変態騎士が仲間になるようです。
「何をしている。俺の気が変わらないうちに早く消えろ」
いやいや俺は知ってるんだからな。お前は勇者なんて柄でもなければ、一般人以下の変態野郎だぞ。
だけど運良くけいちゃんに会えてよかった。しかもなんか強そうだし、けいちゃんが一緒に行動してくれるなら少しは安全だろうしな。
俺は両手を広げて敵意がないことをアピールしながら話しかける。
「けいちゃん!俺はたつおだ!昔お前が作った遊び、ちんちんなわとびで魂と魂のぶつかり合いをしていた田中たつおだ!思い出してくれけいちゃん!」
「田中くん⁉︎……う、うるさい!俺はケイ スズーキ。この世界の救世主になる男だ!」
けいちゃんは背中の大剣を引き抜くと、ものすごい速さで顔を隠してしまった。
こいつ記憶がないとか言ってたけど、自分のことを知ってる人がいないからって嘘ついてたな……。
というかなんでこいつは異世界“でも”イケメンなんだよ。しかもめっちゃいい装備だし……。スタートダッシュ決められてないの俺だけなのん?
まあいいや、とりあえずこいつを連れて街を目指そう。今は情報収集が先決だからね。
「よしけいちゃん。俺と一緒に行動してくれ。街で情報収集するぞ」
「田中くn…。いや醜いオークよ。俺は今勇者になるべく、天から授かったこの力と装備を使ってモンスター退治に行く!そして英雄になって彼女をつくる!」
救世主だの勇者だのとめちゃくちゃだけど目的が彼女つくることってどうなんだよ……。というかまだ記憶喪失キャラでいくつもりかこいつ。
「じゃあモンスター倒すの手伝うから一緒に来い。捕虜になってたオーク達も助けてあげたいしな」
「わかった!敵は俺に任せろ!オークでも女はいるだろうしな!」
「もはや種族を問わないのかお前は……」
「女は女だからな」
こうして仲間を増やした俺はそろそろ動けるようになったであろうオーク達のもとへ歩いてゆくのであった。
馬車へ戻るとオーク達が不安そうに身を寄せ合っていた。中には子供も捕まっていたようで、父親らしき屈強なオークの陰に隠れていた。それから青年くらいの者もいた。先程までは絶望感からまわりが見えていなかったが、冷静に辺りを見回すと合わせて六人のオークがそこにいた。
「みんな聞いてくれ!詳しいことは話せないけど、俺とそこの変態騎士はこの世界のことはあまり詳しくない。そこでどこかの街で情報収集をしたいと考えている。だからもしよければ故郷へ帰る旅路に同行させてはもらえないだろうか?」
そんな俺の問いかけに対してオーク達は顔を見合わせると、リーダー格であろう中でもひとまわり大きなオークが口を開く。
「おいどんの名前はブタジロー。おいどん達は同じ村の出身で、ここから歩いて1日かからない場所にあるでごわす。もしそこの騎士様が一緒に来てくれるならありがたいでごわす。ぜひついてきてほしいでごわす」
俺はブタジローと名乗る男が差し出した大きな手を両手で握る。
「それじゃあ出発は明日の朝ってことで、今日はもう暗くなってきたから野営しようか」
俺はオーク達と協力しながら馬車に積まれていた食料や毛布などを確認、分配していく。けいちゃんは魔法も使えるようなので見張り兼火起こし担当になった。
夕飯を食べ終えると、けいちゃん以外は皆すぐに横になり休息をとっていた。ひと安心したことで精神的な疲れが出てきたみたいだ。見張りは一応交代制だけど、これじゃあみんなすぐには起きられないだろうな。
そういえば今日は「普通」に話せていたな。どうやら相手が人間じゃなければいつもの吃音や挙動不審な発作が出ないらしいな。けいちゃんじゃないが、俺もこちらの世界の方が性に合っているのかも。
「おやすみけいちゃん。見張りは任せたぞ」
「おう!俺に任せろ田中く……オークくん!」
俺は瞼を閉じると今日の疲れがドッと押し寄せ、睡魔に負けた俺はすぐに意識が薄れ深い眠りに落ちていくのであった。
変態騎士が仲間になったよ!
やったね田中くん!