私は絶頂であり続けたい
タイトルに感じられるギャングのボス感
私は絶頂であり続けたい。
嫌なことは絶対に見たくない。
「満ぅ! やめて! もうやだって! 先に進まないで!」
「いや、進むしかねーんだよ……。こういうもんなんだから」
「だめ、ダメだってぇ…」
涙が出てきてしまう。
現在、満がホラーゲームをしていた。私はソファに座り、クッションを目隠しにしつつ恐る恐る見る。
プレイしているタイトルは”宵闇の唄”というものだ。あらすじはというと、とある港で釣りに出かけようとした男と女はいつしか見知らぬ島にたどり着いていた。その孤島で、主人公である真奈美以外何者かによって殺されてしまった。そんな孤島から脱出するホラーゲーム。
殺人鬼とかが追いかけてくるホラゲーならできるんだけどマジモンの幽霊のホラゲーは無理!
「あっ、やべ、見つかった」
「音楽怖い!もうやめようよぉ…」
「ここからが面白いんだって! そーら、逃げるぞー」
満は嬉々としてコントローラーを操作していた。
私はクッションで前を隠している。大人になっても幽霊や蛙は本当にダメなのだ。幽霊に対しては多少免疫ができたと思う(IUOというゲームでアンデッドを目にしているから)が、それでも怖いものは怖い。
「って行き止まり! やべ、追い付かれる!」
「ちょ、なに止まってんの! こ、怖いんだから逃げてよォ!」
「行き止まりだからこれ以上無理だっての! ルートミスった! こ、殺される!」
と、その時、ゲームのBGMが止んだ。
そして、その瞬間、画面いっぱいに真っ白い肌に血が付着した女性の顔が映し出される。女性の悲鳴と共に…。
私は思わず「ひいやあああああああ!?」と叫んでクッションを投げた。
「怖い怖い怖い怖い…」
「あー、これ意外と心臓に悪いな…。今日はこれをクリアして眠る。どうせ明日は休みだし」
「もうリビングでやらないでよォ!」
と、その時インターホンが鳴る。
下で誰か開けてほしいということだろう。
「満ぅ、私動けないからやってぇ…」
「どんだけびびってんだよ…」
と、呆れながら満はモニターに向かう。
「真野ちゃんだ」
「真野ちゃん!」
私はがばっと起き上がりモニターを確認すると真野ちゃんだった。サングラスをして、マスクをしているが確かに真野ちゃんだ。声が真野ちゃん。
「おーい、美咲ちゃーん。遊びに来たから開けてー」
「りょうかいです!」
「俺といるより真野ちゃんといるほうが楽しそうだな…」
「…好きの種類が違うから」
「ま、そう思っておくよ。さて、俺は続きでも…ん? あ、このゲーム真野ちゃんが主人公の声当ててんだ。どうりで聞いたことあると思ったら」
「まじ?」
「うん。ほら、パッケージに書いてある。真奈美ちゃんが真野ちゃんだって」
「…私にプレイをしろと? いや、でも真野ちゃんだけどホラーだし…」
大好きな真野ちゃんが出てるとしてもこれはさすがに…。
ホラーゲームだけはやる勇気がない。せめて殺人鬼とか人が怖いっていうゲームならなぁ。それなら私はできるし、むしろ殺人鬼を殺しにかかるぐらいにはやるんだけど。
そして私が悩んでいると真野ちゃんが家に入ってきた。
「お邪魔しますねー。あ、満さん。これ先月ドラマでいったところの地酒です。お土産にと」
「あ、ありがとうございます。そんなわざわざ俺のために」
「満さんが嬉しいと美咲ちゃんが嬉しそうにしますからねー。って、ゲーム? ああ、宵闇の唄…。これ怖いですよねー」
「でもすっげえ面白いですよ」
「これ私はクリアしたんで進めてあげましょうか?」
「あー、はい。俺がやるとすんなりいかないんで美咲が怖がるんですわ」
「美咲ちゃん幽霊ダメだもんねぇ。わかった。コントローラー貸してください」
と、真野ちゃんがコントローラーを持つ。
そして、真剣な顔でホラゲーを進めていくのだった。
凛々しい真野ちゃん素敵です。横顔可愛い…。