民衆は希望を求めた ①
ミキとマーヤは隕石を食い止めている。
チリンも、なにがなんだかわからずに魔物と対峙していた。
ミキとマーヤが頑張ってくれているからか、王都に物理的被害はほとんどない。あるとしても魔物によって壊されたものだ。
いつまで続くのかわからないこの戦況に気が参っている。どうにかならないものかとチリンはそう考えた。精神が消耗していく。いずれかは集中が切れて突破されるかもしれない。できればそれまでに終わってほしい。そう願った。
「厄介なことをしてくれたなぁ……。これじゃ負け戦だよ今のままだと」
戦っているプレイヤーはミキみたいに躱す達人でもない。
死んで散っていくプレイヤーもいる。ミキみたいに強いわけじゃない。集中が切れてくるのもあるんだろう。敵の攻撃を避けれない人もいる。
早期決着にしたほうがいい。これ以上長引かせると危険だ。そう判断する。
「どうにかしないと……。ミキならどうする? この状況をどうやって打破する? 考えろ……。考えろ私。どうにかできないこともない」
必死こいて考えるけれども思いつかない。
「きっついゲリライベントだなぁ」
いっそ諦めてしまおうか――
そう考えた時、上級ででかい声が聞こえる。声を張り上げたのはアルテナ様だった。手には何かしらの箱を持っている。
あれはなんなんだろう。そう思っていると、アルテナ様は声を上げる。
「パンドラの箱の底には希望があります。絶望は、希望で打ち消せる。この底に残った希望を時間かけて増幅させます! 皆さん方! およそ20分! 持ちこたえてください! そうしたら、この厄災は終わります!」
「……20分か。集中的にきつい時間だ」
もっと早く来てくれればよかった。けど、タイムリミットが設定された。
終わりのない戦いから終わりがある戦いになった。それだけでも随分嬉しいものだ。終わりのないただただ精神力を摩耗するだけの戦いなんて、好まないから。
終わりが見えない旅も、戦いも、飽きてくるし、疲れてくる。
疲れこそが戦いにおける敵だと思っていた。
「ここが正念場! 戦えチリンちゃん!」
チリンは頬を叩き、自分に喝を叩きこむ。
でも、この敵の数はチリンにとっても嬉しかった。モンスターハウスと呼ばれるモンスターだらけの部屋に行くこともある。大抵は死ぬのだけれど……でも、生き残れたとしたら嬉しいには違いなかった。
チリンはゲーマーだ。そのゲーマーの血が、大量にあふれる魔物を見て喜ばないわけがない。
どこかきついと思いながらも、嬉しいと思っている自分がいる。
疲労と興奮が同時にチリンを襲う。
「さぁ、コロシアイゲームの始まり……いや、無双ゲー? 殺戮ゲーム? なんでもいいや。チリンちゃんの剣のさびとなれ」
チリンは剣をもってかけていく。