幽霊船よ!前に進め! ③
船底の階段を上る。
ルシファーは飛行スキルで足をつけずに上がり、ミカエルはハチを抱えて、マーヤは足音を消していた。音を立てずに階段を駆け上がり、ドアを開ける。
ついたのは操舵室みたいなところだった。舵があり、独りでに回っている。
「……怖い」
「大丈夫です主」
ルシファーに抱きついた。
ゾンビは今のところいないようだ。操舵室を開ける。長い廊下があった。長い廊下の真ん中に階段らしきものがある。そこから駆け上がるしかないようだけど……。
問題なのは、少し暗いことか?
「一気に行くよ。ついてきて」
マーヤは走っていった。ルシファーとミカエルはそれについていく。
すぐに階段についた。そこまではいいんだけど……なんか、来た道から足音が聞こえる。それも複数……。もう私たちに察知し始めたのか……!
やばいやばいやばい! 怖いって!
「きたきたきたきた――!」
思わずルシファーに抱きつく力が強くなる。
「ちっ。気づかれたか。おい、マーヤとやら、急ぐぞ」
「……わかったよ。足音を立ててもいいよね。もう遅いし」
マーヤはそういうと階段を一気に駆け上がっていく。ルシファーとミカエルも全速力で飛び始めた。
そうして一気に甲板まで出るんだけど、ここからどうやって脱出するかが問題だ。甲板にでて、私はルシファーから降りる。
そして、海のほうまで行く。広いなぁ。いや、そうじゃなくて。
飛行スキルを使って……でもどっちが大陸かわからない。
その時だった。
「ミキ様! 危ない――っ!」
「へ?」
振り向いた瞬間、私の首が吹き飛んだ。
体力は……なんかぎりぎり1残ったままで。
「はあ!?」
私の胴体が転がるのが見える。そして、独りでに動き出した。なにそれ!? 私今どうなってるの!? 生首状態!?
なにそれめちゃ怖いんですけど!?
「デュラハン……!」
ルシファーはそういうと私に剣を向けたモンスターと対峙する。
私の体が勝手に動いてるのは無視? ねえ、怖いんだけど!? 自分の体のホラーなんか見たくなかったよ! 私は目をつむる。
「……ミキ、意識あるの?」
「へ!?」
マーヤがそう聞いてきた。
「鑑定するとデュラハン状態っていう状態異常になってるね」
「何それ怖い」
「切られるとデュラハンになるみたいだね。仲間づくり?」
「……いっそ殺してください」
リスポーンさせてほしい。
ルシファーはデュラハンと対峙する。だけどすぐに終わったのだった。デュラハンは倒れた。あとは私の体が暴れてるのを防ぐだけなんだけど…。
独りでに動く動体なんか見たくなかったし! しかも私の体だし!
「……普通にくっつけられないかな」
「え!?」
マーヤは私の頭をガシっと掴み、暴れている胴体をルシファーが拘束する。そして、ぐいっと私の頭を胴体に押し付けた。
すると、なんか胴体が動かせるようになった気がする。
「も、戻った!?」
「みたいだね」
どうやらデュラハン状態は終わったようだ。
あ、あー怖かった。さて、どう脱出しようか。そう悩んでいると。なんか聞いたことがある鳴き声が聞こえてくる。
「なんか今ピュウイ♪って聞こえなかった?」
「聞こえたよ。鳥かなんかじゃないの?」
「…いや、この魔力は鳥ではない。ドラゴン……? このような魔力を持つドラゴンは聞いたことないが」
と、ドラゴンが、私たちののもとに現れた。
子竜と、その親。それは…。
「ランティス!? アクア!?」
「来ちゃいました。ご主人様」
なぜかこの世界に来ていたアクアたちだった。
デュラハン。
生体の反応があると仲間にしようとする。切られると仲間になる。一説によると自分の首を求めて仲間にし首を奪おうとするのだとか。