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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
愛の殺人
22/42

名探偵・ウィバー

――放課後。


 私は、ぐったりと疲れていた。しかし、部活に出ないわけにはいかないし、出なかったら出なかったでウィバー部長がうるさいと予測はできた。

 故に、クラスメイトが死んでも、私は変わらず部室にいた。


「お疲れねえ、ロロさん」

 セロン先輩が、ため息をついて言う。私は、「ええ」と言葉を繋いだ。

「今日は、刑事さんが来て、色々と聞かれたんです。何故か、私がブエルに嫌がらせを受けていたことも知ってて、それで、話を聞きに来たようです」

「あら……」

「犯行時刻は、放課後の15:30~16:00で、もちろん、私はそのとき、部室にいましたし、証人として4人の先輩方がいるって言ったら、あっさり引き下がりましたけどね。でも、教室内では、私を疑っている人もいるようです」

「ああ、そういえば、私も、ロロさんについて知っていることを話すように言われたわ」

 私は、そのクラスメイトからの無言の圧力にそろそろ負けそうになっていた。

「お前が人を殺したんだろう」と思われるのは、やっぱり辛い。


「そういえば、気になることを聞きました」

「何かしら?何でも言ってみて?」

「ブエルには、『致命傷』がなかったそうです。残留魔力を計ってみたら、数回、蘇生魔法と治癒魔法が使われた形跡があったようです。なので、おそらく犯人は、蘇生魔法を使える3年生以上だろうということです。何回も蘇生して、苦しむ様子を楽しむ、快楽殺人犯かもしれないとも言われていました」

 私がそう告げると、セロン先輩は少し考えた。


「でも、ブエルさんは確か、部活には入っていない……。そして、この学園は、親兄弟であってもアポなしで顔を合わせることはできない……。よって、侵入者の犯行とは思えない……」

「そうなんです。部活に入っていないと、私たち1年生は、上級生と触れあうことが少ないんです。ですから、もう犯人となる人物は限られていて、おそらく私たち新聞部としては、次に犯人逮捕の記事を書くことになると思いますよ」

「報道部、ね」

 セロン先輩は、細かいところを突っ込んでくる。私にとってはどっちでも良い言い方だが、先輩方は何かこだわりがあるらしい。


「それにしても、部長はどこまで行っちゃったんでしょうね?授業には出たんですか?」

「うんっ!あれでいて、ちゃーんと点呼を取る授業は受けてたよ!」

 と、三つ編みお下げの眼鏡をかけた、シュント先輩が口を挟む。点呼を取る授業だけ出てる、ということは、単位だけ取れれば良いという考えからなのだろう。

「まあ、ウィバーが授業放って事件を追いかけるのは、今に始まった話じゃないものね……」

 と、真面目なセロン先輩は、ほうっとため息をつく。なかなか、この人も苦労しているようだ。


――と、そのとき。

 がらっと引き戸を開ける音がして、赤毛の、ぴょこんと髪をくくっている部長が飛び込んできた。


「うはあああー。疲れたあああああ」

 そう言って、どかっと部長用のデスクの、どこぞの社長が座っていそうな黒い革の椅子に腰を下ろした。

「部長……どこ行ってたんですか?一人で出かけたりして、通り魔がうろうろしてて危ないじゃないですか」

 私がそう言うと、部長は「んんー?」と声を上げて伸びをしてみせた。


「本物の通り魔に会ってきたあ」

「え?部長、昨日、あの後予約取ってきたんですか?」

「私に予約なんて必要ないわよお!」

 何故に?と、私が首をかしげると、部長は「ふっふっふ」と不敵な笑みを浮かべる。


「だって、私のおじいちゃんは、警視庁長官になった人で、お父さんは現役警視長だもん!」

 

 ……この人、学校の部活の、100人しか読者いない新聞作ってて、そんなどえらいコネ使いやがった!!

 もったいないもったいない!使うところ間違ってる!!


「ロロさん、こんなことで驚いてたら、この人にはついていけないわよ?」

 セロン先輩が言うと、シュント先輩と寡黙なアジャリ先輩まで、うんうんとうなずく。

「はあ……じゃあ、どんな話をしてきたんですか?」

 私がそう聞くと、部長は「そうねえ」と唇に指を当てる。


「少なくとも、今回の通り魔は、自分じゃないって言ってたわあ」

「……でしょうね。留置所にいるのなら、魔力制御もされているでしょうし、アリバイは確立されていますよね。……他には?」

「ん?」

「他に」

「あとね、人を殺したら射精くらいの快感を感じるとか言ってたわよお?」

「他に」

「あとは、雑談!結構イケメンだったけど、私の好みじゃなかったなあ」


 ……この人、そんだけのコネ使って超普通のことしか情報仕入れてない!!

 だから新聞の読者少ないんじゃ……?と、苦々しい思いを私は抱く。


「あとねー、顔なじみの刑事さんに会ってきたかなあ。でも、なーんか私、避けられてる気がするんだよねえ。あんまり情報教えてくれなくてさあ」


 というか、それが当たり前だと思った。

 少なくとも、私がそこそこキャリアのある刑事の身になって考えると、エリート警察官一家育ちのバカ娘がひょこひょこ一人で出向いたところで、そんなに重要な情報を漏らすとは思えない。


「そこで、私の推理力が牙を剥くわけよお!」

 部長は急に立ち上がると、両手を広げて、高く天井へと伸ばす。オーバーリアクションにもほどがあった。

「名探偵・ウィバーの超推理が始まるわあ!!」

「え、探偵だったんですか?」

「探偵じゃなくて、名・探・偵ねえ!間違えないでねえ!早速明日、裏付け取りに行くわよお!ロロ、あなた助手顔だから、ついてきなさいよ!」

「何ですか、助手顔って……」


 私は、正直、「うわあ、めんどくさい人に絡まれたなあ……」と思ってしまった。こんなんで事件なんか解決しないだろうと、そう思っていた。

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