新年パーティー
一月一日の夜。
私は阿久津家に来ていた。招待状が届いており、パーティーに参加してほしいとのことだったので慣れないドレスに着替え、場違いながらも参加していた。
新年を祝うパーティーで、新年のパーティーは阿久津家の親族も呼ぶらしく参加させてもらっていた。私も親族ということだよな……。とはいっても従姉弟が弟と結婚しただけなんだけど。めちゃくちゃ血縁関係としては遠い気がするが……。
「先生。あけましておめでとうございます」
「あ、月乃ちゃん……。明けましておめでとう」
月乃ちゃんは、派手な装飾もなく、フリルがあしらわれたシンプルな黒いドレスを見にまとっている。髪はまとめられており、花飾りが頭につけられてものすごく可愛く思えた。
なんていうか、いつも見ている月乃ちゃんではない。パン子さんたちと絡んでいるような子には見えない上品さと気高さが伝わってくる。
「先生、ドレスお似合いですね」
「月乃ちゃんが一番似合ってるよ……。やっぱり自信無くすなぁ」
「先生も純白のドレス似合ってますよ。ウエディングドレスみたいで素敵です」
「つい先日ウエディングドレス着たばかりだけどね……。でも、私華美な装飾とか苦手だからこれにしたんだけど……」
「私と同じです。私も華美なのはあまり好まないんです」
まあ、なんとなくわかる。
ファッションはちゃんと考えてるだろうけど、そんな浮ついた服を着ていない。むしろ落ち着いたコーディネートが多かった。
いや、絡んでるほか二人がめっちゃくちゃ適当っていうこともあり目立つんだろうけど……。
「では、私はまだ挨拶があるのでこれで」
と、ドレスの裾をつまみ、ぺこりと礼をする月乃ちゃん。
本物のお嬢様だなぁ。
「隣、よろしいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
と、グレーのスーツを着て胸元に赤いバラっていうどこのナルシストだっていうことを考えていると、突然自己紹介を始めたのだった。
「僕は斉木 春斗。今波に乗っている証券会社の後継ぎさ。君、僕と釣り合うよ。どう? 結婚しない?」
と、求婚された。
私はごめんなさいと頭を下げると、なんだかぷるぷる震えていた。
「なぜだっ……! 僕が金持ちだっていうことわかるだろう! 金によりつくんじゃないのか! 女って生き物は!」
「そんなひとくくりにされても……。っていうか私、つい先日結婚式あげたばかりですし」
「なっ……!」
「左手に婚約指輪嵌めてますから。それに、私お金持ちには一切興味ないんで」
と、バッサリ断った。
浮気なんてするつもりはない。
「な、なな……! なんで断るんだ! 女の分際でええええ!」
と、手に持っていたワインを私にかけようとしたので一歩後ずさると、飛び出したワインが白いテーブルクロスにかかって染みついていた。
わなわなと怒りを隠せないようだった。
「どうなさいましたか? 斉木様」
月乃ちゃんが事態に気づき、駆け寄ってくる。
「どうもこうもない! この女が僕の求婚を断りやがった!」
それを聞くと、月乃ちゃんの目がどんどん細くなっていく。
「女の分際で結婚相手選ぶとかおこがましい。そうとは思いませんか?」
「私に同意を求めてるのかしら。ならおあいにく様。私は同意しかねるわ」
「なっ……」
「私の性別忘れたのかしらこのバカなナルシスト豚野郎は。いい? 私は女よ。わかってるかしら?」
と、爪を相手の額に押し付けぐりぐりとしている。
「経営の手腕は見事だし、波に乗ってるっていう事実も相まって見込みがあると思っていたけど社長がこんな欠けた人格をお持ちだなんて思ってなかったわ。決まっていた取引はすべて白紙よ」
「そ、そんな!」
「悪いことをしたら天罰が下るのよ。天はちゃんと見ているの。それじゃ、あなた帰っていいわよ。っていうか帰りなさい。不快だわ。テーブルクロスも弁償してもらうから」
「ひいいいいい!?」
と、走って逃げていった。
私は何が起きたかさっぱりわからない。