私たちは同じ大地に立っている ②
私は、変わった。
悔しいという感情を原田に持つことができていた。それはきっと、原田を克服できていたということなのかもしれない。怖いという先入観で体をビビらせていただけなんだ。
きっと……そうなんだ。
「……私は、お前を許さない」
「お前が誰を許さないって?」
原田は、私を思い切りぶん殴ってきた。
痛い。けど、怖くない。怖くないんだ。私はもう、原田が怖くなくなっていた。大丈夫だ。私も、繋がりができた。安心を得ている。だからもう、怖がる必要はない。
これも、A2Oのおかげかもしれない。
このゲームが、私を大きく変えてくれた要因だろう。このゲームを紹介してくれた珠洲には感謝しかないな。
私は立ち上がる。
「原田。昔の恨みは、晴らす」
「おもしれえ。逆らえるようになったじゃねえかよ! つまんねえなあおい!」
私は精霊魔法を放った。
放った魔法は原田にやすやすと躱される。伊達にPKを長くやってないだろうか。原田は、不快だといわんばかりに顔をゆがめた。
つまらないんだろう。玩具だと思っていた私が意志を持ち始めたんだから。従順な殴るサンドバッグが意志を持ったっていうのが面白くないんだと思う。
私は、殴られてばかりの美咲じゃない。私は変わった。私には友達がいる。珠洲や、朱音は、きっと……私の味方をしてくれる。
だからこそ、立ち向かえる。繋がりが、私を助けてくれると信じてる。
「前の従順なお前のほうがつまんねえしそっちのほうが望まれてんだよ! 霧崎も、陰でお前の事……」
「いうな!」
私は、思いきり魔法をぶち込んだ。
その先は言わせてはいけない。それを聞くと、私は少し悲しくなりそうだ。陰で悪口言われてたのは知っている。けど……聞いちゃだめだ。
「あっぶねえなぁ……。で、霧崎なんだが……」
「いうなぁ!」
もう一発ぶち込んだ。
「霧崎は先日こんなことを言ってたぞ」
「いうないうないうな!」
「お前の懐に入りこむなんてちょろいよってさ」
「…………っ! 嘘だ! 朱音がそんなこと言わない! 朱音は……!」
「信じられるのかよ? お前を苛めてたやつなんだぜ?」
「…………っ!」
嘘だ。
朱音は、そんなこと言わない。懐に入りこんでって……そんなこと私にはしない。だって言ってたじゃないか。朱音は、何があっても友達でいてくれるって。そういってたんだ。
私を揺さぶりたいだけの狂言だ。言ってない。
「俺は、霧崎とフレンドにもなってるんだぜ? どうだ? 俺につながってるんだから怪しいだろ?」
と、フレンド欄を私に見せてくる。そこには、アカネと書かれたプレイヤーがいた。これが、朱音だっていうのか?
う、うう、嘘だよ。朱音は……私を裏切ったのか? 私の懐に入ったのは、原田に情報を渡すためだったのか?
「今から朱音を呼ぶな」
私は、思わず膝から崩れ落ちたのだった。