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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
合い言葉は「RED」
29/42

部活旅行

「いや~、吹雪かないで良かったわねえ」


 コキアとブエルの、あの事件から、4ヶ月が経った。

 私たちは、7月末にもかかわらず、雪が見られるというノース地区の避暑地へと移動するために、報道部員全員でロマンスカーに乗っていた。


 雪が見えると、私たちは「わあ」っと声を上げる。ノース地区は一年中雪に囲まれた土地であり、主に上級国民の避暑地として大変に人気があるのだ。


「良い天気だわあ!ちゃんと雪も積もってるし、これは良い避暑地になるわよねえ!」


 ウィバー部長は、既に3本のビールを空けており、ご機嫌である。ろれつも若干危うい。


「それにしても、良かったんですか?部長。おじい様に……」

 と、私が隣席の部長に声をかけると、部長は「良いのよ!おじいちゃんの別荘なんだからあ、皆、楽しんでよねえ!」と、4本目のビールをカシュッといい音をさせて開けた。


 私たちは、4泊5日の日程で、元警視庁長官の部長のおじい様が提供してくれた別荘に宿泊するために、常夏……ではなく常冬の地であるノース地区にやってきたのだった。

 最初、皆は「悪いからお金出すよ」と主張したが、あまりに皆がかたくななので、部長が最終的にキレて「うちの別荘に泊まれないというやつは報道部追放するう!」とまで言い出したので、私たちはありがたく部長のおじい様のご厚意に甘えさせてもらうことになった。


「……それにしても、不思議ですよね。私たちが住んでるのは、都市の真ん中なのに、電車で4時間で行ける距離に常冬の地区があるなんて……」

 と、私が疑問を口にすると、対面席のセロン先輩が「あら、ロロさん知らないの?」と声を上げる。

「ノース地区は、本来は普通の気候の地区なのよ。都市部からそんなに離れてないのに、夏場に雪が降ってるって言うのも、変な話でしょ?それは、ノース地区の通称『雪の女王』が広大な結界を張って、そこに雪を降らせていることで、常冬を維持しているの。主に、観光客誘致のためにね」


 なるほど。私は、セロン先輩の知識に圧倒された。本当に、この先輩は色々とよく知っている。授業もきっと、真面目に受けているのだろう。私はサボることもあるが。


「ノース地区全てに結界を張るのもすごいですけど、さらに雪を降らせるのも、気候を冬に保つのも膨大な魔力が要りますよね。『雪の女王』はものすごい魔術師なんですね」

 私がそう感想を漏らすと、セロン先輩は

「今は、女王もご高齢だし、国の王宮魔術師たちが装置を使って維持しているので、女王は隠居状態だっていう話もあるけど、女王一人で維持している方が、ウィザードとしては夢があるわよね」

 と、にっこりと笑う。そうだった。セロン先輩は魔術師ウィザード学科を専攻しているのだった。


 通路を挟んだ隣には、寡黙なオーク族のアジャリ先輩が、青い顔で目を閉じている。いやまあ、オーク族は元々肌が青いのだが、具合が悪そうというコトだ。

 この先輩、体力はものすごくありそうなのだが、「乗り物酔い」をするらしい。まあ、オーク族は大きな体にもかかわらず、意外と繊細な神経をしている人も多いので、納得はできるのだが。


 でも、獣人である部長は、平衡感覚が鋭いのに、ビールまで飲んでいても乗り物酔いしないのに……と思うと、本当に体のつくりは「人それぞれ」なのだと思う。


「皆、次の次の駅で降りるわよ。そろそろ準備をして?ウィバーはそのビールの缶を片付けなさいよ」

 セロン先輩の号令で、私たちは「はーい」と返事をして、荷物を準備し始めた。



「ここが、おじいちゃんの別荘よお!」

 一面の銀世界。駅から少し歩いたところに、その別荘はあった。

 もっと大きな、館のような別荘だったらどうしようかとも思っていたが、実際はごく普通のログハウスだったので、多少はほっとした。こっちの方が、庶民的で良いと思う。……警視庁長官は庶民とは言わないかもしれないが。


「ちなみに、こっちは家族用の別荘ねえ!お客様用の別荘は別にあるわあ!」


 ……別荘二戸持ちかよ!

 私は、心の中でツッコむ。

 しかし、家族用の別荘を貸してくれたということは、おじい様にとって、私たちはそんなに悪くは思われていないのだと感じる。元警察官ということで、かなり厳しめのおじい様を予想していたのだが、実際は孫娘に甘い、普通のおじい様なのかもしれない。


 寒いので、私たちは早々に室内に入った。

 中は、ノース地区特有の、飾り気のないシンプルな家具がしつらえており、しかし、シンプルが故に使いやすそうである。


「部屋は2人で1部屋使ってねえ!もちろん私は1人で1部屋使うけどお!」

 何のマウンティングだかよくわからないが、部長はそう言って、ない胸を張ってみせた。まあ、部長が良いのなら、それで良い。


「じゃあ、男女で別れましょう。ロロさんと私が一部屋、アジャリさんとシュントさんが一部屋使わせてもらうわ」

 セロン先輩のその提案を、私たちは快諾した。……ただし、シュント先輩は、「……アジャリ、着替えは覗かないでね?」と、恥ずかしそうにアジャリ先輩に言う。まあ、シュント先輩は女装家さんだから……。ちなみに、オネエであるエレン先生と話をしたのだが、女装家とゲイはまた違うらしい。女装家だからといってゲイではないそうだ。


 私たちは、楽しい部活内旅行を信じていた。きっと、素敵な思い出になると――そう思っていた。

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