第4話「それにしても濃いメンツよね」
朝。
いつも通り学校の校門を通って登校していたわたしは天音と共に自分の教室である2-3へと向かう。
「……だから、AED(自動体外式除細動器)は人命を救助する以外にももっと(私みたいな人間に)役に立つ使い方があると思うのよ」
「そうだ……ね?」
天音の意味不明な会話を適当に流していると、別のどこかからか視線のようなものを感じる。
元々視線を浴びるのは天音がいるので当然と言えば当然なのだが、最近は何か違うような……。
あと、AEDのような商品は別にあると思う(知らないけど)。
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その後も休み時間やトイレに行った際にも同じように他とは違う視線を感じる。
昼休みになり、わたしは人気が少ない特別教室棟の階段を登って待ち構えることにした。
「そう言えば今日の放課後は飛鳥会長が生徒会室に集まるようにって」
「うっさいだまれっ!!」
なぜかいつの間にかついてきていた天音のわき腹に一発肘を入れる。
「ぐぼっ!! ……ちゃんと連絡したのに……でもこれはこれで」
ガクッと崩れ落ちる天音。
そして丁度視線の主であろう人影がわたしの行動に気づいたのか逃げ出したので急いで追いかける。
程なくしてその主を捕まえた。
その主は3人組の女子生徒だった。
「……どこかで見たことがあるような」
「この3人は第1話で出てきた低レベルいじめっ子集団ね」
いつの間にか復活してついてきていた天音がそう言っていた。
「あぁ、そう言えばそんなこともあったような」
「それで? あれからいじめのスキルは身に着けたのかしら?」
なんだよいじめのスキルって……第一それ喜ぶのはお前くらいだ。
「わ、私たちはもういじめなんてやってない!」
「そうだそうだ! むしろ私たちは聖奈様に近づきたいだけだよ!」
「聖奈様の奴隷にならなる覚悟なんだから!」
うわぁ、またハイレベルのやばい奴らが来たもんだ……。
「だからむしろあんたは邪魔なのよ! いっつも一緒にいてうらやましい!」
「そんなの当たり前じゃない。私と聖奈はもはや一心同体、知らないことなんてほとんどないんだから」
「できればあんたの性癖は知りたくなかったんだけど……」
というか、この3人組の視線って天音が一緒にいたから近づけなかったとかそういうことなんだろうか……。
実際前回天音に泣かされてたし……。
そう言えばいじめられてた子はどうなったんだろう?
「それはそうと、いじめてた子には謝ったの?」
「あ、えっと、その……」
「まだ謝ってなかったんだ……善は急げっていうし、今すぐ探して謝ってきた方がいいよ」
「はい! 今すぐ謝ってきます!」
廊下を全力疾走して3人は去っていった。
と思ったが、曲がり角付近で急に土下座し始めていた。
走りながら急に土下座ポーズになったことで一人は壁に激突してたけど……。
「……愉快な3人組だな」
「それより、あそこで土下座したってことはそこにいるのよね? なんか近くない?」
確かに天音の言うとおり不自然なくらいに近場にいるような気がする。
わたしたちも近づいてみると、急に土下座されてすごい困っている小柄な男子生徒の姿があった。
「間違いなく第1話でいじめられてた子ね」
「……そのメタな発言どうにかならないの?」
「だってさすがに私でもこの子たちの名前知らないし……聖奈は知ってるの?」
「いや知らないけど……」
「はい! 僕は1年の楠 純と言います!」
真っ先に答えたのは男子生徒だった。
「天音さんに助けていただいてからというものの、僕の頭の中では天音さんのことばかりでした。だから少しでも天音さんに近づけたらって……」
この子、天音の本性見てたと思うんだけど、こんな奴に恋でもしたのかな……。
わたしの中ではこいつの性癖でいいところ全部打ち消してると思うんだけど。
「どうやったら天音さんの下僕になれるかって思うと身体が勝手に動いてました!」
うん?
「おっかしいなぁ……今下僕って単語が聞こえた気がするんだけど」
「はい、天音さんの下僕になるのが僕の目標です」
「うぅぅん??」
楠くんといったその男子生徒のセリフを聞いて頭を抱えるわたし。
すでにそこで土下座している3人ですらこんななのにそれがもう一人増えるのか……。
「それとそこの3人組さんにも少なからず感謝しています。それがなければ天音さんに会うこともできなかったので」
「そう言えば3人組の名前も聞いてなかったね……」
「私は1年の川島 愛奈です! 特徴は巻き髪ロングよ!」
「同じ1年の倉木 美夏です! 特徴はツインテです!」
「同じく1年の西城 柚菜。特徴はサイドテール!」
即座に一人ずつ自己紹介を始めていた。
「……それにしても濃いメンツよね」
「あんたが言うな」
これからの生活にさらに不安の拍車がかかった聖奈だった。