初心すぎる二人
私は自分の家のソファーに座りながら缶ジュースを飲んでいた。
「…君たち結婚するっていうのになんでそんな距離なの?」
と、私の目の前にいるのは珠洲と男の人。
結婚報告に来た、というのだが、距離が遠い。私は呆れながら缶ジュースを飲み干す。
「そ、その…意識すると恥ずかしいっていうか…」
「お、俺女性に免疫がなくて…。そ、その…気安くできないっていうか」
「お前らは付き合いたての中学生か」
私は男…名前を唐栗 零というらしい。
唐栗さんに缶コーヒーを渡し、珠洲に紅茶を渡す。
「突然で驚いたし嬉しいけどなにそのツッコミどころしかない距離感…。感動もできないんだけど」
「い、いや! 私も人を好きになったのが初めて…っていうか、その…」
「い、いつもの珠洲じゃない…」
「もう! 彼の前ではいつも通りできないんだってえ!」
「…………」
彼の方はすっかり黙りこくってしまった。
顔が滅茶苦茶赤い。何この思春期たち。
「言い方悪いけどどっちも子供かよ!? なんでもっと近づかないの!? なんで私を間に挟むの!? 隣に座りなよ! 新婚〇んいらっしゃいを見ろよ! なんで私を間に挟むの!? オセロか!? オセロなのか!?」
「だってえ!」
「新婚なら隣に座れ! ったく、私が何で珠洲と彼氏の橋渡しをしなくちゃいけないんだか…」
私はぶつくさ言いながらも席を移動し珠洲の横に座り、ぐいぐいと押し込む。肩と肩が触れ合うくらいまで近づいた彼ら。
私は本題を話しはじめることにした。
「それで結婚式のスピーチを私にしてほしい、ということだよね?」
「……」
「……」
「なんか喋ってよ…」
本当にいつもの珠洲じゃないからやりづらい。もっと知能低く強引なタイプなのに恋愛では引き足なのがちょっとむかつく。
もっといつも通りしてほしいなあ。
「引き受けるけどその様子だと絶対バージンロード歩けないでしょ」
私だって結構ドキドキしたし今でも満が好き。
でもここまでじゃないな。黙りこくって喋らなくなるほどじゃない。恋は人を変えるとか聞いたことがあるがこうも変わるのか?
「ケーキ入刀とか絶対できないよ。絶対固まってケーキ入刀できないタイプだよ…」
「……そういわれるとそうなる気がする」
「この距離で黙るんだから手と手が触れ合うなんて絶対に無理だっての…」
とりあえずお互いがお互い慣れるしかないだろう。
「とにかく今日から同棲しなよ。たぶん慣れなくちゃいけない。お互いがお互いに好きな人が家にいるってことに…。いや、割とマジで重症レベルだから」
私がそういうと二人は頷いた。
「言われるがままにするってのもダメなんだけど…。とりあえず、おめでとう。さ、お腹空いたでしょ。そろそろ満も帰ってくるころだからご飯食べていきなよ」
私は立ちあがり、ご飯の支度をすることにした。
フグ鍋にしよう。まだまだ寒いし。