番外編 七夕
七夕。
それは、彦星と織姫が会えるたった一日である。笹に願い事を釣るしておくとその願いが叶うとか。
高校二年生の私は、近くで行われている七夕祭りに来ている。真野ちゃんがくるらしいので、私は万全の態勢で挑むことにした。
あと、七夕なので願いごとを書くのもある。
「着物似合ってるねー。流石美咲」
「地衣。私としてはいつものスタイルでもいいんだけど、珠洲のお母さんが仕立ててくれてさ。着ないわけにもいかないし」
「珠洲のお母さんナイスだよ。ねえ、写真撮っていい?」
「あまり好きじゃないんだけど写るの……」
「先っちょだけでいいから!」
「えぇ……」
まぁ、しつこく粘られるのもあれなので撮られておくことにした。七夕祭りと言えど祭り。気分がいいときにわがままは通されるべきだろう。
「で、願い事はなんて書いたのかな二人とも」
「私はゲームの大会で優勝できますようにだな。ネトゲで大会があるんだよ」
「へえ。美咲は?」
「胸が大きくなりますようにってことかな」
「…………」
「なんかいって」
「その、叶うといいね……」
なんだよその同情的な目は! 違うから! 大丈夫だからね!?
いや、いざとなったら青いネコ型ロボットに叶えてもらうから! 不思議なぽっけで! 不思議なぽっけで叶えてくれるっていうから!
「でも、胸が小さい人って浴衣似合うってのマジなんだな! 似合ってるぞ!」
「……珠洲。帰ったら覚えておけよ」
「ひっ……」
だから嫌だったんだ……。
浴衣は胸がわかりやすいから……。珠洲と地衣は立派なもんお持ちだから? そりゃ強調されるわけよ。胸の下に帯があるしそれにのっかってる形になるね。
私は? 私すっかすかなんですけど。ふざけんな。なんて理不尽だ。
……ユルセナイ。
「珠洲ゥ~私喉乾いちゃった。飲み物買ってきて?」
「自分で行け」
「あ゛?」
「今すぐ行きまっす!」
「あ、ついでに私のもお願い。ブルーハワイ!」
「私メロンな」
「トロピカルドリンクかよ!? 自販機で済まそうと思ってたのに!」
けっ。並びやがれ。
「それにしても蚊もうとんでんのか。うざいなぁ」
「まぁ、夏だからね。虫よけスプレーとかしてないの?」
「あれ臭いし」
「しないと寄ってくるよ」
地衣と話して十分がたった。
「流石に遅いなぁ」
十分も立って買えないのか。
珠洲の様子を見に行こうとすると、肩をとんとんと叩かれる。振り返ると、そこには骸骨がいたのだった。
「ひいやあああああ!? お化けえええええ!?」
私は思いっきり骸骨にグーパンチを決めてやると、骸骨の顔が取れて中から珠洲が現れたのだった。どうやら私を脅かそうとしてこのお面をつけたらしい。
わ、私はお化けにはなにするかわからないからな。じ、自業自得だあほ……。
あー、ビビったぁ。
「グーパンはないでしょ。グーパンは……」
「さすがに珠洲ちゃんが悪いよ。で、ジュースは無事?」
「うん……」
私たちにジュースを渡してくる。
ありがとうとだけいって受け取った。
「……あれっ!? 代金は!?」
「珠洲のおごりで。ごちです」
「くうううう!」
ふっ。貧乳を馬鹿にする罰だ。