不吉な夢
ラストスパート!
真綾の事件が一通り終わって、落ち着いたころ、地衣と珠洲がお見舞いに来たのだった。
なんだか表情が暗い。また、学校で何かあったんだろうか。
「あれ、どうしたの? また学校でなんかあった?」
「……いや、そうじゃないんだけど」
そうじゃない?
学校関係以外でこんなくらい表情はしたことないはずなんだけどな。珠洲はともかく、地衣はなんだか不安そうに私を見ている。
なんでそんな目で見てくるのかが、さっぱりわからなかった。
「みさー、いるー?」
「朱音?」
偶然にも、朱音が病室にやってきたのだった。後ろには真野ちゃんを連れて。
二人の表情も、なんていうか、暗かった。いつもの笑顔じゃない。なんでそんな不安げな瞳で私を見るんだろう。
「みんなどうしたの? なんでそんな不安そうにしているの?」
「……夢を見た」
「夢?」
珠洲が、話し始めた。
「美咲が、泣きじゃくってる夢。わんわんと泣いて……悲しんでる夢。それでちょっと不安になった」
「私もなんていうか、同じ夢見たんだ。美咲がさ、泣いてるの。泣いて、絶望してるの。目が虚ろでさ……心配で……」
「うん。その、珠洲ちゃんと同じ。私も今日そんな夢見た」
「葉隠ちゃんたちもなんだね。実は私もなんだ」
私が泣いている夢?
絶望している? 意味が分からない。なんで珠洲たちが一斉にそんな夢見たんだろう。なにかが起きる前触れということなんだろうか。
また、それが指しているのは一体何なんだろう。何が起きるというのだろう。
「美咲。私たちがいる。絶対に、ゲームやろうね」
「私も帰ったらすぐログインするよ。今日はバイト休む」
「私もする。その、みさとはやったことなかったけど一応やってるから……」
「私もするよ。その、今日は無理言ってスケジュール開けたんだ」
といって、みんな帰ってしまう。
ゲームをしろ、その時に何かが起きるということなんだろうか。とりあえず、私は真綾のほうを向くと、真綾はため息をついた。
「実は私も見たよ。私も今ログインするつもり」
「真綾も見たの?」
「まさか真野ちゃん達も見てるとは思わなかったけど。でも、不思議だよね。みんな同じ夢見るなんてさ。美咲は見なかったの?」
「夢見る暇ないくらいぐっすり眠ってたし……」
「そうなんだ」
だから……何が起きるかは知らない。私がどうなるかも、知らない。
けれど、なんか胸が少しざわついてきた。なんだろうか。この緊張は。なんだか、嫌なものに会いに行くという感じがする。冷や汗が伝っていく。
なんで、ビビってるんだ? 何を、ビビってるんだ? ゲームにログインするだけなのに、どうしてビビってるんだ?
……わからない。
とりあえず、ログインしてみよう。
ログインして、体を起こす。
そこは、知らない大地だった。え、どこなんだろう。どこなんだろうここは。と思って周りを見渡すと、ある男が立っていた。
それは、私が対峙したくない相手で。
「やっとお目覚めしたのかよ眠り姫さん?」
「原田……!」
原田が、薄ら笑いを浮かべて立っていた。
はいはい。ラスボスは暴露すると原田君です。