迷子のホモと騎士とブタ
遭難しました
オークの村を出発して歩くこと数時間、俺たちはしっかり迷子になっていた。
というのも、高層ビル並みの高さの大木に囲まれた森に入ってから方角などが全くわからなくなったのである。
「この森はどれだけデカいんだよ、そんでもってコンパスも狂うってどうなってんだ……。オークの村でコンパスもらった意味ないんだが……」
俺はオークのそこそこ高い身体能力であんまり疲れないけど、いつまで持つかわからないし、出来るだけ体力は温存しないとな……。それに……。
「お前らもうちょっとまともな会話出来ないの?それとも俺がおかしいの?」
後ろを振り返ると会話に花を咲かせていた変態共がこっちを見つめてくる。……何を言ってるんだという顔で。
「俺はただ、としまさがガチホモならなんで田中くんを襲わないのかなって気になって……」
「おいやめろ!聴きたくない!」
けいちゃんの言葉の暴力を前に、俺は全力で耳を塞いでしゃがみこみ、吐き気を堪えた。
そんな心傷を負った俺を横目にとしまさが言った。
「正直田中くんはどストライクなんだ。でも、
どストライクだからこそ愛を育む時間も欲しいんだ」
オークの聴覚は手で押さえたくらいでは完全には音を遮断できないらしい。
「うるさい!もういやだぁぁぁぁ!早く学校に戻って彼女作りたいぃぃぃぃ!」
というかなんで最初に出会ったのがこの二人なんだ……。おかしいだろうが……。
こうして精神な疲労を重ね、俺の絶叫によって集まってきたモンスター達をけいちゃん一人で討伐するのであった。
迷子になって三日目か。幸いに食料などに困ることはなかったけど、これじゃあいつまで経っても筋肉王国に行けないぞ。
「……ってなんだこの匂い」
朝食を食べて終えて出発の準備をしていると、オークの発達した嗅覚によってこの森で初めて嗅ぐ匂いに気づいた。
「なんだこの匂い。どんどん匂いが濃くなってし、近づいてきてるのか……?」
三人であたりを見回して警戒を強める。
……ドゴォォォォォォン
……ドゴォォォォォォン
森はざわめき始めると共に、とてつもない破砕音を響かせて、遠くの大木が次々に倒れていく。
なんだなんだ⁉︎あの巨大な木を倒してるのか⁉︎
非常に嫌な予感がするぞ……。
ついに三人の周辺の木も倒れ始めたため、身を守ることに専念し、倒れてくる大木をけいちゃんのユニークスキルで弾き飛ばしながら逃げまわる。
「やばいだろ……。けいちゃんのユニークスキルでも弾いてそらすのが限界なのに……!」
「頑張れけいちゃん!流石に俺の幻術ではどうしようもない!」
「うおおおおおおお!任せろ二人とも!|天地雷鳴《てんちらいめい〉!」
「ようやくおさまったな……。ありがとうけいちゃん、助かった……」
一時間程逃げ続け、あまりの疲れに全員が大の字で仰向けに倒れていた。
「だけどさっきから知らない匂いがどんどん近づいてきてるし、今襲われたらやばいぞ……誰だ⁉︎」
見知らぬ人影が視界に入り、俺は鼻をヒクつかせながらなんとか起き上がる。
「お?この森に我以外の者がおったのか。すまんかったな!怪我はないか?」
急に現れた男はボロボロのローブを纏っていたが、ローブの上からでもわかる程の筋肉と強者の風格から誰も動けないでいた。
「あんたは一体何者だ!」
ピリついた空気に耐えられなかったとしまさが問いかけた。
「俺か?俺は筋肉王国で『四筋』とも呼ばれている、【灰筋】のオシリスという。得意な筋肉魔法は回復系統だ。よろしく」
【灰筋】のオシリスと名乗る男が堂々とお辞儀をしながら言った。
おぃぃぃぃぃ⁉︎なんで筋肉王国の最強クラスがこんなとこにいるんだぁぁぁぁ⁉︎
「俺の名はケイ スズーキ!世界の救世主になる男だ!俺と手合わせをしてくれないか?」
俺が心の中でパニックになる中、けいちゃんがいつになく真面目な顔でそう言った。
「……何言ってんだお前ぇぇぇぇ⁉︎」
次回、けいちゃんVSオシリス