罪悪感で…
私は、ため息をついた。
今いるのは楽屋。ある人の楽屋だ。私は、真綾の代わりにあることをするだけ。
「し、失礼します」
「どうぞ」
入ってきたのは、モデルの新庄 深雪と安部 優奈。なぜ呼び出したのかわからないような顔をしているけれどさ……。
こう、防犯カメラの前でやっちゃいかんでしょ。二人って言いたい。
「は、生出さん……?」
「……はぁ。このまま警察に届けてもいいと思ったんだけどねぇ」
「警察?」
わかんないかぁ。
私は、タブレットを操作してある映像を見せた。防犯カメラの映像を何で持っているのかというと、事故があったコンビニ前の横断歩道には盗難とかが多くてコンビニの店長が慈悲で防犯カメラを最近設置したらしい。その店長さんとは知り合いで、防犯カメラを見せてもらった。
すると、やっぱり写っていた。
映像には、スマホをいじってる真綾がいた。そして、右から車がやってくる。そして、ある二人の人物が真綾を押していた。
くるっと振り返って、二人の顔が写っている。新庄と安部だ。
この映像を見て、二人の顔色が悪くなる。
「これ見て、弁明は?」
「え、ええ、えっと……」
「まぁ、弁明があってもなくても、これは立派な犯罪だしもみ消すわけにはいかないけどねぇ」
私は笑ってやった。
「そんなにも真綾が憎かった? 人気があったから? 自分たちとは違ってテレビにもちょくちょくでていたから?」
二人はずっと黙ったままだ。
すると、新庄がタブレットを持ち上げて、そのまま地面にたたきつける。タブレットは割れてしまった。その割れたタブレットを何回も踏みつける。
これはもう擁護のしようがない。
「ふ、こ、これで証拠は……!」
「あのさぁ……。私がこういうことをするって予想しないと思う?」
「なっ……!」
「ばっちりと、家のパソコンにデータは残ってる。口封じしたいなら真綾にしたみたいに私を殺すしかないよ?」
お前らのせいであの車の運転手は捕まっている。お前らが押したからあの車の人は捕まった。新庄たちがしたことは真綾だけで済む問題じゃない。
許さないほうがいいのだ。新庄たちが真綾にあんなことしなければ、真綾も、運転手も無事だったのだから。
「こんの……!」
「私が憎いかい? でもさ、その恨みは逆恨みだと思うよ。明らかにあんたらが悪い。それに、私を殺そうとしてもさ、無駄だよ? 私と新庄たち二人で話し合うってことは周りに言いふらしてるし、こんなとこで殺したら君たちが疑われるんだよ? それに、君たちが犯人だったら、全国民から恨まれるだろうね。私、こうみえてもファンだけは多いから。で、私を殺すのかい?」
「こ、殺すとかぶっとんで……!」
「ぶっ飛んでる? 真綾を殺そうとした人たちが何言ってるの?」
真綾を殺そうとした人たちが口封じのために私を殺す可能性もじゅうぶんにありえるでしょ?
だって犯罪を犯したっていう自覚はあるだろうし、バレたくないなら知ってる人を殺すのが一番手っ取り早い。ばれるわけにはいかないもんね? 犯罪者の烙印は押されたくないもんね? もうテレビには出られないもんね? モデルも無理だし就職だって前科持ちは厳しい。
「君たちがなにがなんだかわからないで捕まるのは嫌だと思うし、通報しますって告げて通報するのは十分優しくしてるよ」
「……すいませんでした」
「……こんなの認めないわ! なんで、なんで私より不細工な真綾のほうが売れるのよ! 私のほうが可愛いじゃない!」
「そう思ってるのは自分だけだったってことでしょ。それに、君の可愛さは凡庸だよ……。他より優れてるってだけで本当の可愛い人には負けるよ」
「言わせておけばッ!」
「でも、こういうことするから不細工って言われるんだよ。嫉妬するのは致し方無いにしてもさ、殺そうとするまで憎むというのは常軌を逸してるよ」
私より可愛いから殺すというのは如何せん頭が悪いと思う。
真綾は事務所の売り込みが上手かった。自分で長所とかウケるところを必死に売り込めばまだ売れる見込みはあったかもしれない。
まぁ、今となってはその助言もできそうにないけれど。
「安部さんは何も言わないの? 恨まないの?」
「……私はもともと自首する予定でした。やってしまった後、罪悪感がものすごくでて……いつバレるんだろうと、毎日が不安で……。これも仕方ないと思います。あの時やったことは、やってしまったことは考えなしでした。憎かったのは事実です。でも、こういうことするって、やっぱり可愛くありませんでした。猛省してます。私も一緒に行きます。証言します。生出さん。真綾さんに会わせてもらえませんか?」
「……わかった。そのあと一緒に警察行こうか」
「……はい」
安部さんは物分かりがいい方だった。
新庄は……救えない。