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あマゾねすっ!  作者: 月見
2/17

第2話「これが天音ちゃんの香りなんだね!!」


 放課後の廊下。

 わたしは今、幼馴染である天音の襟元を掴んで引きずって歩いていた。

 というのも先ほどの天音がキレだした後にわたしが蹴り飛ばして気絶させた直後なのだが。


「いい加減起きろ!!」


 そろそろ引きずるのが面倒臭くなり、右手で引きずっていた天音を壁の方に投げ飛ばす。

 壁にぶち当たった天音は『うぇっ!』という声を上げた直後、目を覚ましたようだった。


「……あら? 今とても最高に意識が飛んだ気がするわ!」

「意識飛んでたのが戻っただけだよ!!」


 やれやれといった様子でわたしは天音にため息をつく。


「聖奈? どうしたのかしら? もし悩み事とかストレスが溜まっていたら遠慮なく私で発散していいのよ! そうすれば聖奈も私もハッピーよ!」

「お前のせいでストレスが溜まってお前で発散してるからプラマイゼロじゃぼけぇ!!」


 ばきぃっ!!

 つい衝動的に天音の腹に蹴りを入れてしまう。


「やっぱり聖奈(の蹴り)が一番ね……」


 ばたりと倒れこむ天音。

 今回はどうやら気絶はしていないようだ。


「というかお前、生徒会室に行くんじゃなかったのか?」

「そうだったわ!!」


 ばっと身体を起こし、服についた汚れを手でぱっぱと掃う天音。

 そう、こいつはこれでも生徒会役員の一員なのだ。

 どうやら生徒会の中では次期生徒会長をこいつにしようという試みがあるらしいが、わたしは心配でならない。

 実際、わたしはこいつの巻き添えで生徒会役員の一員にされている。

 理由はこいつが『生徒会役員? 悪くはないわね! ただし、聖奈も一緒ならやるわ!』という返事をしたせいである。

 全くもって厄介な話だ。

 結局その後の勧誘の嵐が収まらず面倒臭くなって入ったわけだけど、こいつの場合はきっと面倒事を押し付けられるのが好きとかそういう理由なんだろう。


「聖奈、早く行きましょう」


 天音がそう言って歩いていく。

 わたしはそのあとをついて行くのだった。


~~


 生徒会室前。

 天音がノックをして扉を開く。

 わたしも後に続き、中に入って扉を閉める。

 生徒会室は部屋の真ん中に大きめの長机があり、6個ほどのパイプ椅子がある。

 壁の方には学校の記録などをまとめた書類やあまり関係のない書物などが置かれている本棚が設置されている。

 この学校の生徒会の人間はわたしと天音を除いてあと三人の人たちがいて、正直に言うと変な人間の集まりである。

 まず目に付くのは上半身が裸の状態で椅子に座り、鉄アレイを上下させながら本を読んでいる書記の3年生、紅谷(べにや)盛雄(もるお)先輩。

 なんで上半身が裸なのかはわからないが、少なくともわたしはこの人が服を着ている姿を見た記憶がない。

 次にメガネをかけている整った顔立ちをしている美形、会計の1年生である有栖(ありす)御門(みかど)くん。

 雑誌を片手に眺めている姿は遠目から見れば同じ世界とは思えないほどの絵になる。

 だが、その本の中身は男同士がイチャついているいわゆるBL本というやつだ。

 御門くんはどうやら腐男子とか言う人種らしい。

 最後に我が校の生徒会長を務めている見た目の美しさと頭の良さを兼ね備えた3年生の有栖(ありす)飛鳥(あすか)先輩。

 基本的にやさしい先輩であるのだが、この人に関しては実はあまりよくは知らないことが多い。

 一つだけはっきりしてるのは視線がめちゃくちゃ気になるところだ。

 常にみられているような、そんな感覚で少し恐怖を感じるというか……。

 ちなみに飛鳥先輩と御門くんは姉弟であり、紅谷先輩とは幼馴染らしい。

 そして皆からの支持を得て副会長の座にいるドMの天音となぜかメンバーに加えられた庶務のわたし。

 ……いや、おかしいでしょ!?

 改めて考えるとなんだこの生徒会メンバー!?

 よくこの学校これで回ってるな……。

 とりあえず天音と共にそれぞれ自分の席へと座る。


「天音ちゃん、聖奈ちゃんこんにちは。今日は遅かったけど何かあった?」

「あー、えっと……」

「とある生徒からいじめの現場を目撃したということで実際にその場所に行きました。私はその生徒たちに正しく(いじめ方の)指導を行いましたが後はその方達次第かと思います」


 ……まあ、ほぼあってるからいいか。


「まあ、天音ちゃんは偉いなぁー。よしよし」


 天音の頭をなでる飛鳥先輩。

 されるがままの天音は特に気にすることも無く正面をただ向いていた。

 会長は……めちゃくちゃ表情が緩んでいる!?


「ハァハァ……天音ちゃんの髪の毛ふっわふわ……フフフ……」


 この人やべぇ……。


「会長どうしたんですか!?」


 珍しく天音が動揺している……。

 確かにしばらくこの生徒会にいるが、会長のこんな姿は初めてだ。


「大丈夫! 天音ちゃんに危害は加えるつもりはないから! くんくん……これが天音ちゃんの香りなんだね!!」


 やばさがだんだんエスカレートになってるんですけど!?


「ちょ、ちょっと御門くん! 会長どうしたのあれ」

「あぁ、大丈夫ですよ。あれはしばらく我慢してついに我慢できなくなっただけなんで」

「どういうこと!? 全く意味わかんないんだけど!?」

「近衛たちは知らなかったっけか? あいつは生粋の女好きだぞ?」


 生徒会長ぉぉぉ―――!!


「いやでもなんで今になってこんなことを……」

「そりゃ普段あんなことやってたらやばいやつだろ? だからできるだけ抑えていたっぽいけどダメだったみたいだな」

「あんな姉さんでも男女ともに人気なんだからわけわかんないですよね」


 あなたも同じようなものですよ!?

 ダメだ……ここにはまともな人がいない。

 ふと、天音の方に視線を戻す。

 こいつも顔が緩んできてる……おそらく順応してきたんだな……。


「はぁ……なんでこんな人たちに囲まれているんだ」


 顔を両手で覆いながらため息をつき、この生徒会に入ったことを深く後悔した聖奈だった。


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