気の早い夫婦の名づけ会議
私たちは一枚の紙を目の前に出していた。
「子供の名前、どうします?」
「そうなんだよなぁ…」
私たちは生まれてくる子供の名前で悩んでいた。まだどちらの性別かわからないので男子と女子のどちらの名前も考える予定だ。
まだ気が早いと思うが、こういうのは早く決めておきたい。
「恥ずかしくない名前のほうがいいよね。星に凛とかいてキララって読ませるのはさすがに子供に悪いし…」
キラキラネームにならないようには注意したい。
「うーん、例えば入れたいもの、とか」
「入れたいもの?」
「たとえば誰でも暖かく包み込む春の名前をいれるっていうなら春乃とか春太とかあるし、あっぱれって書いて天晴と読むのでもいいと思うし」
「あー、そっか。そういうのもありか。っていうか、天晴は普通にありだな。それがいい。男子だった場合はそれにしよう」
ということで男子の名前は決まった。
「問題は女子、か」
女子っていうのは名前一つでいじめられるかもしれないからなぁ。
たとえば花子ってつけたら古臭いとか言われて馬鹿にされるかもしれないしキラキラネームだとキラキラネームでいじめの対象になるし……。
「名付けセンス基本俺ないからなぁ」
「私も」
「ゲームでも自分の名前を少しもじったぐらいだし自分で考えた名前超ださいし」
「…たとえば?」
「スーパーフルマタくんとか」
「ださっ!」
スーパーマンでも目指してたのかな。
「スーパーフルマタくんってださすぎ。ってかフルマタくんどっからきたの」
「いや、俺が小学生の時に古田将司っていうやつがいてそいつのあだ名がフルマタだったんだよ。俺もそいつみたいな人気者になりたいなって思ってあやかってつけただけなんだけど……」
「満は人気者にならなくていいって。私だけが知ってればいいんだよ」
「お、おう」
なぜ照れてる。
とはいえ、名づけかぁ。
私も名づけには自信がない。A2Oをしていたときも美咲のさの字をぬいてミキっていう名前だったしなぁ。
男の子は基本やんちゃっこが多いしかっこいい名前つけ解きゃ大丈夫だろうという適当加減がすごいけど女の子は神経質だからなぁ…。
「美咲から字を少しもじって夢咲っていう名前は?」
「クレヨンしんち〇んのみ〇えの実家みたいな決め方…。あっちは姉妹だけど」
流石に自分の名前を少しもじっただけなのは嫌だな。ややこしい。
「じゃあ美人に育ちますようにっていうことで小町とかは?」
「小野小町とかにあやかるつもりだな?」
花の色は移りにけりないたづらに我が身世に振る眺めせしまに。
こういった短歌を読むようになるのだろうか。それにしても…
「城ケ崎小町ってなんか嫌だな…」
「のつける必要ないけどね…」
広瀬小町ならまだわかりそうな気がする。
「でも小町も悪くはないんじゃないか? 俺的にはすごいありなんだけど」
「うーん、他に候補もないしそれでいいよ」
名づけ会議、終了。