報道部へようこそ!
「紹介するわね。この、おさげの眼鏡が3年生の『シュント』。それで、このオークの子が3年生の『アジャリ』。それから、ピンクの髪のこいつが4年生の副部長、『セロン』で、この私が3年生の部長、『ウィバー』よお。よろしくねえ」
ウィバー先輩から、一通り部員を紹介される。しかし、私は、きょろきょろと辺りを見渡した。……デスクが、4つしかない。
「あの、他の人たちは?取材にでも行ってるんですか?」
「ぐはっ!」
他にも部員がいると思っての疑問だったが、何故かウィバー先輩がダメージを受けている。
「あ、あのね、ロロさん。うちは4人で全員なのよ」
セロン先輩が、声を潜めて伝えてくる。
「4人って……人手足りるんですか?」
「ぐあっち!」
また、ウィバー先輩にクリティカル食らわせてしまった。後で報復されないか、心配だ。
「人手が足りないから、私たちも部員が欲しかったのよ。去年は結局1人も残ってくれなかったし……」
セロン先輩がそう言うと、ふうっとため息をついた。
「で、でも、女の子3人に増えて嬉しいわ?結構ハードな部活だけど、やっぱり華がないとね」
セロン先輩が、自分の体の前で両手を組んで言う。……?私は、疑問に思った。
「3人?4人の間違いでは?」
すると、セロン先輩は、「あっ」と声を漏らした。
「……実は僕は男なんですよ……」
眼鏡のシュント先輩が言う。え!?でも、スカート履いてるし、おっぱいあるし、髪も長いし……。
「はっはあ!私が一昨年の文化祭でうっかり女装させたら、新しい扉開いちゃったみたいで、毎日女装してくるようになったのよお!あんま気にしないでねえ!」
ウィバー先輩がそう言う。
……趣味は本人が良ければ良いけど……でも、ウィバー先輩は、もっと反省した方が良いと思った。
「今、報道部の活動としては、2週間に1回の新聞作成が主なものね。発行部数は、100部いかないくらい。何か重大な事件が起きたときは、号外も出すことがあるわ」
「100部って。それで部活やっていけるんですか?」
「正直、赤字ね。でも、ウィバーがもぎ取ってきた号外を含めると、そんなに極端に赤字ってわけじゃないわ。」
私は、経済方面には詳しくないのだが、そういうものらしい。ごく、小規模な部活のようだ。
「あれ……?でも、マナツさんが立ち上げた当初は、もっと大規模な部活だったって聞きましたが……」
「うしょいあすっ!」
セロン先輩の説明を聞いていたらしいウィバー先輩が、奇妙な声を上げる。またダメージを受けているようだ。
「一応、マナツさんが部長だったときは、人も居たのよ。でも、ウィバーが部長になったら……その……付いてくる人がどんどん少なくなっちゃって……」
言いにくそうに、セロン先輩がそう告げる。なるほど、マナツさん効果が切れたのと、ウィバー先輩の暴君っぷりが問題だったようだ。
「酷い酷い酷い!!そんなに私のこと、『人望がない』とか言うことないじゃないっ!私だって頑張ってるのにい!」
ウィバー先輩はそう言うが、実際、人が辞めて、部員数5人ということは、そういうことなのだろう。
「でも、新聞のネタのクオリティを維持していれば、こんなことにはならなかったのよ?」
「私は真面目にやってますう!真面目にやってこれですう!」
「ウィバーの書く記事は、中身がないのよ。記事自体を過激にしても……もっと、読者を惹きつける記事を書かないと……取材と称して、カフェでさぼってばかりいるからよ?あなたは外回り中の営業職みたいになってるじゃない」
「取材には行ってますう!あー、痛くない!あなたの口撃、全然私には刺さらないもんねえ!」
……なんだ、この会話。
どうやら、ウィバー先輩とセロン先輩は、「悪い子良い子」の関係らしい。船頭多くて船、山に登るというが、まさにその状態だ。
でも……
「あの。セロン先輩の方が、ウィバー先輩より1つ学年が上ですよね?どうしてセロン先輩が部長じゃないんですか?」
「それは……」
セロン先輩が言いよどむ。すると、ウィバー先輩は嬉々として、
「私が立候補したからに決まってるでしょお!さらに、くじ引きで決めたら、こうなったのよお!」
と、答えてみせた。
「くじ引きって……一体誰がそんなルールで……」
「マナツ先輩い」
「あー……」
やる。あの人は、そういうところある。
「ともかくっ!ロロさんには明日からバリバリ働いて貰うからねえ!ケータイ端末、持ってるう?」
「あ、はい。持ってます」
ということで、私は、全員分の端末番号を交換した。
「連絡があったら、授業抜けてでも駆けつけてねえ!」
「ちょっと、ウィバー……」
「うちは公言してるブラック部活だものお!そういうものだと諦めなさい!」
「……いい加減にしなさい」
セロン先輩は、ウィバー先輩の頭をぱかんと叩いた。




