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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
愛の殺人
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コキアからの最後の手紙

 ブエル殺害事件は、誰にも知られることなく、幕を閉じる……はずだった。


 コキアが異界に消えてから、2日が経った。警察は、犯人を取り逃がしたことによって、かなり揉めたようだった。学園は、蜂の巣をつついたような大騒ぎになったが、上層部によって握りつぶし政策が敷かれていた。しかし、今でも様々な憶測が飛び交っている状態である。


 そんな折り、私に、急な知らせが舞い込んだ。

「ロロちゃんに手紙が来てるよ-?」

「手紙?お母さんからかな?」

 私は、郵便受けを覗いたキジャモから、一通の手紙を受け取った。しかし、うちの母親は、メールか電話で連絡を取ってくるはずだったので、不思議に思いながら、封筒を受け取る。封筒には、「ロロ様」としか宛名が書いておらず、切手も貼られていなかったので、学園内からの手紙のようだった。ますます心当たりがない。


 しかし、手紙を開封すると、すぐにわかった。


『ロロさんへ 

 突然のお手紙、お許しください。この手紙が届く頃、私は警察に出頭しているか、どこか遠いところに行ったかの、どちらかであると思います。

 

 おそらく、報道部の部長さんか、刑事さんか、もしくはあなた自身によって、私は断罪されていると考えられます。

 しかし、私は、そのうちのどれでも良いのです。一応、何もなかったときのために、ここにはっきり記しておきます。


 ブエルを殺したのは、私、コキアです。


 私は、ブエルを愛していました。しかし、ブエルは、付き合っていくうちに、次第に優しく、穏やかに私に接するようになりました。これは、私にとってとても恐ろしいことでした。

 私だって、少女漫画もドラマも観たことがあります。しかし、いくら頑張っても、私は暴力的な愛でしか、愛を本当に感じることができませんでした。理性では変わってしまったブエルの後の行動の方が一般的に良いとはわかっていても、心ではどうしても、私は暴力や暴言を受けることでしか、愛だとは感じないのです。


 ブエルは、痛めつけて致命傷を負わせているときも、「どうして?コキア、どうして?」としか言いませんでした。痛いとも、苦しいとも、一言も言いませんでした。私を罵る言葉もありませんでした。

 ただ、私を、困惑した目で、そして、まるで私から別れ話をされたかのように傷ついた目で、見ていました。


 何回も殺害と蘇生を繰り返した後、ブエルはとうとう蘇らなくなりました。私は、そのとき、初めて恋人を失った痛みを感じたのです。


 本当に、身勝手な理由で、私はブエルを殺してしまいました。

 私は、殴って欲しくて、蹴って欲しくて、罵って欲しかった。それを、ブエルにきちんと伝えるべきでした。でも、私は怖かったのです。そうすることで、彼女は私から離れてしまうかもしれない、と。


 最後になりますが、私のこの手紙と、誰かの推理によって明らかになった事実は、新聞部でご自由に使っていただいて結構です。むしろ、私から、お願いします。


 私たちの愛を、本当にこういう人間が確かに存在したのだと。

 お願いします。新聞に、「私たちがいたこと」をしっかりと記してください。


 長くなりました。手短に書くつもりでしたが、いけませんね。

 どうか、最後のお願いだけ、よろしくお願いします。


                      コキアより』


 私は、その手紙を、時間をかけて読んだ。

 そして、少し迷ったが、部室に行って、手紙を部長に渡した。


 その後、号外としてコキアの希望通り、彼女たちの愛を記事にした新聞は、飛ぶように売れた。

 今までの赤字を埋めても、なお余る状態だったのだから、どれほど売れたかは想像がつくだろう。


「皆!やったわねえ!今度、どこか旅行にでも行きましょうかあ!これから夏であっついし、涼しいところでえ!」

 部長はそう言うが、だからといってさして黒字になったわけでもないので、旅行は自己負担金となった。

 まだ、どこに行くかは決めてはいないが、部内旅行は目下計画中である。……それにしても、今は3月である。多少は暖かくなったものの、今から夏の避暑地を考える部長の頭の中は、やっぱりよくわからない。


 でも、今回の事件を振り返って、私は、コキアを非難する気にはなれなかった。


 コキアは、確かにブエルを愛していた。それがどんなに歪んでいても、その愛だけは本物だったのだ。

 そして、きっと、ブエルも、コキアを愛していた。最初は違ったのかもしれないが、あのブエルが穏やかに、優しく彼女に接したということは、間違いないのだから。


 彼女たちの愛は、真実の愛だった。

 



 私は、ローファーを鳴らして、上級生棟の2階への階段を上っている。

 

 春の風は、花の香りがする。私は、そう感じている。

 どこぞのマンションのように枝分かれした部屋の中から、一番の角部屋のインターフォンを押す。


 出てきたのは、黒髪の、目元の涼しい美貌の女性。


「ロロ、お疲れ様。大変だったわね」



 そう、私は、彼女たちの愛を見ていて、なんだかマナツさんに無性に会いたくなったのだった。 

無事完結しました。読んでくださって本当にありがとうございます!

2日くらい間を置いて、新しい章で続編を書きます。


どうぞ、これからも、烏丸牙鳥と、「ヤツが私に棲み着いた。」をよろしくお願いします!

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