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頑張れ田中くん!  作者: エロゆうや先生
プロローグ
2/16

急展開

高校生活のスタートダッシュを切った田中くんだがやや不調気味 笑

前向きだった性格も始まってから早1週間でただの根暗卑屈ド陰キャに

頼みの綱の班分けでも貧乏くじを引いちゃってこれからどうしちゃうのかな???

 くだらない。赤髪ピアス槍チンマンとクソビッチギャルが二人で盛り上がっている横で、俺は暇潰しに遠足のしおりを読んでいた。

 遠足はUSJに行くらしい。

 今から遡ること1週間前、遠足の班分けで少しでも話しやすい人に当たって、クラス内に居場所を作ろうという淡い期待を見事に砕かれた。そして、夢の高校生活を目指し、奮闘しようとう気概は4月いっぱいも持たずに消滅し、また過去の自分と同じく、「何も期待しなければ、傷つかない」という結論に到達していた。

 男女の集団が視界に入って覚える感情が、憧れ、自分に対する無力感といったものからただただ憎しみしか湧かないようになった。今ではもう、視界に入って瞬間に脊髄反射で舌打ちが出てしまう。

 「あちしは最初スパイダーマンのやつに乗りたいねんけど、“なつき”はそれでもいい?」

 あの、女としゃべるときにずっとちんこタってそうなくらい頭が悪そうな男は「なつき」というらしい。初耳だ。

「車乗ってぐるぐる回るやつやんな~。ええやん。俺もそれ行くわ。」

 あ、それ、俺も乗ったことがある!

 これなら、会話に交じることができるし、ちょっとくらい会話交じっとくか。

 咄嗟に会話に参加しようした。

「あ、それ、え~~と、………あ、あ、、」

 やばい、こんな時に限って、吃音を発揮してしまい、言葉がでない。話す内容は頭の中にちゃんとあるのに…………。

 ギャル女と「なつき」と言われたピアスマンは、首をかしげながら俺の口から言葉が出るのを待っている。

「あ、ごめん。やっぱ、何でもないや………。」

 口がうまく動かなかった俺は、諦めて、相手が聞き取れるギリギリの声量で消え入るようにつぶやいた。

 それを、聞いた二人は口元に薄ら笑いを浮かべながら、また元の会話に戻っていった。

 その、言葉にしない嘲笑が一番傷つくんだよな……………。

 結局、会話に参加するのを諦めた。

 てか、今気がついたが、この女めちゃくちゃ香水くさい。匂いがキツすぎて、存在自体がトイレの芳香剤のようである。

 まだ、高1なのにもう香水なんて使ってんのか。

 

 そういえばもう一人ガチホモ坊主がいたじゃないか、と思い出す。ふと近くで自分に視線を感じて、ちらりと横を見る。

 隣にいたガチホモ坊主は何か言うわけでもなく、ただただじっと俺の方を見ている。

 あの…………、なんか怖いんですけど。

「あ、えっと何か用?」

 俺は震えそう声をなんとか抑えながら、そいつに話しかけた。

・・・・・・・・。


・・・・・・・・・。

 え?無視ですか?てか、何もしゃべらないまではわかるけど、そんな俺のこと見つめる??俺のこと好きだったりするわけ???


 ふと目線を下にそらしてみると、そいつの遠足のしおりが視界に入った。その表紙には見た目から想像もつかないような丸っこいかわいらしい字で、

みと としまさ

 と書いてあった。

 ほぇ~、こいつの名前は「としまさ」なのかぁ~


 そんなかんやで、俺は隣の視線と男女の喧騒に耐えながら、その時間が過ぎるのを待った。



いよいよ、今日が遠足だ。

沈痛な面持ちで、俺は妹との愛の巣である家を後にする。

あ~、家から出たくね~~。

遠足みたいな、ぼっちキラーなイベントは、ただでさえ、学校が嫌いな俺の登校の足取りを、3分の一スロー再生くらいにしてしまう。

だが、俺はぼっちが遅刻すると、常人の何倍もの罪になってしまうことを知っているので、集合時間の30分前に場所に着くような計算で家を出た。

 

 最初に学校で集合して、そこからバスでUSJに行くらしい。学校の前の通りを歩いていたら、校門が見えてきた。もう何人も人が集まっているのが見える。

スマホで時間を確認すると、集合時間まであと20分もある。

何でだよ………。来るの早すぎるだろ…。

 それを見て、自然と歩く速度が落ちてしまう。集合時間まで待つ時に、集団の中で、一人で待つのは、なかなかの苦行なんだよなぁ……………。待ち合わせに集合時間まで待つ高校生のうるささは異常なまでである。よくもまぁ、そんなしゃべることあるよなぁ………。

重い足をなんとかひきづりながら、校門に向かって脚を勧める。

すると、後ろからいきなり、肩をたたかれた。

後ろを振り向くと、そこには俺が勝手にガチホモ坊主と呼んでいる男、「としまさ」だった。

こいつ昨日の集まりで俺のことばっか見てた奴じゃん。

「あ、俺になんか用?」

「………………。」

おい、またかよ、っと思っているとそいつの下唇がわずかに動き始めた。

「今日、ほんとに遠足に参加するの?」

え??いや、そりゃここまで来て、参加しないってことはないでしょ。それ暗に俺が来るなって言いたいわけ?

