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少女ロロの事件記録手帳  作者: 烏丸牙鳥
はじまりの物語
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頭の中に住み着かれた私

――NW魔法・武術学校。

 それは、今はもう当たり前になってしまった、いわゆる「剣と魔法の世界」であるこの世界にある、比較的規模の小さな学校である。

 

 小さな規模とはいえ、全寮制であり、普通の学校を想像した諸君からすれば、十分に大きな施設が建ち並ぶ。あくまで、「この世界では小さめの学校」というわけだ。


 そして、ここでは、男女が厳格に分けられ、決して男子は女子に、女子は男子に、触れることのないように工夫が成されている。それも、「僧侶科」の生徒が異性に手を出すのを防ぐための校則が、他の科にも伝染し、そっくりそのまま校則に取り入れられたため、と言われている。


 まあ、私としては、異性となんちゃらしたくらいで能力が弱まったり、薄まったりする程度なら、僧侶って大したことねーな、と思うのだが。


 魔法・武術学校というように、ここでは将来様々な職で役立つ戦士や魔法使いなどを育てているのだ。そのため、年齢も、大抵は人間年齢では15歳程度で入学する人間が多いが、「魔術学校で学びたい」と思う人は多く、中には1005歳のエルフ族の長老レベルが入学したことも過去にあるそうだ。

 種族も様々で、校内では、オーク族の巨大な戦士が、机に座ってオーク専用の巨大なペンとノートでガリガリ勉強している姿も見られたりする。


 


 自己紹介しよう。

 私は、ロロ。16歳の人間。性別は女。

 金髪の髪はショートにしていて、しかし、お情け程度の乙女心で、前髪を一部、猫のモチーフのピンで留めている。服装は自由だが、私はいつも制服を選んでいる。灰色っぽいブレザーに、赤いネクタイ。スカートは紺だ。特にオシャレには興味ないので、計ってもらった当初からの膝丈である。

 体型は、至って普通だと思う。太ってもいないし、痩せてもいない。背丈だって、157cmと、これまた凡庸だ。成績も普通。普通すぎて、先生からは「ロロさんはどこにでも就職できるわね」と言われるほどだ。オールマイティと言えば聞こえは良いが、つまりは全部中途半端である。


 ただし、私には、友達が少ない。

 そもそも、私自身は、何故友達というものを皆が作りたがるのか、わからなかった。

 一人でも、色々と空想にふけったり、考えたり、本を読んだりすることは楽しめる。映画だって一人で観た方が落ち着く。何故、友達がいなければいけないのか、そのデメリットがわからない。


 ただ――ただ、一つの、事案について、私は凡庸から、非凡庸……しかも悪い意味で、の世界に引きずり込まれることになったのだが。


 

――「ロロちゃん、おはよ!」

 何が楽しいのか、二段ベッドの上からのぞき込んで、私に話しかけてきたこいつは、キジャモという。私のルームメイト。

 喜怒哀楽の激しいタイプの、いわゆる「リア充」というやつだ。種族はドリアードという、植物人間である。……いや、植物人間というのは、脳死状態の人間ではなく、種族である。常に周りに植物がないといけないという種族だが、自分で植物を召還することができ、また、植物人間に身につけられた植物は枯れることがない。

 キジャモも、癖のある髪に花輪というか……小さい子が作る、花の王冠飾りのようなものを身につけている。


「……おはよう」

 私も、一応挨拶をされたので、答える。

 そもそも、キジャモは元々リア充グループにいたはずだ。それが、同室になったからか、何かとテンションの低い私の世話をするようになって、今に至る。自らリア充グループという黄金を放り捨てたその姿は、私にはよくわからない。


「あっ、まだ時間あるね!ティーバッグだけど、紅茶淹れよっか!」

 ちなみに、寮には、一室一台、ポットが整備されている。好きなときに好きなものを飲むことができ、生徒は自分の好みに合わせて、紅茶やコーヒー、緑茶などを買ってきて飲むことが許されている。

「砂糖、まだあったか……あと、ミルク」

「あはは、ロロちゃん、ストレートで飲めないもんね!」


 馬鹿にされた気がしたが、キジャモに悪意はない。私の被害妄想だ、と思い直して、二人で紅茶を飲んでいると……。


 きた。


『やっはっはあ~~!!今日も天気が良いなあ!!俺様のおでましだあ!』

『ロロ、朝はおはようだぞ!おはようからはじめよう!はい、お~は~よ~う~ご~ざ~い~ま~~~~~~~す!!』

 うるさい。朝からテンション高い。てか、ホント誰だよお前。

 眉間にしわを寄せた私に、キジャモが心配そうに聞いてくる。


「ロロちゃん、また……?」

 私は、

「うん、また来てる」

 と答えた。


 こいつが、今のところの、私の悩みの種である。

 式神でもなく、タルパでもなく、使い魔でもなく、召喚獣でも何でもない。こいつのせいで、校医や召喚科の先生たちにも、首をかしげられた。


 何でもないこいつが、私の頭の中に住み着いている。

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