館の主人の謎 ③
恐怖は残っている。むしろ、震えているほどにコワイ。
けれど、目の前の謎が、私を呼んでいる。この謎を解くことに意義がある。
「嘘、だろ? 本当にあった……」
「客室にしかなかったんだ」
ジャンヌが館の秘密その二と書かれた本を手にしていた。
フレンドメッセージでチリン達を呼び出す。私はその間館の秘密を読んでいた。秘密というからには謎があるはずだ。
この館の秘密。それは殺人事件が起きた館……。それも、暗殺というような類で。
だからあの館の主人は恨みがあった。この秘密というものを見ると好人物とは言えないような気もするが。
「ふぅん……」
謎、というより書いてあった。
この館の秘密が。どうやって脱出したらいいかもすべて書いてあった。
「ふむ……。書斎に行けということか」
ジャンヌがそうつぶやいた。また走り出そうとしたため土魔法で土を生成し足下に置く。するといとも簡単に転んでしまっていた。
「早まるなって」
そう言った瞬間だった。
チリンからのメッセージだった。というか、うぉたぁとエルルゥ以外のフレンドから一斉に通知が届く。その内容はって言うと……
『エルルゥに気を付けろ! そいつはエルルゥじゃない!!』
は?
「みーつ、けた!」
そのメッセージと共に、エルルゥがやってきた。片手に剣をもって。幽霊だから物理攻撃できないんじゃなかったのか……?
くそ、すり替わり、か……! あのエルルゥも、あれは誰かが成り代わって……!
「何してるの? ミキ。もしかしてまだ私に慣れてない?」
「ひっ……!」
やっぱり幽霊怖い。け、けど……!
殺される……! や、やらなくちゃいけない! やらなくては死ぬ……!
「ジャンヌ! 戦うぞ!」
「わ、わかってますが私魔法使えないですよ!?」
「囮になってくれるだけでいい! 私が魔法でぶっ潰す!」
くそ、猫で躱すのなんて難しい。ただでさえ四足歩行にはまだ慣れないのにさ!
だから囮になってもらうよジャンヌ! 私に仕える女騎士ならそのくらい楽勝であってくれ! 仮にも騎士職なんだからさぁ!
「待ってくれよ! 私は味方だ、な? だから……」
「味方なら危なくないことを証明して。信用できないから近づかないで」
「そんなこと言われると傷つくじゃないか……。ほら、まだ謎は残ってるんだ。一緒に……」
「剣を捨てて。騎士は魔法を使えないはずだから剣を捨てたら安全、だよね? それとも、ゴーストと同じように魔法でも使えるのかい?」
「……ミキ様。お下がりください」
私の目の前で構えを取るジャンヌ。装備が装着できないから素手か……。
まあいいさ。私自身のやることは一つ。
鑑定!
――――――――――
アサシン・ゴースト
――――――――――
ほら見ろ! 味方を鑑定することなんてまずないから盲点だった!
ちなみにジャンヌを鑑定もしてみた。何の変りもないジャンヌという名前が表示されたのだった。やっぱり、こいつはゴーストか。
それも、この館の主人を殺した、本人だろうな!
ちっくしょう! この前のイベントと言い、今と言い、私の苦手なものを詰め込むのが好きなのかよ!
マジで怖いから、は、早く終わらせよう!