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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
合い言葉は「RED」
32/42

侵入者と、こっちも侵入者

「鉄の匂いって、何です?血とは違うんですか?」

 私がそう、声を潜めて聞くと、ウィバー部長は

「血の臭いみたいに生臭くはないわあ。本当に鉄の匂い。私たち獣人は、古くは『獣人狩り』ってのもあったから、この匂いには敏感なのよねえ」


 獣人狩り。人と獣とのハーフである獣人を、その名の通り「狩る」、中世で行われた虐殺のことである。教科書には、「うずたかく積まれた獣人たちの死体の上に立ち、国旗を死骸に刺している絵画」が載っていた。これは、国の中でも相当な黒い歴史として残っている虐殺事件であった。


「あと、硝煙と火薬の匂い……決まりねえ」

 部長がそう言ったので、私はぎょっとした。ということは……銃を持っている何者かが、室内にいるということだ。


「皆は、無事なんでしょうか?」

「少なくとも血の臭いはしないわねえ。……そうね。よっと」


 と、部長は、おもむろに隣の別荘……こちらも同じようなログハウス……の周りを囲んだ柵を登り始めた。

「部長!?」

 私が「いくらなんでもそれはまずいですよ!」と言うと、「緊急事態よ。カルネアデスの板って知らないの?一枚の板を巡って殺し合いをしても、緊急事態ならば罪に問われない。大丈夫だから、ロロも登るのよお!」と、どこかなだめるような口調で言う。


「ああもう……はい!」

 私は、そう答えて、柵に手をかけて、一気に体重を移動させる。ボルダリングにも似ているその動作は、少女の腕でも軽々と超えることができた。

「よっ……と。……で、柵登って、やることといえばこれですよね……」


 そう。部長は、玄関の鍵をいじっていたかと思うと、

「よっし!いけるわこれえ!」

 と嬉しそうに言って、「解錠魔術」を展開した。


 キン、キン、と、金属音がするのは、解錠魔術を構成している部長が、構成の中のロックピックをしているからである。


「よし!開いた!」

 部長はそう小さく叫んで、「お邪魔しま~す」と、お隣さんの家に不法侵入を果たした。


「……部長、なんか手慣れてますよね……」

 そう、私が聞くと、部長は一瞬体を硬直させて、

「そ、そうね……授業!授業でやったから!」

 と、答えてみせる。

「アンチロックの授業ってどんなんですか」と、私がはああっとため息をついてみせると、部長は「あっ!疑ってるのねえ!?言っておくけど、私は義賊シーフの授業も取ってるのよお!」と言ってみせた。


「っていうか、あそこにいたら、私もロロも凍死しちゃうわよお!だから、緊・急・避・難!」

 ということだった。なるほど、物は言いようである。


「……本当は?」

「アンチロックを実践で試してみたかったのお。にゃはっ!」

「このバカ部長」

 私が罵ると、部長は「えー酷くなあい?ロロちゃん、最近私に冷たくなあい?」とぶーぶー文句を言って、さっさと家の中に入り、勝手知ったるといった風に暖房を付けた。


 それもそのはず、ここら辺一帯のログハウス型別荘は、いわゆる「建て売り」で、ビジネスホテルの部屋のように、左右が違えど暖房の操作方法や建物の構造はほぼ一緒である……と、後から聞いた。


 私たちは、部屋が暖まるのを待ってから、上着を脱ぎ、手袋を外した。部長は、アンチロックの精密操作をしたので、手袋は片手しか付けておらず、「右手が寒いっ!」と文句を言っていたので、暖房はありがたかったらしい。


 それから、部長は再び魔術を構成すると、壁に人差し指を付けると、なぞるようにして長方形の形を指で描いた。すると、そこから光があふれ、やがて見慣れた光景が浮かんでくる。

「あ、セロン先輩……」

 私がそう言うと、部長は私と一緒にその四角をのぞき込んで、「これは『画像転移』の技術よ。そのうちロロもシーフ科専攻したら習うから知っておきなさい!」と言ってみせた。


『しっかし、遅えーなー、そのお孫さんとやらはよお』

 テレビのように、しっかり音も聞こえる。声から察するに、若くもないが中年でもないぐらいの年の男性らしい。

 部長が、画像を揺らすと、カメラがパンするように、緊張した面持ちのセロン先輩から、3人の男たちに場面が切り替わった。

『パン屋に行ったんだろ?ホントに行ったのか?』

『はい……』

『正直に答えないと、マジで撃っちゃうからね?』

 セロン先輩に、銃の先が向けられる。男3人の他に、けだるげにしている割と派手な格好の女性1人と、学校の教師のようにピリピリとした空気の中年の女性が1人、ダイニングの椅子にそれぞれ座っている。


『もしかしたら、感づかれて逃げられたかも……』

 と、男の中の、どちらかというと普通の感じの男が言う。しかし、銃を持っているややヤンチャ系の男は、

『そんなことねーだろ。警視庁長官の孫って言ったって、まだ18のガキだぜ?そんなサバイバルスキル持ちなわけねーだろ』

 と、楽天的な言葉を放つ。


「あー、あのテーブルのあの席、私のお気に入りなのに、なにあの女!?私の席に勝手に座らないでくれるう!?」

 部長が、わけのわからないところで憤慨する。しかし、私は、画像に目を奪われていた。

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