私たちは同じ大地に立っている ⑥
原田が強制的にログアウトされた。
私の怒りは収まらない。珠洲を邪魔者と罵ったことがどうも許せなかった。けれど、少しはすっきりした。原田のあの滑稽な怯える姿は私の脳裏に焼き付いた。
そして、原田は十分後、また戻ってくる。
英気を携えたのか、また私を睨んできていた。だけど、もう怯まない。
私が睨み返すと、さっきの恐怖がまた戻ってきたのか、原田はびくっと怯えていた。
「……もう、ビビらない。原田。終わりにする」
私は一気に原田に詰め寄った。
原田は、それが気に食わなかったのか、私を掴み上げる。
「う、うるせえ! お前はさっきから何なんだよ!? なんでそんなにつながりを大事にするんだよ!? 意味わかんねえ! 朱音はお前を苛めてたのになんで信じられるんだよ!」
「……友達だから」
「そんな傷の舐めあいっこをする仲が友達!? 笑わせんな! 傷をなめあうだけなら友達とは言わねえだろうがよ! 気色わりい!」
「……はぁ」
私は、また変換して力を込める。
原田を引きはがして、私は首元にナイフを突きつけた。原田は、立ち止まる。
「お前は今も昔も惨めだよ! 傷をなめあいたいだけじゃねえか! それに俺を巻き込んで傷を作りたいとかふざけんなよ! 悪いのはあんたらだろうが!」
「黙れ!」
私が怒鳴ると、原田は何も言わなくなった。
「悪いのは私だァ? ふざけんなよ! 責任転嫁ももう飽きたわ! 昔からいじめるのはあんたのせいだろ! 悪いのは自分だ!」
原田の額に人差し指を立てながらそうがなり立てる。
「逃げるとか何時からお前はそんな弱くなったんだよ! いじめてるのは心が弱いもんな。誰かを虐げないと生きていけないからいじめてたんだもんなぁ! どうなんだよおい!」
「ち、ちが……! 俺はッ……!」
「本当に強かったらいじめなんてみみっちい真似しねえんだよ! いじめるからお前は弱いんだ! 違うかおい!」
「……う、うるせえな!」
「お前は一体何人に迷惑かけるつもりだよ! 少なくとも、中学のクラスにはお前の味方はいねえ! その意味がわかるか? お前は見放されたんだよ!」
「………」
原田が押し黙る。
怒鳴り続けて少し疲れてきた。けれど、言いたいことはまだ山ほどある。でも……原田はもう救えない。きっと、私のこの怒鳴りも無意味になるんだろう。
だから……少しでもトラウマを植え付けるために……。私は許さないために。
「言いたいことは以上だ。もう、死ね」
私は、ナイフを振りかぶる。
「う、う、うああああああ! 俺は、俺は見放されるわけない! お前とは違うんだ! お前みたいなっ……!」
「なんだよ。お前も、結局つながりを大切にしてるんだな。けど、自分のつながりを断ち切ったのはあんた自身だ。自分で自分を傷つけて気づかない愚か者は……死ね」
ナイフが、原田の首に突き刺さる。
原田はポリゴンと化して、消えていった。
私は、その場に座りこむ。
「終わった……」
私の過去を、断ち切れたような気がした。




