死に行く人
しばらく一日一更新が続くかもしれません。
本日はこれだけです…
天使アリエルは天界に帰っていった。
私もチリン達のところに戻り、ログアウトするってことを伝える。
「ふぅ」
ヘッドギアを外す。
今の時間は夜九時を指していた。真綾は隣で明かりをつけて小説を読んでいる。
「ゲームやめたんだ」
「うん。さすがにぶっ続けでやるの疲れるしね」
ヘッドギアを傍らに置き、私はテレビをつけると真野ちゃんが主演を務める映画が放送されていた。映画の内容は閉じ込められた20人の高校生たちが外に出るために殺し合いをするというもの。
凶器はふんだんに用意されているけれど銃器の類はなく、また凶器を手に入れるにはそれなりの対価が必要だということだ。
これ最初見た時ビビったんだよね。
結末はこの世界がゲームだということ、ゲームの中で殺し合いをしていたということ。なぜしたのかというとこの20人は人を苛めていた。いじめていて人を自殺にまで追いやった。人に追い込まれる恐怖をわかってほしいという自殺した子の父母の願いがかなったからだった。
それからというもの、20人は死に怯えながらも生きていく。自分がしたことの重大さを理解して謝って償って前を向いて生きていくというものだった。
「殺し合いとか怖いからしてみたくないなぁ」
私は誰を殺そうとも思わないけれど、誰かに殺されるとは思う。
「そうだね。殺し合いはしたくないね」
隣で真綾が小説を置いてテレビをつけた。
同じ番組をかけたらしい。
「私、これ見たけど臨場感すごかったよ」
「私も見た。本当にやばかった」
「でも、考えさせられるよね。死の恐怖におびえながらも死ぬしかなかったいじめられっ子。なんとなく、私もいじめるのはやめておこうと思ったよ」
「それがいいよ。死ぬのは怖いしね」
いじめてもろくなことにはならない。
目の前の映画では一人の男子高校生が女子高生に追い詰められていた。女子高生の手には日本刀を持っている。真野ちゃんが演じる女子高生だ。
真野ちゃんは振り下ろそうとするけれど、体が動かない。人を殺すのをためらっていたのだった。
すると、男子高校生は背後からロープで首を絞められる。首を絞められて苦しそうにもがく男子高校生。
そして、全身から力が抜けていた。
『ダメじゃないか。殺すなら殺さないとね……?』
『ひっ!?』
『まず一人。次は…お前だって言いたいけど、日本刀とロープじゃ相手にならないからやめておくよ。じゃあね』
と、男は逃げていく。
「死んでいく人の気持ちってどんなんだろうな」
真綾がそうつぶやいていた。
私は答えようとしたけれどやめておいた。怖いのは当たり前だし死にたくないっていう気持ちもある。けれど、死ぬしかないから仕方がない。
でも、この気持ちは答えちゃだめだと本能で悟った。