結婚直前の飲み会 ②
みんなそれなりに酔っていた。
真野ちゃんと真綾も顔が火照っている。私は酒飲んでないのでシラフなままだ。
「ん、あつい」
「……私なんかぁ」
「…………」
真野ちゃんは服を脱ぎだし、珠洲は泣き、真綾は黙ってお酒を飲んでいる。真野ちゃん脱ぐくせあるんだ……。エッチい体ですよ! いけません! あー、いけませんってば! 私が興奮するじゃないですか! いけませんよ!
「コイバナしよー!」
「おー」
「おー!」
みんな乗り気!?
「私、実は付き合ってる人いまーす」
「え、まじで!? 交際!?」
真野ちゃんがとんでもないことを暴露した。
交際してるの!? 誰と!?
「同級生だった人だよー。とても優しーんだー」
「初耳……」
「うふふ、サプライズにしておきたかったんだー」
「言っちゃってよかったの?」
「いけなかったー」
いけないんかい!
多分私以外は酔いが覚めたら忘れてるだろうし私も記憶から消しておこう。真野ちゃんは誰とも付き合ってない。うん、付き合ってないさ。
「次まーや!」
「私? 私は別に好きな人はいないけど告白はされてあと数か月後に結婚式あげるかな」
「えー! 真綾も結婚するの!? ってニュースになってたなそういや。もう籍はいれてるんだっけ」
「いれてる。ま、私が根負けしたって感じだけど」
「私だけ交際相手いないよー!」
と、珠洲が嘆いている。
珠洲、見た目は可愛いんだけど性格がな。家事まるっきりできないし……。
「そもそも珠洲ちゃんの職場で出会いってなくない?」
「ブラックだものね」
「限りなくホワイトに近いブラックだよ!」
「村上龍?」
それ、どっちにしろブラックだろうが。
「美咲ちゃんは彼のどこがよかったの?」
「ん、昔から気遣いは人一倍できてたかな。私は最初友達って認識だったんだけど気づいてたら惚れてたっていうか。私も真綾と同じで根負けしたって感じかな」
「美咲も広瀬から神林になるのか……」
「神林くんが相手じゃないからならないけど……」
「なんて苗字になるんだっけ?」
「城ケ崎。高校時代はあまり話したことなかったけど、同窓会で出会ってからまた話だしてさ。お互い遊んでいくうちになんか惚れたって感じ?」
「遊ぶって……ヤったの?」
「いや、それは結婚してからって決めてたししてないよ。遊園地行ったりとかしただけ」
城ケ崎君がお金を払ってくれていた。
いつも助けてもらってるのでお礼がしたい。
「私は結婚できてうれしいけどあっちは嬉しいのかな。プロポーズがなかったし結構不安なんだよね」
「マリッジブルーってやつ?」
「そんな感じ」
「なら今から電話しようね!」
「え!?」
真野ちゃんは私から携帯を取り上げた。
そして、連絡先から城ケ崎と書いてる電話先に電話する。あーあ……。
「あ、もしもし? 私生出っていうんですけどー、あなたの美咲ちゃんがマリッジブルーでさー。慰めてやって」
と、電話を渡される。
私は、もしもしと小さい声で言うと、城ケ崎君はようと挨拶してきたのだった。
「その、ごめん。プロポーズがなかったから養子のせいで仕方なく? とか思うことあってさ」
「……その、それは俺も悪かった。養子は俺も一緒に育てるから一緒にいてくれって言おうとか思ってたんだがその、恥ずかしくて声に出せなくてな。つい結婚するのが条件だっていう風にしてしまったんだ」
「そうなの?」
「あ、ああ。その、こっぱずかしかった。悪かったよ」
「ううん、私こそ」
「じゃ、じゃあ。明日、楽しみにしてる。神林たちもくるってさ」
「えー」
「神林は嫌か?」
「嫌ではないけど……」
高校時代の空気を読まない神林君の姿が浮かんだ。
「大丈夫さ。あいつも大人になった。泣いて祝福してくれるさ」
「そう。神林君も相手見つかるといいけどね」
「いつまでも初恋ひきずってやがるからな」
私が初恋の相手ってことだろうか。
複雑……。
「その、これからも、よろしくな」
「うん。お互い不器用な恋だったけど、これからも一緒に不器用でいようね」
電話が切られた。
「じゃあ、私はこれで帰るよ」
「もう帰るの?」
「うん。もうそろそろ帰んなきゃ明日寝坊しちゃうし。ついでに珠洲も送ってくよ」
「わかったよ。じゃあね」
真野ちゃんは私に微笑んだのだった。