絆の強さ
朱音視点です。
私は目の前の泣いている女の子の頭をゆっくり撫でる。
私の友達――美咲は、原田に繋がりを断ち切ってやるといわれた。私と離されると思っているらしい。それはちょっとうれしかった。あんなことをした私でも、友達と思ってくれているということを。
本来は許されるべきじゃない私を許して、友達にしてくれた。みさは、とても優しい。優しくて……誰にも弱みを見せないそんな女の子だった。
でも、そんな彼女が私にはじめて弱みを見せた。人前では泣かないと聞いていたけれど、私の目の前で泣いてくれた。信頼してくれたと思ってもいいのかな。
「みさ。大丈夫だよ。原田はなんとかする」
私は原田が許せない。
私は泣いているみさを抱きしめて、ある決意をした。
私はすぐに帰り、珠洲ちゃんの家に行く。
「……どうするよ」
珠洲ちゃんにそう問いかける。
珠洲ちゃんは少し考える仕草をした。そして、重たく口を開く。
「朱音。放っておこう」
そう珠洲ちゃんが言ったのを、驚いた。
珠洲ちゃんが放っておこうだって……? 幼馴染のピンチを、助けないっていうのか? それはいくらなんでもひどいんじゃないの?
私は軽蔑の視線を向ける。でも、珠洲ちゃんはきりっとして私を睨み返す。
「原田が言ったことは許せないけどさ……。私は、この決着は美咲自身が付けるべきだと思ってる」
「みさ自身が……?」
珠洲ちゃんはそういった。
みさ自身が決着をつけるべきだって……。
「美咲が、自分の手で過去の因縁と断ち切らないと、たぶん終わらないと思う。原田の相手は美咲自身ですべきだ。酷な話だと思うけど……自分で決着をつけない限り、美咲は先に進めない」
いつもの珠洲ちゃんらしくなくそういった。
私は、軽蔑の視線も向けることはしなくなった。たしかに、言う通りだと思ったから。けど、このままみさが傷ついているところを見ているのも、私自身が嫌だ。
どうすればいいんだろうか。その答えは未だ見つからず。
「私は美咲を前に進ませたい。だから……慰めはしても、弔い合戦はしない」
「……美咲死んでないよ?」
「……なんて言えばいいんだ?」
「えーっと……かたき討ち?」
「……弔い合戦と同じじゃないのそれ」
「……さぁ?」
さっきまでの雰囲気が台無しになった気がした。
「こほん。ともかく、私は手助けしないから。美咲自身が何とかするのを待つよ。どうしてもだめなら……私は一緒に戦ってあげるけど」
「……どうしても、ね」
「うん。自殺しそうなほど追い詰められることもあるかもしれない。美咲には幸せになってほしいから、死なせたくない。だから、私がダメだって判断したらいくよ」
「……判断を間違えないでよ」
私がそういうと珠洲ちゃんは笑う。
「私は美咲と生まれた時からずっといたんだよ? それぐらい、大丈夫」
二人の絆の強さが垣間見えたような気がした。
珠洲ちゃんは美咲のためを思ってそうしています。
美咲は過去を自分で断ち切るべきだと判断しました。