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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
愛の殺人
25/42

犯人当てゲームではありません

「……部長、何考えてます?」


 あの後、「じゃあな。もう俺を頼るなよ。ぜっ・た・い・に・だ」と、マシタ警部から念を押されて、私たちは学園に帰り、部室へと戻った。

 しかし、頼るなといわれて、果たして部長がその約束を実行できるかは怪しいものだと思う。


「……もしかして、コキアを疑ってるんですか?でも、あの子は虫も殺せない子ですよ?」

 そう、私が言うと、部長はにやりと笑う。

「虫は殺せなくても、人は殺せるわあ」

「言葉の裏を読んでくださいよ。虫が殺せないからって人が殺せるわけないっていう意味です」

「わかってる。うん。でも、まだ動機がよくわからないのよねえ……」


 部長はそう言うと、両手を組んで、例の社長の椅子に前のめりに座った。

「……ロロさんのお友達が、一番怪しいのね?」

 セロン先輩も、新聞を刷る作業の手を一旦止めて、そう聞いてくる。

「まあ、今はそう言うしかないかなあ。あ、そうだ。ちょっとマシタに聞きたいことがあったんだったわ」


 そう言うと、部長は、自分の学生用鞄からケータイ端末を取り出して、指先軽やかにタップする。

 ……「俺を頼るな」って言われてから、一時間もしてないのに、もう頼ってる……。もしかしたら、この部長のフリーダムさ加減は、3年の付き合いのある警部もわかっていて、一応釘を刺しとけ、ということなのかもしれない。

 部長は、マシタ警部と、なにやら話し始めた。


「もしもしい?そういえば聞きたいことがあったのよお!あなた、サイコメトリー能力持ちでしょ?」

 サイコメトリー。それは、物体に触ると、その物体が24時間以内に「見ていた」記憶を呼び起こすことができる特殊能力のことだ。記憶自体は、ビデオのように長時間流れることもあれば、パッパッと断続的なものしか見えない人もいる。これも、人によって見え方もちがうとのことだ。


「あの家で、メトったのね?どう?何かわかった?」

 ……サイコメトリー能力を、「メトった」と表現する人、初めて見た。

 しかし、部長は、私のそんな内心も知らず、「うん、うん」と聞いている。


 そして。

「そうなのね?あの母親も……」

 と、珍しく声を潜める。


 やがて、部長は、「もうわかったから、切るわねえ!」と、全く相手の都合も考えずに電話を切った。


「……何かわかったの?」

 と、セロン先輩が部長に向かって聞く。私も、興味があったので、聞く側に回ることにした。


「んー。あのねえ。やっぱり事件には、あの母親も、父親も関係しているのよお」

 と、部長は軽く伸びをしながら言う。

「父親と母親が関係してるって……それじゃあ、一家で殺害を企んだってことですか?」

 私がそう、我慢できずに言うと、部長は、

「そう飛躍させないでよお。でもま、確かにそう思うのが自然かもねえ」

 と言って、ふふっと鼻先だけで笑ってみせる。

「母親や父親が関係しているのは、間接的にだけ。でも、これがなかなか根深いみたいよお?元々は、母親と父親の関係と、両親とコキアとの関係が、複雑に織りなしているのよねえ」


「……じゃあ、犯人は、コキアで間違いないんですね……」

 私は、少なかれショックを受けた。クラスメイトとクラスメイトが、殺されて、殺した関係にあった。その事実が、ずっしりと腹に石を抱いたように体が重くなる。


「んー。まあ、犯人当ては別にどうでも良いのよお。でも、コキアにとっては、動機の方が重要だと思うわあ!」

 セロン先輩は、床を蹴って、椅子ごとくるくる回る。

「動機を煮詰めていけば、多分あの子は自分で警察に出頭するう。そんな気がするのよ!」


 


 その日は、セロン先輩に送られて、学生寮へと戻った。

「犯人当てより、動機が大事って、どういうことなんですかね」

 私がそう聞くと、セロン先輩は、

「そうね……多分、コキアさんにとって、自分が犯人だ!って言われるより、『あなたはこれがこうなって人を殺したのね』って言われる方が重要なんだと思うわ。おそらくだけど……コキアさん自身も、苦しくて苦しくて、助けて欲しくて、わかって欲しくて犯行を行ったんだと思うわ……」


 セロン先輩はそう告げる。私は、意外に思った。セロン先輩は、正義は正義だと貫く人かと思ったのに、犯人の心に寄り添う人でもあるんだな、と。


 そして、私たちが、ブエルが殺されていた中庭に着くと、そこには人影があった。


「……コキア……」


 コキアは、ブエルの死体があった場所を見つめながら、うつむいていた。私たちは、とっさに身構える。

 ……しかし。


「……ふ、うう……うううう……」

 コキアは、嗚咽を漏らしながら、泣いていた。しかし、私たちの姿を認めると、バタバタと自分の部屋に駆け込んでしまった。


「……本当に、コキアが犯人なんですかね?普通、友達を殺したとしたら、葬儀などでは誤魔化すために泣くかもしれませんが、こんな人目のつかない場所で、一人で泣いてるなんて……。まるで、本当の友達みたいじゃないですか」

 私がそう聞くと、セロン先輩は、少し考えて、言う。


「……もしかしたら、さっきの涙こそが、コキアさんの動機に繋がるのかもしれないわ……」

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