珠洲の仕事事情
私の名前は葉隠 珠洲。有名どころではないが結果人気作を何本も生み出しているゲーム会社に勤めている。
「あー、やべ、幻覚見えて来た…」
私の机の上には大量の栄養ドリンクとエナジードリンクの空き缶が置いてあった。何でこんなにも仕事してるんだろう。仕事って何だ?そもそも人生とは?
「すいません。母が死んで忌引きもらって…急いで仕上げま…葉隠さん!?」
「おー…安田かぁ。ふひっ、ふひひっ。部下の顔見たらやる気出て来たぁ!」
「ちょ、目の下クマすごいですよ!? どれだけ寝てないんすか!?」
「6日くらいかなぁ…。全員季節外れのインフルだったり忌引きとかで私たちの班全滅! 遅れちゃ困るからあなたたちの分もやっておきました!」
頭が回らない。このあとなんか予定あった気がするけどぉ…。なんだっけぇ。
あ、そうだ! ディレクターに出来上がったって報告しないとぉ!
「じゃあ完成の報告してくりゅあっ!」
「徹夜のしすぎで言葉がおかしい!? ちょ、報告なら私がしますからぁ! 葉隠さんはもう帰って寝てくだ…で、ディレクター!」
うーん?
「葉隠! なんど残業するなと! なぜ6日も帰っていないんだ!」
「幻覚かな。ディレクターの姿が見えるんだけど。今って会議じゃなかったっけ?」
「その会議にお前も参加するんだよ! アートディレクターの葉隠さーん?」
「ちょ、眠らせてぇ〜!」
私はそのままディレクターに引きずられて会議室にやってくる。
席に座らされる。他の班のプログラム班のリーダーとディレクターだったり結構偉い人たちもいた。
「ああ! 進捗報告会!」
「はぁ…」
「なに思い出したように…。君のそのクマ…また徹夜したね…」
「えっと、とりあえず来年発売する超大作"メアリークイーンと魔女の花"の全キャラクターのデザインを終わらせました!」
「…まだ締め切りはあったはずですけど」
「描いてるうちに楽しくなっちゃってつい6日間寝ずに…」
モブの顔やらメインキャラクター、サブキャラ、悪役など結構拘って描いた。
大まかな図案だしダメなところがでたら直すけど…。
「そもそも君はイラストレーターを統括するのが仕事だ。描くのはイラストレーターだ」
「いいじゃないっすか。まだ途中に挿入するアニメも残ってますしそちらに時間を割いた方がいいかと思いまして。魔女の花は我々としても今まで以上に熱意込めてますし」
「ま、いいだろう…。プログラム班はどうだろう?」
やっと会議が終わり、自分のデスクに戻ってくる。
空き缶が散乱してて見たくもない机の上だが掃除せんとなぁ…。
「さて、仕事仕事…」
「あ、あの、葉隠さんはもう帰って寝てください…」
「寝ることは私が許さない!」
「自分を許してあげてください! そのままだと死にますよ!?」
「体力だけが私の取り柄! なんのこれ…」
その瞬間、意識が飛びそうになった。
思わず足元がふらつき、転ばないよう足をつく。やばい、眠い…。
キャラクター描き終えたという安心感が私を包む…。
「だが私が帰ると安田一人だ…」
「大丈夫ですよぅ。私だって結構長く勤めてるんですからぁ」
「そ、そう? じゃ、頼んだ…」
私はタイムカードを押してそのまま会社から出た。




