私たちは同じ大地に立っている ③
嘘だと信じたい。
朱音がそんなことを言ってたなんてことは嘘だって言いたい。朱音は私の友達……なんだ。朱音もそういってくれた。
でも……でももし本当だったら? それは強い裏切りになるんじゃないか?
「あははは! 本当お前は弱いなぁ! 味方だと思ってたやつの裏切り。やっぱりあいつも俺側なんだよ! 信用するだけバカなんだよ」
「ち、違うっ……! 朱音はそういう人じゃない!」
「そういう人って……広瀬に霧崎のなにがわかんの?」
原田の鋭い視線が私を射抜く。
「まさかあの短い付き合いで霧崎の事理解した気になってたのかよ! 笑えるわー! 滑稽すぎる! お腹いてえ!」
「…………」
「いいねぇ! その絶望した顔! 広瀬はその顔がお似合いだよ!」
何も反論できなかった。
理解した気になっていた。まだ、私は朱音の事を何も知らないというのに。バカだ。私は、バカだ。朱音は本当に裏切ったのか?
……信じたくない。けど。
「しねえ!」
と、原田に攻撃が飛んだ。
原田は危なく躱す。
「おー、おー、来たか」
「はぁ……はぁ……。何吹き込んでんだよ! 私はもうそっち側じゃない!」
「朱音……」
「……言っとくけど、私はちょろいって言ってない。でっちあげた話だよ」
朱音はブーメランを構えて立っていた。
「そうかよ……。お前はほんとうにつまんないやつになったんだな」
「つまんないのはこんなことする奴だろ。つまんない生き方してさ。だっせえ」
原田と朱音は睨みあう。
朱音は……裏切ってない。よかった。疑ってしまったのは悪かった。でも、信じてもいいんだよね? 朱音を、信じてもいいんだよね?
「霧崎ィ……。お前、ヒーロー気取りか?」
「んなわけないでしょ? 私はか弱いヒロインだよ」
「不細工なヒロインなんて聞いたことねえなぁ?」
「悪役は悪役らしくどんと構えなよ。下っ端感がすごいよあんた」
二人はフフフと笑う。
「昔からそうだったよなぁ……! 俺とお前はやっぱり気が合わねえ」
「みさを苛めるときだけしか手を組んでない間柄だったじゃん?」
「生ぬるいいじめは見飽きたんだよ……。いじめはもっと激しくやらねーとな?」
二人は対峙した。
にらみ合う両者。私は、ただただそれを見ていた。朱音は、私のために頑張ってくれている。私のために。でも……なんか、申し訳ない。
本当は、私が立ち向かわないといけないんだ。だから……。
「朱音。原田とは、私がやるよ」
「みさ。いいの?」
「私はこれを乗り越えないといけない。絶望してる暇なんか、ない」
「……けっ。本当につまんねえ奴。見ててむしゃくしゃするぜ」
私は原田を睨んだ。
これは、最終試験だ。過去を乗り切るための。だから……私がやらないといけない。
「わかったよ。みさ。頑張って」
「頑張る」
私は、構えた。
過去を乗り切る。それは簡単なことじゃない。私のせいであらゆる人に禍根を残した。家族は私を恨んでるのかな。それとも自分の罪を嘆いているのかな。
珠洲は、どんな気持ちで私と付き合ってくれてたんだろうな。本当は辟易していたんじゃないのかな。
地衣は、私をウザいと思わなかったのかな。関わりたくないなって、本心では思っていたんじゃないのかな。
そんなことを考えてる自分を、乗り越える。
もっと私は、図々しくあるべきだ。