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Another Arcadia Online  作者: 鳩胸 ぽっぽ
二人の結婚生活
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真野ちゃんの地元放浪記

 私の名前は生出 真野。一流とは言わないけど有名な女優だ。

 芸歴としては子役からなのでもう20年は経つかなあ。結構ベテランだとは思ってる。


「あー、おいしー」


 私は実家の近くにある蕎麦屋でご飯を食べていた。私自身蕎麦が大好きで、特にざる蕎麦を好んでる。お母さんが蕎麦アレルギーで家では食べれなかったけど暇があったら食べにきてた。


「真野も有名になったなぁ。おじさんとしては誇らしいぜぇ。うちの蕎麦食って育ったと言っても過言じゃねえな」

「過言だよぉ。たまにしかきてないでしょ」

「あんたの母さんが蕎麦アレルギーじゃなけりゃあなあ…」


 私は天ぷらをかじる。

 今日は天ざる蕎麦を頼んでいた。ここの海老天が美味しいんだ。


「んー、さいこー!」

「たりめえだろ。ほれ、サービス」

「日本酒?」

「ビールは飲めねえって聞いたからな。日本酒だ」

「真っ昼間からお酒って…」

「俺も飲んでるから大丈夫だ!」


 それは誇らしげに言うことじゃないと思うけどね…。

 私はおじさんが出した日本酒を一口。


「あまーい」

「だろ? 女性人気の酒だ」

「これは美味しいね…」


 日本酒を飲み、蕎麦をすする。食べ終わった頃には少し酔いが回っていた。

 昼間から酔うのはなんか新鮮だなー。夜にしか飲まないからなー。


「おじさん美味しかったよ。会計…」

「いいよ金なんか! サインだけ書いてくれ」

「ほんと? ありがとー」


 色紙を手渡されたのでサインを書く。

 サインを書いていると扉が突然開いた。


「父さん今日休業日じゃないの?」

「俺の懐かしい子が帰ってきててな。そいつのために開けたんだ。こいつよこいつ」

「どうもー」

「ま、真野ちゃん!? えっ、真野ちゃんがなんで!?」

「ここ私の地元だからねー。はい、サインね」


 サインをおじさんに渡す。


「ほれ、優奈もこの機会だ。ツーショット撮ってやろうか?」

「えっ、あっ、お願いします」

「いいよー。ほら、近くに寄ってね」


 私は携帯をだし、肩を組み合ってパシャリと一枚。

 優奈ちゃんの顔は戸惑いが隠せていない。可愛い子だなあ。


「わ、私も一枚いいですか!」

「いいよー」


 優奈ちゃんが携帯を取り出し電源を入れると待受が私だった。こういうの見るとちょっと嬉しい。

 私は右手でピースを作る。


「あ、ありがとうございます! 思い出になります!」

「いいんだよー。それにしてもおじさんに娘いたんだ。初耳だよ」

「えっ、あー、いや」

「えっ、今日初めてじゃないの?」

「度々きてたよ。こっちに帰ってる時は」


 昔も今も通っていた。中学生の頃は友達と食べにきたりとかしてたし帰ってきても食べてる。ここの天ざるが美味しいの。


「…父さん今まで隠してたの?」

「あー、いや」

「父さん?」

「はい、隠してましたっ!」


 父さんも娘には弱いんだなー。

 

「それじゃ、また来るねー。お酒も美味しかったよ」

「…お酒?」

「ひいっ」









 酔った身体はちょっとふらつく。

 酔い覚ましのために少し歩いていると私が通っていた小学校があった。

 中学生まではこっちにいたが高校生になってから東京で一人暮らししてたんだ。


「懐かしー。知ってる先生いるかなー」


 小学校卒業してもう17年くらい経つんだよね。なんていうか、結構懐かしいと思ったりしてさ。

 昔は女優業も慣れてなくて大変だったけどでもきた時は友達と遊んで楽しかったなー。


 ただ思い残したことは修学旅行行けなかったことかな? その日ちょうどドラマの撮影があって修学旅行行けなかったんだよね。それだけが気がかりかなあ。


「たしかこの学校の裏に…」


 私は学校の裏に回るとみんなと来ていた駄菓子屋があった。

 今でもやっているらしい。私が小学生の時には80歳くらいのおばあちゃんが座ってたという昔ながらの駄菓子屋だったけど…。


「あれ、真野ちゃん?」

「おばあちゃんじゃなくなってる!」


 茶髪の若い女の子が座っていた。


「おばあちゃん知ってるんですか?」

「あー、もしかしておばあちゃんの家族?」

「孫の麻衣です。今年から駄菓子屋を継ぎました」

「へぇ。こんな若い子が…」


 見るからに高校生っぽいな。


「ああ、私は真野ね。小学生の頃よく駄菓子屋にお菓子を買いに来ててさー。懐かしくて寄ってみたんだ」

「そうなんですか! 地元なんですねここ」

「そうそう。あ、これ美味しーんだよね。小さい頃よく食べたなー。これください」


 私が手にしたのはさくら大根。漬物みたいな駄菓子。漬物なんだよなあ味、感触的に。

 でもこれよく好きで食べてた。コンビニとかになかなか売ってないから最近食べてないんだよね。この味は忘れられない。


「えっと、80円です」

「この安さも駄菓子の魅力だよね」


 80円を支払い、さくら大根の封を開ける。

 大根の浅漬けみたいに歯応えがあり、甘酸っぱさが口の中に広がる。この味だよこの味。美味しい。


「あ、あの! サインください!」

「いいよ。これ食べてからね」


 私はさくら大根を堪能し、色紙にサインを書いてあげた。

 地元ってやっぱいいところだよ。













駄菓子はやっぱビッグカツですかね。

蕎麦は真野ちゃんと同じ天ざるが好きです。

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いずれ王となる君に~部下である剣士の私はその才能をゲームでも発揮します~
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 5円チョコとかBIGチョコとか日本一ながーいチョコとか、 コーラガムとかその辺を思い出しますねぇ。 メジャーどころは省くとこんなもんかなぁ。 ウルトラマンのベーゴマを買ったのはなぜか高校の…
[一言] 更新乙です! 地元を誇れる人はいますが、私は誇れませんでしたね~ 桜並木と本屋やゲームショップ、その他雑貨店が賑わってた頃なら出来たけど、今じゃあね~^_^; 本屋やゲームショップは時…
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