第14話「お前ひとりがわたしを楽しませることができるのか?」
「うぅ……さっむ……」
家の外に出て、天音の家へと向かう途中そう呟いていた。
今日は12月24日。
世間ではクリスマスイヴという奴だが、恋人もいないわたしは同じように暇している天音の元へと向かっているという状況だった。
「本当にこの時期は辛いわよね。寒いし」
「全くだね。こんな時までお前と一緒にいるって考えると頭抱えるわ……ってうおっ!?」
気づいたら隣に天音がいた。
「いつからいた!?」
「え? 寒いって発言したあたりからね」
「というか家にいるんじゃなかったの?」
「ちょうどインスタント系の飲み物が切れてたから買いに行ってたのよ。聖奈は寒いのも苦手だから」
「え、あ、うん。ありがと」
普段意味わからないことを抜かすが、なんだかんだ他人に気を使ってる辺りがこいつの人気ポイントなんだろうな。
「それにしてももう一年たつのか……早いなぁ」
「実際私もここまで話が続くとも思ってなかったわ」
「話って……まあメタな発言はいつも通りだからいいけど」
「ちなみに話は作者が季節に合わせて適当に書くことが多いからめっちゃ飛び飛びなのよ」
あぁ、だから学園祭とかなかったんだ……。
「あと、最近は絵を描くことに力を入れてるらしいわ」
「え? 漫画でも描くの?」
「そうではないらしいけど、私たちが描かれるのも時間の問題ね」
それはうれしいような恥ずかしいような感じがするけど。
「ただ最近は友人にお題をもらって書いてるらしいけどそのお題の半分以上はクソらしいわよ」
大丈夫かわたしらの絵……。
「そういえば、聖奈」
「うん?」
「さっき巻き髪ロングから電話があって」
「お前川島さんのこと巻き髪ロングって呼んでるの!?」
「その巻き髪ロングから聖奈に明日空いてるかって聞かれたんだけど」
なんだろう。
明日はクリスマスがからパーティのお誘いとかだろうか?
「まあ、空いてるは空いてるけど」
「どうやら一人で寂しいらしいってことで良かったらどこか行きませんかって言ってたわ。ちなみに私は来なくていいって言われたわ」
「めっちゃ辛辣だな……でもまあ二人か、倉木さんと西城さんは他に予定があるってことかな? だとしても二人かぁ……二人だとそれはそれで盛り上がりに欠けるしなぁ……」
天音といることが割とそれに該当するし。
「なるほど、うまい具合にそれっぽく伝えてみるわね」
スマホを取り出して通話を繋げる天音。
というかここで返答するのか……寒いから天音の家行きたいんだけど。
「あ、もしもし? 聖奈に聞いてみたけど、お前ひとりがわたしを楽しませることができるのか?って言ってたわ」
「そんなこと言ってない!」
発言と同時に天音の脇腹に一撃を入れ、吹っ飛んだ拍子に手放したスマホを手に取り、弁明する。
「……というわけで、わたしも暇だし、二人とは言わずに他の人も集めるから一緒にパーティでもしよう?」
『はい! まさかそんなに私のことを考えてくれてたなんて……感激です!』
そこまでのことはしてないんだけど……とにかく、今年は毎年より忙しくなってしまったようだった。
~~
そして翌日。
なんだかんだいきなり募集をかけたが、来てくれるといったのは紅谷先輩と楠くんだった。
どうやら飛鳥先輩と御門君は他のパーティに出席しないといけないとかで来れないらしい。
あと、人を集めるって大変なことなんだな……基本飛鳥先輩や天音がそういうことをやってくれるからわからなかったけど。
改めて二人の(性格は置いておくとして)人間性がいいから人が集まるんだろうと感じた。
「それにしてもなんでわたしはこんな企画を通してしまったんだ?」
「結局何も思いつかなかったからサンタのコスプレで一日過ごす?って聞いたらそうしようってことで可決したわけよ」
うん、普段のわたしなら絶対OK出さないわ。
しかし決めてしまったものは仕方ない。
すでにそう言う話で今日来るみんなに説明しているから後戻りはできない。
「サンタクロースに夢を見る年でもないんだけれどね……」
「あら? 私はサンタクロース結構好きよ? プレゼント運んでるところとか」
割と驚いた。
こいつにも子供に夢を届けるとかそういう夢の思想とかがあったりするのだろうか。
「多分ドMだと思うのよね」
「とりあえずお前はサンタクロースに謝ろうか」
「だって1年に一回だけ最上級の社畜のごとく働いてるわけじゃない? 多分内面はしんどさがかなり最高って叫んでると思うわ」
「それはさすがにないと思うけど……というより、それなら毎日働くのもそんなに変わらないと思うけど」
「最高の楽しみってたまにあるからこそ快感なのよ」
いや知らんけどさ。
しばらく時間が経ち、他のメンバーが集まる。
「まずいろいろと言いたいけど、とりあえずなんで紅谷先輩は上半身裸なんですか?」
「寒さに耐えることで己に打ち勝つ、それこそが俺の今年の冬の過ごし方だ」
「次、楠くんはサンタじゃなくてトナカイなの?」
「はい。いざというときは天音さんの椅子になることもできますよ」
「次、川島さんはサンタコスじゃないよね?」
「サンタとサタンを見間違えました! ごめんなさい!」
などと、ツッコミどころのパーティが始まっていた。
「確かにトナカイになれば椅子になれるわね……」
「いや、そういうことじゃなくてね?」
よくわからないことを言っている天音だったが、その後パーティは楽しく過ごせたのであった。