精神にも良いのよ。それと、体にも精神にも良いのよ』
……効き始めてる……。そのうち、派手女は、『あ~、効く。良いわこれ、いつものプッシャーに乾杯!』とうめきながらずるずると椅子から崩れ落ちた。
「ちょっと!それ私の席!灰が落ちるでしょーがあっ!」
部長はそう怒って、私にケータイ端末を渡す。
「もう怒った!ロロ、警察に電話しなさい」
「え、連絡しちゃって平気なんですか?」
「あいつらが言ってたでしょ。『警察に言われるのは好都合』だって。つまり、皆を人質にしてるってことは、まだ利用する価値があるってことよお。多分、本来なら私を人質にするつもりだったのねえ。人質に価値があるのなら、警察に通報されても、人質は殺されないってことよお」
……いつもこれくらいしっかりしてると良いのに。
私はそう考えたが、慌てて部長の端末の通話機能で警察に連絡を取った。
「15分ほどで着きます」との返答があったので、部長にもそう伝える。
「多分、警察署にまで連絡を回すのねえ。『革命軍』と言われたら、普通の事故事件ではないものお」
なるほど。私たちは、警察が来るまで、待つことにした。もちろん、画像転移は繋げたままである。
『……ねえ。この薬でキマッてる女、これで良いの?』
女教師風が声をかける。男3人は、『ええと……』と言葉に詰まる。
『こいつ、革命戦士としての心構えがなってないわ。「教育」するにふさわしいんじゃない?』
すると、男たちは互いに顔を見合わせた。そして、『「教育」までは……』とおずおずと答える。
『なんでよおおお!!』
急に、女教師風は声を張り上げる。
『こいつがちょっと可愛いから、あんたたち私の言うこと聞かないのおおおお!?差別よ!!差別だわ!!私、差別されてるううううう!!』
こいつやべえ。
私と部長は、思わず抱き合った。それほど、恐ろしい光景が、そこにはあったのだ。




