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Another Arcadia Online  作者: 鳩胸 ぽっぽ
第十層エリア 【因縁と怨念の交差】
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自分の頭で

 私は、安部さんと一緒に楽屋を後にする。

 そのあとを、新庄は追ってきた。私は、冷たい目を向ける。


「ほ、ほほ、本当に提出は……しませんよね? 脅し……ですよね?」

「有言実行が私のモットーだから。それじゃ」


 新庄の恨み声が聞こえた。

 殺してやるという憎悪の声も聞こえる。完全なる逆恨みだ。自分が悪くないと思い込んでいるんだろうか。やっぱり、救えない。

 私は……真綾が傷つけられたことが許せない。真綾は……モデルの仕事が好きだったのにさ。それをしばらくできないようにさせるなんて……。


 ……はぁ。


 私はため息しか出なかった。






 真綾が入院している病院について、安部さんと一緒に行く。

 病室前で、安部さんがどんどん過呼吸気味になってきていた。緊張……はするだろう。なにせ当事者の一人で、やってしまった罪の重さを自覚して、なお謝りにくる。

 私でさえ緊張しているから。真綾は厳しいからなぁ。なんて思いながらも、大丈夫かと声をかける。


「だ、だいじょぶです……。は、入ります」

「わかった」


 私は扉を開けると、美咲ちゃんと真綾が私のほうを向いてくる。美咲ちゃんはあからさまに笑顔になった。真綾は……わからない。

 安部さんは真綾の前にいって、土下座していた。


「ま、真綾さん! すいませんでした!」

「……は?」

 

 何が起きているのかわからないようだった。

 私は、苦笑いを浮かべながら事情を説明することにした。


「真綾さ、誰かに押されて怪我したって言ってたでしょ? その犯人の一人」

「……ふぅん」


 真綾の目が鋭くなった。

 ちょっと怒ってる?


「犯人の一人ってことはもう何人かいるんですね?」

「鋭いね。新庄さんだよ。あの」

「……あのくそビッチか」


 怒っているのはもう一人のほうらしい。

 安部さんは一向に頭を下げ続けたままだった。


「……私は、やってはならないことをしました。やってしまった後、ずっと後悔してました。すいませんでした。本当に……すいませんでした」

「…………はぁ。謝りに来る分まだ可愛げはあるよ」


 それはそうだ。

 安部さんは自分が悪いと自覚している。けど……新庄は、していない。間違ったことをしていないと思い込んでるからなぁ。余計にいらだつんだよね。

 

「はぁ……。まぁ、まだ複雑骨折で済んだぐらいだからいいけどさ。もしあのとき私が死んだらとかそんなことは考えなかったの?」

「あ、あの時は…考えてませんでした」

「だと思ったよ。あの事件で、余計な人まで巻き込んでる。それはわかってるね?」

「はい……」

「このご時世、冤罪でも刑務所はいってる人は就職しにくい。あんたらは人の未来を奪ったのも同じだ。その意味が分かる?」

「わかります……」

「わかってるのになんでやったの? 考えることをしなかったからでしょ」

「その通りです……」


 真綾は淡々と責める。

 安部さんは、涙を流しながらそれを聞いていた。


「なら、今後気を付けるのはわかるでしょ。自分の頭できちんと考えろ。誰かに思考を委ねるな」

「はいっ……」

「私からは以上。せいぜい罪を償いなよ」

「ま、真綾さん……!」


 真綾は、はあとため息をついた。

 そして、親指を噛んでいる。


「安部と比べて新庄と来たら……。一緒の会社はいるんじゃなかったよ。安部よりあっちのほうが罪深いだろ」

「そこらへんは上手く話しておくよ」

「やったことは殺人未遂です。証拠もあるし、安部が証言するなら実刑は免れないでしょ」


 その通りだと思う。

 私は、安部さんにいくよといって出ていった。安部さんは何度も真綾に振り返って謝っていた。

















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いずれ王となる君に~部下である剣士の私はその才能をゲームでも発揮します~
新作です。VRMMOものです。
読んでもらえると嬉しいです。
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