二人のなれそめ
私は、達成感に溢れていた。
「やっと終わったぁあああ!」
と、手を天に掲げ喜ぶ。
今度発売するゲームのキャラデザを書ききった。私はゲームイラスト班のリーダーなために滅茶苦茶多忙で滅茶苦茶残業するけど、その分自分が書いた絵がゲームになるのは少なからず嬉しいし、ゲームが売れるのも嬉しい。辛いけど天職だった。ゲーム会社は。
「リーダー! お疲れ様です!」
「まったく、プロデューサーもモブの顔を百枚近くかけって無茶言うよ…。いや、もっとパッション的な感じならよかったけどリアルよりッていうのが辛かった…」
私たちは帰る準備を整えていた。
「あ! そうだ! リーダー、今日合コンいきません? うちの大学時代の友人が今誘ってきてもう一人連れてきていいよって言ってたので!」
「合コンかぁ。うーん、どうしよっかなー」
いってもいいけど恋人かぁ。仕事が楽しいし作らなくてもいいけど結婚はしたいんだよな。
合コンとか積極的に参加してかないと行き遅れになりそう。ただでさえ今年で29。もうアラサーもいいところだろう。
私は二つ返事でオーケーを出すと意気揚々と返信していた。
「じゃあ店まで一緒に行きましょうよ!」
というので後輩と一緒に店に行くことにしたのだった。
店につくと、すらっとしているイケメンがいたりなど男性陣もなかなか豪華、女性陣も滅茶苦茶若い。
いいなぁ。肌とかめちゃくちゃ若い。私は仕事が忙しくてケアとかろくにしてないしそういうの苦手なんだよな……。
「お待たせ! 仕事終わりだから私服だけどごめんねー」
「あ、ああ、いや、その、参加させてもらいます…。みんな若いのに一人だけちょっと浮いてる…」
「先輩、三十になるとは思えないほど若く見えますよ!」
「ありがとう!」
若いと言われてちょっと自信が付く。
「……え? まじで三十なの?」
「うん。高校生ぐらいに見えるけど三十」
と、後輩とその友達がなにか話していた。
「私たちとタメに見えるぐらい若すぎるよね? あれめちゃくちゃ若作りしてるでしょ」
「先輩の家化粧品ほとんどないよ?」
「それであの若さ!? やばすぎない?」
「ちょっと? 陰口聞こえてるからね?」
「あ、いや、陰口じゃないですよ!」
ならいいんだけど。
「とりあえず自己紹介しちゃって二人とも!」
「あ、うん。私は安藤 千里です」
「あー、葉隠 珠洲です。たぶんこの中で一番歳取ってるかも…」
「はじめまして」
「……」
「……零?」
私は目に入った男の人を見ると目をそらした。
「ごめんなさいねー。こいつ女になれてなくて」
「ずっと男子校にしか通ってなくて女性と触れ合ったことないんだぞ…」
「だからめっちゃくちゃ女子に免疫ないの。正直数合わせで連れてきただけだし本人もあまり関わってほしくないみたいだから…」
「が、頑張るよ」
「…お前頑張るって何を?」
「ぼ、僕葉隠さんと付き合う!」
私は噴き出した。
「ちょ、本人に聞こえてるぞ!」
「ええ!? ああ、い、いや、なんでも…」
え、こいつ私のこと好きなの?
いや、うーん。好き、なのか? 付き合うってカップルとしてってこと? それとも買い物とかに付き合うってことだろうか。
「は、ははは、葉隠さん!」
「ふぁ、ふぁい!」
「つ、付き合ってください! 一目ぼれしました!」
私はまた噴き出す。
「ふぁえ!?」
「順序飛ばしすぎだろうお前! どんだけパニクってんだ!」
「だ、だだ、だってみんな葉隠さんとるかもしれないし今のうちにこ、ここ、告白しないと!」
「こういうのは普通連絡先交換し合って食事とか一緒に行ってだんだんお互いの事をわかり合えて来たかな?って時に告白するんだよ! ごめんなさいね、零が」
と、イケメンの男の人は謝ってくる。
……いや、悪くない。意外とっていうか、零さんの顔滅茶苦茶タイプなんだよな。私の琴線にグッとくるっていうか……。目つき悪いけどヘタレな人って私好きっていうか……。
ぐっ…。告白されたんだ。受けてしまおうか?
「うう…でもこうでもしないと全部お前に…」
「はぁ…。お前にもいつか現れるって。だから…」
「つ、付き合おう零さん!」
「先輩!?」
「いいんですか!?」
「もちろんだ!」
「と、いう風にカップルになりました」
「あんたらどっちも頭悪くない?」
珠洲ちゃん視点です。