秘密がばれた!?
――放課後。
私は、一人で「部活棟」の前に立っていた。
確か2階って言ってたよね、と数あるネームプレートを通り過ぎる。
2階の報道部部室……と。あった。ネームプレートは「新聞部」のままだったが、ご丁寧に扉の真ん中に「報道部!!」とでかでかと書かれた紙が貼ってある。
一応、ノックしてから「失礼します」と室内に入った。
すると、そこに待っていたのは――!?
ぐったりと机に突っ伏す3人の生徒たちだった。
「あ、ロロさんですか?話は聞いています」
その中でも、ピンク髪にゆるくウエーブのかかった少女が、私に反応した。私は、「ウィバーさんに言われて来たのですが……」と言いつつ、きょろきょろと辺りを見回す。
3人のうち、他二人もぴくりと反応したものの、突っ伏したままの姿勢は変わらない。室内の壁には、「締め切り厳守!」「ブラック部活中のブラック部活」とか、お前は何を目指しているんだ、と思うような紙が貼ってある。
「今お茶淹れますね。どうぞどうぞ、ココに座ってください」
と、その人はニコニコしながら椅子を勧めてくれる。この人はどうやらまともらしいと思った。
他の二人はと言うと、ぶつぶつと「ネタが……ねえだ……」「通り魔……取材とか……無理ゲーすぎる……」と呟いているので、眠ってはいないようだ。
よくよく見ると、2人のうち一人は男子学生である。オーク族専用の巨大な椅子とデスクに座っている。そういえば、部活は男女混合だったな、と説明会で説明されたことを思い出した。女子ばかり、男子ばかりの生活での唯一、異性と触れあうのが部活なのだ。
「部長はまだ来てないんですよ。そのうちひょっこり顔を出すと思うので、お茶を飲みながらお待ちください」
と、その子は微笑む。癒やし系だ。
というか、ウィバー先輩って部長だったのか……と、私は意外に思った。普通、部活の部長を務めるのは、5年生なので、ウィバー先輩の3年生はかなり早い部長昇進に思われる。
それにしても、さすが報道部というか、情報端末が一人一台支給されており、ぐるりと室内を見渡しても、コピー機やよくわからない機械が置いてある。
「うわあ……高そうなデジカメ……」
私は、思わず手を伸ばした。望遠レンズ搭載のそのデジカメは、いかにも報道!!という感じでかっこいい。
「……変にいじったらいけないよね、きっと」と、私はデジカメをいじらず、そこに戻した。
というのも、室内のものほとんどが紙類に侵食されていて、雪崩を起こしている。ただ唯一、アニメーション関連のフィギュアなどを飾ってあるデスクには、さっきのピンク髪先輩が座ってお茶を飲んでいた。
やがて、
「はっはあ~!部長のお出ましだあ!」
と、勢い込んで、がらりと扉が開く。
そこには、ぴょこんと一部の髪をくくっている、赤毛の少女がいた。
「ウィバー、遅い。もう彼女、来てるわよ」
と、ピンク髪の人がたしなめると、ウィバー先輩は、
「あら。あらあらあら。本当に来てくれたあ!やっぱり私、交渉の才能あるわあ!」
と、膨らみのない胸を張って見せた。
ちなみに、ウィバー先輩は、先輩といっても、10代前半のまだ子供のように見える。エルフ族ではないようだが、単に童顔なだけか、種族的なものなのかは判明しない。
「じゃあ。じゃあじゃあ、先日の黒犬……ブラック・ドッグ事件からお話を聞きましょうかあ」
ウィバー先輩が、私の対面に座る。
「お話といっても……私も、ただ単に撃退したというだけで、大したことは……」
と、私が言っても、
「その『たいしたことない』ことを聞きたいんですよお!」
と、にんまりと笑う。
そこで、私は、ブラック・ドッグ襲撃事件を、嘘はつかず、でも本当のことも全部言わずに、話した。
「ふーん……1年生の、まだ入学して3ヶ月の子たちが、ブラック・ドッグ2匹をねえ……」
と、ウィバー先輩は引っかかったようだ。そこに、さっきまで机で突っ伏していた、オーク族のがっしりとした男子生徒が、ウィバー先輩をちょいちょいと突っついた。
「ん?……ああ。調べてくれたのね。なるほど……」
と、ウィバー先輩がその、プリントされたコピー用紙を受け取り、目を通す。
……すると、途端にウィバー先輩は、にやりとしたゲス顔で私を見た。
「謎は全て解けた!」
「はあ」
私は、そう返事するしかない。ウィバー先輩は、コピー用紙をひらひらと私の前で振ってみせる。
「で、本当のところはどうなのお?たとえば、女子しかいないはずの女子学舎に、銀髪のざんばら髪の男がいるとか、たとえば、あなたが強化魔術か何かで鎧のようなものをまとったりとかあ」
そう言われ、私はぎょっとした。なんでそこまでバレてるの!?と思ったが、その、コピー用紙を先輩の手からひったくって目を通す。
「あ、こら。それは機密書類で……」
「な、なんで……?」
私は絶句した。そこには、はっきりとトラストの姿と、例の七色の光の鎧を身にまとった私の後ろ姿が記録されていた。
「ふっふ~ん。ネタは光っているのよお!」
そう言われたが、私は頭をフル回転させる。
「監視カメラの……ハッキング……」
「ザッツライッ!」
ウィバー先輩はケラケラと笑ってみせるが、これはれっきとした犯罪行為である。
「先輩……」
私が呆然と、そう呟くと、ウィバー先輩は、チェシャ猫のような笑みを浮かべ、私に詰め寄った。
「さあ、洗いざらい白状してもらいますよお!」