「いや、まぁ、うん」

相手から少し顔をずらしながら俺は言った。

「そう…………。まぁ、いいや、じゃあ気をつけて」


彼はそれだけ言うと足早に集合場所へと向かって、通り過ぎていった。



………。なんだよあいつ…………。





 集合場所につき、時間になったらバスまで誘導された。バスの前で列になって並ばされて、順番に乗らされていく。

 俺は空いている席に座ることにした?

 ん?これ一番前の通路側の席しか空いてなくね?

 俺はその席に座って出発まで待っていた、案の定、隣に来たのは担任の教師だった。

やばい、これは気を遣われて、よくわからない身の上話を聞かれるパターンだ。

先手必勝!!!!!

俺は、教師が話しかけてくる前に、スマホのイヤホンを耳にはめ、パーカーのフードをかぶることで、ステルスモードに入った。

ふぅ~、アブなかったぜぇ~。

 俺は一息ついた。イヤホンにパーカーがやっぱ一番落ち着くんだよなぁ。子宮の中にいる胎児のような安心感が得られるんだよなぁ~。

 俺はそのまま、目を閉じて、目的地までつくまで寝ていることにした。


ゴンッ


痛っ。


 俺は頭に来た衝撃で目が覚めた。寝ぼけたままの意識で、周りを見ると、自分の乗っているバスを急カーブをあり得ないスピードでしていることに気づいた。

窓を見ると山の斜面を登っているようだった。

 自分の体にかかる遠心力が尋常じゃない。こんなカーブで山の坂道を登るなんて………………。俺は生まれて初めて、本気で命の危険を感じた。

 するとふと、体が宙に浮いたような感じがした。

これってもしかして………………。

俺は全身にきた、尋常でない衝撃とともに意識を失った。





ここはどこだろう……………。

 全身がズキズキして痛む。ボーっとする頭の霧をなんとか払い、俺は目を開けて、上体を起こす。

周りを見渡すと360°全方向に大樹が高くそびえ立ち、天井には光が見えないくらい、木枝が生い茂っている。ここはとんでもないほど、深い森の中のようだ。周りは濃い霧に包まれている。

 そういえば、俺、バスに乗っていたはずなんだが…………。

 だが、あたり一面を見渡してみても、バスのような文明を感じさせそうなモノは一つもなさそうだ。

 あのとき、おそらくバスは山の斜面から落ちたと思うのだが、俺には今ちゃんと意識がある。全身が少し痛むが歩くことだってできそうだ。

 それより、同じバスに乗っていた他の人たちはどこに行ったんだろう。あのときバスには同じクラス全員と教師が乗っていたのだから、40人近くはいたはずなのだから、周りには誰かしらいるはずなのだ。

 だが、周りを見渡しても、そこには誰の姿も見つけることができない。

 いや、俺だって、同じクラスの奴に思い入れのある奴なんて一人もいないが、誰もいないのはさすがに怖い。

 このまま、誰もいないところでじっとしていてもしょうがないので歩き始めることにした。


 歩き始めてから2,3時間くらい経っただろうか。どれほど、歩いても相変わらず目に入る景色は大木であり、この深い森から抜け出せそうな気配は一向に感じられない。

…………。疲れた。そこの木の根元で少し座って休憩しよう。

 そう思った矢先、視線の遠く先に今までと違ったものが目に入った。

 あれは……………。滝だ!!!!!!!

俺はそこに向かって走って向かった。滝に着くまで、自分が思っている以上に時間がかかった。あれ?、俺、こんな遠くのものまで見えるほど目よかったっけかなぁ?ゲームのしすぎで、視力の低さには人一倍自信があったのに。

 やっと思いで息を切らして滝までたどりついた。そこの水は息をのむほどに透き通って綺麗であった。その水は澄んでいるゆえに、周りの風景を反射して映し出していた。

 俺も、水辺のすぐ近くまでいき、水を覗こうとした。

ん?

 水面に何か茶色の毛で覆われた、イノシシのようなものが映っているような気がした。

後ろを見ても誰もいない。再び、水面の方に向かった。

水面をのぞき込む。

 そこに映っていたのは、全身が茶色の毛に覆われ、顔はまるでイノシシのようであった。

だが、イノシシ以上に口から牙が突き出ていて、それはまさしく、ゲームのキャラでよく見る“オーク”そのものであった。


ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ


俺の顔が……………。




あわわわわわわわぁぁっぁあぁぁ

オークになっちゃったよ~~。

これからどうすればいいの?????


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