生命の誕生
九月。俺はいつものように創介さんを車で送っていると携帯に電話が入る。
すみませんといって路肩により、電話に出た。創介さんは急いでる用事じゃないので優しくいいよと言ってくれる。
「はい」
「こちら城ケ崎 満さんの携帯で間違いないでしょうか」
「そうですが…」
「何と奥様が…」
美咲がどうしたんだろう。
一抹の不安が俺の脳内をよぎる。
「もうすぐ赤ちゃんを産みそうで…」
「い、いい、今行きます!」
俺は携帯を切る。
「すいません、社長。俺の奥さんが出産しそうで…。目的地までついたら休みをもらってもいいでしょうか」
「ん? ならタクシーを使うぞ。もうこのまま行ってもいい」
と、社長が下りようとする。
「い、いえ! きちんと送り届けて…」
「気にするな。子供が生まれるんだろう? 立ち会うのもパパの務めだぞ」
と、笑って車を降りたのだった。
俺はありがとうございますとお礼を言ってすぐに美咲が通っていた産婦人科がある病院に向かうのだった。
☆ ★ ☆ ★
う、生まれるっ…。
痛い痛い痛い痛いいいいい! この痛みは嫌だよォ! なんていうか、すごく痛い。うちのお母さんもこんな痛みを味わったんだね…。ゲームでもこんな痛みはなかったよォ。
いじめられた時も暴力は振るわれたがその比じゃない。
「もうすぐで生まれますよ!」
「双子だもんなぁ…。こういうのって普通帝王切開じゃ…」
「奥様の場合は自然分娩でもいいくらい経過がよかったんですよ。それと旦那様が到着したようですが見守ってもらいますか?」
「どうせなら立ち会ってもらおう」
痛い。
すると、一人目が生まれたようで、すぐに鳴き声が聞こえる。双子なのでまだ陣痛が…。
「美咲!」
仕事着姿のまま満は中に入ってくる。
私は親指を立てて大丈夫ということを示す。そして、まだ陣痛があり、今度は二人目だ。私はまた鉄の棒を握る。
この痛みは満にはわからないだろう。理解してもらえなくてもいい。
「満、手を貸して」
「え? お、おう…」
満は手を出してくる。私は満の手を握る。
「強く握るかもしれない。痛かったらごめん」
「気にするな。陣痛はそれほど痛いんだろう? 俺は男だから痛みなんてわからないけどさ、痛いっていうことは聞いてる。安心して握ってよ。ここは病院だから握りつぶされても治してもらえるさ」
「そんな強い口で言って…。ありがと」
私は満に微笑んだ。
そして、私は満の手を握る。すると、陣痛が止み、そして鳴き声が聞こえてくる。
「どちらも生まれました! 元気な男の子と女の子ですよ!」
「か、勝った…」
も、燃え尽きたぜ…。真っ白にな…。
痛みから解放された。
「お疲れ、美咲」
「ありがとさん…」
あーもう疲れたぁ。