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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
はじまりの物語
12/42

百合温泉地帯

――そして、週末休暇がやってきた。

 半分くらいの生徒は、この休暇中に実家に帰っている。ただ、もう半分は、実家が遠かったりする事情があり、寮に残る。


「お、お待たせしました」

 私が、少し息を切らして、寮門の前で待っていたマナツさんに声をかける。マナツさんは、胸元にレースがあしらわれているチュニックに、流行のふわふわした素材のスカートを履いていた。全体的に、清楚な雰囲気だ。


 私はといえば、Tシャツにジーンズといった、シンプルな服装である。一応、Tシャツの柄で迷ったのだが、外国の子供がプリントされているTシャツを着ている。


「全然待ってないわ。むしろ、楽しみだったもの」

 マナツさんが笑う。私は、一応、聞いてみた。

「どれくらい待ちました?」

「2時間」

「……」

 ちなみに、私が遅れたのは、10分である。この人は、最初から待つ気でいたのだろう。


「マナツさん、そんなに待つのが好きなんですか?」

 と、歩き出しながら私が聞くと、マナツさんは「うーん」と唇に指を当てる。

「というか、ロロのことを考えながら待つのが好きなのよ。どういう格好してくるのかなー、とか、私の姿を見つけたら、どんな顔で近づいてくるのかな-、とか。あとは、どこに行こうかなっていうことも考えるわ」

 ……なんだか、遠足前の小学生みたいな人だな。マナツさんがちょっとだけ子供っぽいのはわかってはいたが。


「あ、でも、考えてみれば、ロロのことだけね、待つのが好きなのは。他は、結構せっかちよ?」

 と、マナツさんは言う。……なんか……端々にのろけが出ているような……。


 街の方に向かって歩いていると、ふと、マナツさんの手が私の手を取り、指に指を絡める。こ、これは、恋人つなぎってやつでは……!?

 私が緊張で硬直すると、マナツさんは、

「あら。別におかしいことじゃないわ。よく、女の子同士って普通に手を繋いだりするじゃない?」

 と言ってくるが、普通の友達では、手を繋いだりはするものの、恋人つなぎまではしないと思う……。


 本当に、マナツさんといると、驚かされたり、照れたり、振り回されてばかりな気がする。でも……それが嫌じゃないのは、きっと、私もマナツさんのことが大事だからだろうな、と思った。


 私たちは、手を繋いだまま電車に乗り、手を繋いだまま街に出た。

「で、今日のプランは何ですか?」

 と、私が聞くと、マナツさんは微笑んで、

「温泉よ」

 と答えた。


「え……この町、温泉あったんですか」

 私がそう訊ねると、マナツさんはふふっと笑う。

「そう。数件だけだけど、温泉があるの。ロロって、肩こり持ちじゃない?肩こりや色んな病気に良く効くのよ?」

 と、マナツさんが説明してくれる。私は、「私が生理だったらどうするつもりだったんですか……」と小声で文句を言ったが、マナツさんは「ロロの生理周期、私が知らないと思ってるの?」と、半ばストーカーじみたことを言う。


 やがて、「ここよ」と、マナツさんが指さしたのは……なんだか、普通のビルディングのような、やけにネオンカラーがまぶしい装飾の店だった。

「ここが、温泉?」

 私が首をひねると、マナツさんは、

「れっきとした温泉よ」

 と言って、私たちの繋いでいる指はそのままで、グイグイと引っ張ってきた。

「行きましょう。私たちにはぴったりのお店なの」


――そこには、裸の女性達がたむろしていた。

 めいめいに、湯船に浸かったり、体を洗ったり、別室のシャワーを浴びていたり、サウナまである。


「あれ……?ここ、女湯だけなんですね?」

 と、私が、入り口が一箇所しかなかったことを思い出していると、マナツさんは、

「ふふ」

 と、笑ってみせる。……なんか、嫌な予感がする。


 私は、湯船にそっと体を沈める。温度は40度くらいと、少しぬるめだが、のぼせやすい私にはちょうど良いくらいの温度だ。

「生き返りますね、マナツさん……」

 と、マナツさんを振り向くと、マナツさんは急に後ろから私にぴったりと体を寄せてきた。

「え、ちょっと……」

 と、私が周りを気にしてきょろきょろと見渡すと……なんだか、様子がおかしい。私の対面にいた一人の女性に、別の女性が並んで座り、トントンと太ももを指先で叩く。すると、その女性は合図をしてきた女性の手をそっと握り返した。

 女性同士での洗いっこも、まあ、一般でもなくもないが、こっちはなんだか大胆に笑い合いながら体を押しつけたりしている。


「ココって……」

「ええ。そういうところよ」


 私は把握した。つまりは……レズビアン専用の温泉なのだ。

「ただし、ココで認められているのは、あくまで『いちゃいちゃ』ぐらいね。本番が好きなら、違う部屋に移動してするのがマナーなのよ。ほら、お湯が汚れるから」

 と、マナツさんは説明してくるが、私は頭がショートしそうだ。こういうところって、もっと上級者向けと思ってた……。


「マナツさん、そういう目的なんですか?やらしい……」

 と、私がじとっと横目で見ながら言うと、マナツさんは、

「あら。ここでなら、堂々といちゃいちゃできるじゃない?それに、高ぶっても本番はまた後で、ね」

 と、ウインク付きで言ってみせた。


 そして、「顔が見たいわ」と言って、バックハグから、正面からのハグに変える。

「ロロ。あなたは私のもの。そして、私はあなたのものだわ」

 そう、コツンと額と額をぶつけ合う。こんな睦言も、周りがレズビアンばかりなら、許されるのだろうか。

「絶対に、私から離れていかないでね。私もあなたを放さないから」

 まるで告白だなあ……と思いつつ、私は、マナツさんの豊かなバストの感触が気持ちいいな、と下心満載のことを思っていた。

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