私たちは同じ大地に立っている ①
原田は、私を見下している。
「あははは! ここまでアバターを運ぶのは大変だったな! けど、これで心置きなくいたぶれるってわけだ。ここは誰も知らねえ場所だ。俺が見つけた場所。さぁ、中学の続きをさせてくれよ?」
原田は、笑う。
私は、足ががくがくと震えている。不吉な夢は、これを現してたんだ。原田が私を苛めるということを予知してたんだ……!
私は、怖くて足が動かない。
「体力がゼロにならないようにいたぶらねえとなぁ? 装備品は、すべて外させてもらったぜ?」
「私のアバターはセーフティーエリアにあった! ふ、触れられるはずがない!」
「ところがどっこい。あるバグを使えば簡単に触れれるんだよ。運営も馬鹿だよなぁ! こんなバグに気づかねえとはよォ!」
原田は笑った。
その笑いは、私の恐怖を呼び起こす。
「おい、痛覚設定をオンにしろ。しないと……お前を潰してやるからな。ほら、見せながらやれよ」
と、私の首元にナイフを突きつけて、やってくる。
私は、原田に見せながら、痛覚設定をオンにした。本当はしたくない。けど、逆らうのが怖かった。逆らいたくなかった。逆らったら……殺される。
もう、絶望しかない。一片の希望すら残っていないように感じた。
「あははは! さて! ここであったが運命だなぁ! お前は所詮、いじめられるんだよ! 弱者が! オラァ!」
原田が、私の頬を殴る。
体力が削れる。痛みが頬に来る。痛い。痛い痛い痛い!
私は、地面に倒れていた。
なんで……私がこんな目に遭わなくちゃいけないんだろう。なんで、私が怖がらなくちゃいけないんだろう。
――今の美咲はたくさんの味方がいるのにそれに頼らないことが不思議だよ
たくさんの、味方?
そうだ。一人で立ち向かわなくていいんだよ。一人じゃなくてみんなで……!
……でも、これは私問題だ。
「うううううう!」
「悔しいかよ? お前にそんな感情があったなんて初めて知ったな。だけど、お前は無力だよ。俺に負けるぐらいなんだからなぁ」
「ぐううううううう!」
この胸に攻めあがってくる気持ちは何だろうか。
悔しい……? もしかして、私は悔しいのか? 原田に対して悔しいという感情を抱いているのか? わからない。けど、この不快感は悔しいという感情と一致していた。
その意味に気づいたら、なんか少し笑えてきた。
「ははっ、そっか。私は、変わったんだな」
私は、にっこりと微笑んで見せた。
ラストスパートォォォ!




