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大家の奥さんの章

 奏音が家に帰ると、家の前で大家さんの奥さんが立っていた。


「奏音ちゃん? お母さんは?」

「えっ……お仕事に行きました」

「……はぁぁ……もう4ヶ月も家賃滞納しているんだよ。お母さんに言ってくれないかい?」

「……た、叩かれる……ので」


 小声で告げ、うなだれる。

 そして、ハッとして家に入ると、貯金箱を持ってきて差し出す。


「こ、これ、お渡しします。私の貯めたお金で……」

「それは貰えないよ。それに、部屋に入るよ、おいで」


 奏音の家に入ると、懐中電灯で中を見回し、奏音がお風呂場に溜め込んでいた洗濯物を、奥さんが大きな袋に詰めて、


「奏音ちゃんは教科書とか筆記用具に、大事なものをまとめるんだよ」


ランドセルに勉強道具を荷物を詰め、そしてぬいぐるみと貯金箱をバッグに入れ家を出ると、大家の奥さんが持っていた鍵で閉められ、新聞受けに封筒が入れられる。


「今日から家にしばらく住みなさい。家は旦那と店のバイトの子が3人いるからね。お父さんが民生委員だし、役所の方にも伝えておくから」


 車の中で、話してくれた大家の奥さん、美代子は言った。


「それにね、お母さんは良いけど、あんた……奏音ちゃんにはあの生活は辛いよ。本当はもっと早くと思っていたけど、行政とか教育委員会、学校……面倒だねぇ……おじいちゃんと最後は旦那が乗り込んでいったよ。大丈夫だからね。学校も休んでいいよ」

「お、大家の奥さん……ごめんなさい。あの、お手伝いします」


 小さい頃、何度か親に置き去りにされていたので俯き、両手を握る。


「何を言ってんだか。しばらく遊んでればいいさ」




 アパートはもう建て替える時期と旦那の父や旦那も賛成していたが、他の家は何とか一人暮らしや学生さんもあり意見を聞けたのだが、村上家は幼い奏音を置いて母親は夜に出て行き朝に戻り、出てこようとしない。

 それよりも、電話やガス、水道を止められ、暗い中一人きりの幼い奏音が可哀想で……。


 家に着くと運転席のドアを開け、


「奏音ちゃん。おいで」

「は、はい!」

「荷物は後で取りにくるからね。まずはお風呂に入りなさい」


玄関を開けると、


「亜美ちゃん! それに紗絵さえ!」

「お帰りなさい、奥さん! と、あっ……」

「こ、こんばんは……」


薄汚れた少女……コンビニに来る少女である。


「亜美ちゃん。紗絵。この子は村上奏音ちゃん。うちのアパートに住んでるんだけど、お母さんがね……連れて帰ったんだよ。どちらかお風呂に入れてあげて。着替えは紗絵の昔の服があるでしょう」

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