負のスパイラル
真野ちゃんと話していると、珠洲たちもやってきた。
「美咲。また悪いニュースだよ。いじめていた主犯格の女子が飛び降りそうになった」
そうになったと未遂ということを伝えてくる。
きっといじめられたんだな。自分が悪いと露見すると今度はいじめた側がいじめられる側に回る。原田もそうだったらよかったんだけどめげずに私を苛めてきて、またみんなはいじめてきた。朱音も今でこそ反省はしているけれど原田に倣っていじめてきた。
「まぁ、自業自得だとは思うけど、報復はやりすぎだね」
「うん……。今回は運よく止められたけど……苛めたほうの女の子は精神がおかしくなってる。鬱っていったらいいのかな。見ていて可哀想になった」
「……そっか」
これで自分がしたことの重大さが分かったんだろう。
因果応報といったらいいのか。同情はあるけれど……でも、許せない行為をしたのも事実。
「学校側にも親の不信感が溜まってくばかりで毎日電話が入ってるらしいよ」
「まぁ、短い期間に自殺未遂を二人出したらそれはね」
珠洲と地衣はため息をついた。
そして「なんでこんなことになったんだろうね」と呟く。そらいじめが悪いからだ。いじめは負のスパイラルでしかない。誰かがいじめという負のスパイラルを発動させてしまったことで悲劇が悲劇を生む現実になる。
「美咲ちゃんの学校大変そうだね……」
「うん。多分今が滅茶苦茶大変だと思うよ」
今年の一年生は相当やばいやつらだな。
去年までは結構和気あいあいとしたような穏やかな感じだったけど一年生がいじめというものを持ち込んできたのがいけないんだと思う。
「最近みんなピりついてるからさ、あとクラスのみんなも『広瀬いないとつまんな』とかみんな喚いてるし……」
「え、そんな喚いてるの?」
「広瀬にセクハラできない!とかいろいろ言ってるよ」
……殺意が湧いたぞ。
おい、貧乳とかバカにしたいんだろ? お前……貧乳なめてたら貧乳になくし貧乳に殺されるからな! というかそんな寂しいならお見舞い来いよ。
「まぁ私たちがお見舞い行かせないのも不満点かもしれないけど」
「え、何で行かせないの」
「なんか、私は必死こいてあまりお見舞いいけないのにクラスの奴らがいけるなんてむしゃくしゃするから」
ただの私怨じゃないですかやだー!
「それでもダメな場合は美咲のおっぱいより私のおっぱいのほうがいいだろうって珠洲が止め」
「あ?」
それを聞いて私は隣に座っていた珠洲の腕を掴む。
おい。なんだ、それは。なんていった?
「ち、地衣! それは言わない約束じゃ」
「……自分で認めたな? 嘘だって否定したら……許してたのに」
「ち、ちが……! 説得するにはどうしても下心を使うしかなく……」
「言い訳、通じると思う?」
私は珠洲ににっこりとほほ笑んだ。
「死神の笑みだ……」
「失礼な。女子高生の笑みですよ? 葉隠さん」
「わぁ他人行儀……」
「それで葉隠さんはもう帰らないのですか? 帰り口はあちらです」
私は出口を指してあげた。私優しい。




