二人そろって風邪をひく
六月も中盤だなぁ。暑いなぁ。五月もめちゃくちゃ暑かったなぁ。
いや、今日は……
「「蒸し暑い……」」
真綾と私でそうつぶやいた。
外はざーざーと雨が降っていて、小さい男の子が窓を開けてその雨が中に入ってくる。じめじめしててものすごい不快感。
布団にくるまりたくないなぁ。暑いなぁ。
「窓閉めてほしい……」
「うう、動けない私に腹が立つ……」
風も吹いていて、私の横の窓を開けっぱなしにしやがったあの子供許さん。私と真綾に雨風が当たり、ベッドがびしょ濡れだよ。
教育はちゃんとして。お願いだから……。
「な、ナースコールでもしよう」
「そうだね。うん、さすがにびしょびしょだし」
真綾がナースコールを押した。
数分もしないうちに真壁さんがくると、ものすごく驚いていた。
「なんで濡れてるんですか!?」
と言われたので二人で窓を指す。
「なんで開けっぱなしに……」
「小さい子どもが開けっぱなしにしたまま帰りました」
「シーツも布団もぐしょぬれ……。替えましょう」
そして、数人のナースさんが協力してシーツ交換をしてくれたのだけれど。
「「はっくしゅん!」」
同時に真綾と私がくしゃみをする。
ああ、なんか体が火照ってきたな。暑い……。すると真壁さんが私の額に手を当てる。
「ね、熱出してるじゃない! 今すぐ手当てするわ!」
「中村さんも出してます!」
「ああ、ちゃんと教育しなさいよ! こんな雨の日に窓開けたらどうなるかわかってるじゃない!」
真壁さんは相当ご立腹だった。
私はぼーっとする中、真綾を見る。真綾も少しぼおっとしているようだった。二人ともついてないな。体が火照っているのに肌寒い。濡れてるからだろうか。
「今すぐ体拭くからね。山本さん、中村さんも拭いてあげて」
「かしこまりました。では、失礼しますね」
タオルで拭かれたのだった。
風邪ひいた時って無性に寂しくなるよね……。
なんていうか、孤独感を感じる。昔から風邪ひいた時だけは優しかったなぁ。お母さんもつきっきりで看病してくれて……すりおろした林檎が美味しかった。
こう、普段厳しかったり優しくなくても風邪の時だけはすごく優しくて……ずっと風邪ひいていたいなって思ったこともあったっけ。
「……お母さん」
と呟いたのは私じゃない。真綾だった。
真綾は眠っていて、多分うなされてるんだろう。真綾も真綾で寂しいのかな。
「……あぁ、私も眠くなってきた」
ちょっと息苦しいかな。
点滴はうたれてるけど……。でも、ほんとにあの子供だけは許さない……。私はそう思いながら目をつむる。意識は数分もしないうちに落ちていった。




