ユニコーンは処女厨
――3日後。
テストの結果が帰ってきた。私は、平均点の60点。まあまあ、「そうじゃないか」と思っていた通りの点数だった。
「ういー。思ったより点数いかなかったんだよ」
キジャモが、椅子に腰掛けたままぶらぶらと両足を振って言う。
「キジャモ、そんなに点数悪くねーじゃん」
シャンテが言うが、自然魔術師を目指すキジャモとしては、納得のいかない点数らしかった。
わいわいと賑わう教室で、私たちはめいめいに休み時間を取っていた。
そのとき――
「ユニコーンだ!!」
一人の生徒が、外を見て叫んだ。わっと、生徒たちが窓辺に集まる。
「すごい!本当に真っ白なのね!」
「5年生が調教に成功したらしいよ」
「やっぱ幻獣は綺麗だな-。すっごくキラキラしてる!」
さらに、生徒達は見ているだけでは満足できなくなったらしい。「行こう!」と言って、実際にユニコーンを見るべく、外へと駆けだしていく。
私たちの1~3年生校舎には、こうしてたまに、珍しい幻獣や武具などを見せるために訪れる上級生がいる。それは、下級生を楽しませるためでもあり、自分のナルシスティックな欲望を満たすためでもあるのだ。つまり、一石二鳥。win-winである。
「おっ、幻獣かー。あたしも見たことないんだよな」
シャンテがそう言うと、キジャモも
「私もだよ-。ね、ロロちゃんとシャンテちゃんも、行こうよ!」
と、私たちの腕を取った。
「あ、私は……ちょっと……」
と、私が苦い顔をする。キジャモはきょとんとしているが、シャンテはわかったらしく、
「あー……ロロはな。ま、次の機会にな。キジャモ、行こうか」
と、不思議そうにしているキジャモを連れて、玄関へと走った。
それは、ユニコーンの特性にあるのだが。
私は、ベランダに出て、皆が集まっている様を見ていた。背の高い、ハイエルフの上級生がユニコーンを撫でており、その人がテイマーなのだとわかる。
テイマーは、「触ってごらん~」とか、下級生に話しかけている。それにしても、ユニコーンは白く美しい毛並み、雄々しい筋肉のついた体、全身が微かに発光している、そして何より、ねじれている一本角の付いた頭部、と、ビジュアルには綺麗な幻獣だ。
……見てるだけならね。
やがて、ユニコーンは、急に角度を変えると、ふんふんと鼻息を鳴らして、ある生徒に近づいていく。
「あっ!」
と、テイマーが止めるように言う前に、とある生徒をその足でパカーンと蹴り飛ばした。
事態は騒然となる。
蹴り飛ばされた生徒は、なんと、ブエルだった。さらに、ブエルの隣で震えていたコキアをも、その足でパカーンと蹴り飛ばす。
「コキアが……?意外だな」
と、私が呟くと、トラストが現れて、説明する。
『ユニコーンは処女の膝で眠るっていうからな。根っからの処女厨なんだよ。だから、処女以外が近づくとこうなるわけさあ!はっはあ~!ロロも行かなくて良かったなあ!』
そう、私も処女ではない。ヴァージンは、マナツさんの指に捧げてしまった。
女性同士の性交でも、ロストヴァージンと呼ぶのかはわからないが、念のために私は教室に残ったのだった。
『ふんふん、そういうことね。なーるほど☆』
と、トラストが勝手に納得している。「何が?」と聞いて欲しそうだったが、私はどうでもよかったので、放置した。
下は、ブエルとコキアが蹴られたことで、ちょっとした騒ぎになっている。また、ユニコーンは、違う生徒をもパカーンパカーンと景気よく蹴り飛ばしていく。
悲鳴を上げて、教室に逃げ帰る生徒もいるが、ヴァージンならばそんなに焦る必要はないのだけれど。
「それにしても、あんなに大人しそうなコキアも、やることやってるのね……」
私が言うと、トラストは、
『女の子なんてそんなもんだぜ?俺は、あんなに派手な格好してるシャンテちゃんが処女だっていうのも驚いてるけどなあ!』
と、わっはっはと笑い声付きで言った。
「シャンテは割と真面目な子だってことは、トラストもわかってると思ってたんだけど?」
私がむっとして言うと、トラストは、
『んだな。悪かったよ。あんな格好でも、どんなに蓮っ葉な発言してても、シャンテちゃんは真面目で努力家だもんな。いい女になるぜ、ありゃあ』
と、しみじみと言ってみせる。
確かに、シャンテが家庭を持ったら、割と良いお母さんにはなるかもしれない。
私たちは人間年齢15歳で成人のため、法律上は、私たちの年齢では家庭を持つこともできるのだ。ただ、皆、今は学生だし、男子と女子できっちりわかれているのがこの学園なので、結婚とか、不純異性交遊なんてものは無理ゲーに近いのだが。
「ってことは、ブエルもコキアも、学園に来る前にロストヴァージンしたのかな……」
そう呟くと同時に、下からシャンテが「なんであたしには攻撃しないんだよ!!」と言っている声が聞こえてきた。見ると、シャンテがユニコーンの首にしがみついているが、ユニコーン本体はけろっとしている。
「攻撃しろよ!!あたしはビッチなんだよ!!」
……変な見栄張らなくていいのに。
私は、シャンテのそんな姿を見つつ、ため息を漏らした。




