節分
今日は満の家に邪魔していた。
満は赤い服を着て黄色で黒い模様が付いたパンツをはき、手には棍棒を持っている。そして、鬼のお面をかぶっている。
「鬼がきたよー。ほら、みんな豆投げてー」
私は声を上げると子供たちが一斉に満に向かって豆を投げていた。
「おにはそとー!」
「おにこわいー! あっちいけー!」
「完全なる黄金の回転エネルギー!」
おい誰だ最後の。
義兄さんも交じって投げてるじゃん……。満は豆を投げられて痛そうにしてる。すると子供たちは今度こちらに向けて豆を投げてくる。
「ふくはうちー!」
「ふくはうちー!」
「ふくはうちー」
と、優しく投げてくる。
満に対してはものすごく本気で投げているのに私に対しては赤ちゃんがいるからかやさしく投げてきていた。子供たち優しいー。
「わ、わりとマジで痛い!」
「あははは! おにさんあっちいけー!」
「さ、満。ここで退場だ」
「わ、我が心と行動に一点の……」
「もういいって……」
どこまでそのネタをやるつもりだ兄弟二人……。
いや、知ってる程度だから詳しくはよくわからないけど……。
「ほらー、今度は投げた豆を年齢の数だけ食べるのよー」
「僕6つ!」
「いつーつ」
「私7つだよ!」
子供たちは豆を食べ始める。
私も豆を口にした。私は29個食べればいいんだな。豆ってあまり食べないし大豆は食べれるけど食べたいっていうほどじゃないんだよなぁ。
豆腐とかで冷ややっことかは好きなんだけど。
「私37個も食べるのよぉ。辛いわぁ」
「落花生なら余裕で行けるんですけどね。うちの実家は落花生でやってたんですよ」
「私はそもそも豆まきなんてしなかったわねぇ」
義兄の嫁さんとそのまた義兄の嫁さんが会話していた。
満は男四人兄弟で満が末っ子らしい。兄全員結婚して子供もいるんだとか。すげえ大家族。満ってすごい大家族で育っているらしい。
「でもこういうのってふと気づいたら豆なくなってるほど食べますよね」
と私が言うと嫁さん二人が私の方を指さして「わかる!」と同意してきた。
「なんか食べたくもないのにいざ食べるとなると手が止まらないのよねぇ」
「落花生もひたすら食べて食べてでしたね。落花生むいたときに出るごみが滅茶苦茶多くて掃除機で吸ってました……」
「うちの息子は豆が好きで年齢以上の数を食べて毎回鼻血を…ほらまた出した」
「ままー、鼻血ー」
と、六つの男の子が鼻から血を垂らしてかけよってくる。
「豆の食べすぎよ。ほら、つっぺして」
「つっぺ?」
「北海道の方言ですよ。詰めることをつっぺ、というんでしたっけ?」
「そうね。出身が北海道だからたまに方言出るのよ。つっぺとかここの人言いませんもんね」
「方言が通じないってのわかるわねー。私も標準語に治すの大変だったわぁ」
「農家の出で父さんも母さんも方言ばっかでしたから私も結構方言いっちゃいますね。意識してはいるんですが」
みんな方言で悩んでるんだなぁ。私はここ生まれだし方言なんてもんはない。
「恵方巻買ってきたぞー」
「お、届いたわね。今年の方角は……」
「西南西ですね」
「方位磁石だとこっちよ」
携帯のアプリのコンパスを使って方角を示していた。
お義父さんが恵方巻を配っていく。私も受け取ったが私のだけサラダ巻きだった。他の人のは生魚が入っている。
「妊婦に生魚はダメだからサラダ巻きにした」
「気遣いありがとうございます」
私は有難く受け取った。
そういえばダメだもんね。
「じゃ、ほら、みんないただきますして」
「「「いただきまーす!!」」」
と、みんな黙々と食べ始める。
私も恵方巻にかじりついた。今年もどうか平和な一年でありますように……。ただそれだけでいいんです。