民衆は希望を求めた ③
箱の中から希望の光があふれ出てくる。
隕石は次々に消滅していった。魔物は、塵と化して消えていく。さっきまでの激闘が嘘みたいに、私たちは地面に座りながらそれを見ていた。
やっと終わったのだと、そう思った。
「終わったぁ!」
私は、そのまま地面に寝転がる。
さすがに疲れたような気がする。ものすごく集中していたからだろう。今日はゆっくり眠れそうだ。こんな集中したのは、久しぶりで……楽しかった。ゲームに本気を出すことが、とても楽しいことに気づいた。
「なんていうか、楽しかったなぁ」
「ゲームってやっぱり楽しいよね。さいっこう……」
私はマーヤと顔を見合わせて、そして笑う。
この終わった後の解放感。本当に最高だった。今までで一番の高揚感だった。今まで得たことのない気持ちだった。
楽しい、もっとやっていたい。そんな気持ちもどこかにあったのかもしれない。ゲームに本気を出したことって、そういえばなかった気がするな。ここまで本気で挑んだことは……。
「絶望、うち破れたりーーーー!」
私は、天高く腕を前に突き出した。
アルテナ様の謝罪が行われた。
パンドラの箱を創ったのはアルテナ様で、開けたのは私。予想以上の絶望がやってきたけれど、楽しかった。それはみんなも同じなのか、気にしてないというような態度だ。
だがしかし、アルテナ様は参加したプレイヤー全員に褒美を与えることになった。好きなものを創ってあげるという約束をして、プレイヤー全員がアンケートフォームに欲しいものを記入する。何でも好きなのを一つ希望していいとのことなので、みんな悩んでいる。
何があるかわからない人のために運営はわざわざカタログを用意してくれていた。
カタログをスクロールしながら、私も欲しいものを考えることにした。超レア素材から隠しエリア限定素材に、最高レアの武器など全部のものが乗っているようだ。
スキルの書もほぼ全部のスキルがある。私が持っている陽炎、霧化、霊体化など。さすがに理想郷のものはない。約束の地、不俱戴天はない。理想郷で手に入るスキルはすべてもらえないようだ。
「私、これといってほしいものないんだよなぁ」
「装備は?」
「基本躱すし無くても変わらないからこのままでいいかなぁって」
「武器は?」
「うーん。それが無難かな」
杖の欄を下にスクロールしていく。
杖によって得意な属性魔法もあるようだ。たとえば火属性の杖なら火属性の威力が大幅アップするけれど他の属性の威力が少なくなるとかいうもの。
なので魔法使いの基本的な戦い方は属性特化らしい。私は全属性を使うので、こういう火属性特化杖はいらないかな。
「ニーベルングの腕章……」
腕につけるブレスレットのようなものだった。
一応武器の類らしく装備品では武器として扱われるらしい。効果はというと、一度だけ攻撃を無効化するということだった。
何それすごいと思うけれど、デメリットもあり、こっちの攻撃も一度だけ無効化されるらしい。つまり、二回以上攻撃を当てなくてはならない。でも、それを差し引いてもいい装備だ。
「私はこれにしよ」
ニーベルングの腕章を選んだのだった。




