一回目の自殺
美咲の回想です。
あと、生々しいっていうか、残酷? 流血表現があります。
いじめ、自殺と聞いて思い出すのは過去のこと。二回の自殺の事だ。二回目はなんとなく覚えてるし、一回目もそれとなく覚えてる。
小学校何年生の時だろうか。
「お前きしょいんだよ! 死ねや!」
私は、どんっと突き飛ばされる。後ろにはクラスで飼っていた金魚の水槽があってそれに直撃し、水槽が割れた音が聞こえた。
水がばしゃーっと地面に広がっていく。私の服にも水がかかり、割れたガラスの破片が刺さって痛い。だけど、弱音は吐けない。
私は黙って立ち上がる。
「うわ、立った! クララが立ったぁ~!」
クラスが私を嘲笑う。
私は血を止めるべく保健室に向かった。悲しくなってきた。もう学校行きたくない。親に相談してもみんなそうなんだからと言ってきて聞く耳を持ってくれない。
原田を筆頭とする男子いじめは毎日エスカレートしていく。目に見える怪我をさせないので親も気づかないし、親にチクると後が怖いのでなかなかできないし。
私、どうしたらいいんだろう。
保健室までゆっくりと歩いていくとチャイムが鳴った。授業はじめを知らせるチャイムだ。
保健室で傷を手当てしてもらったらすぐに戻ろう。先生にチクったら殺される……。この怪我のいいわけでも考えていよう。
全部の授業が終わり、男子が帰っていく。
私も立ち上がって帰ろうとすると、今度は女子に止められた。
「あんたうざいんだよ! 学校くんな!」
突き飛ばしてくるのは女子の派閥のトップを務める霧崎さん。
霧崎さんに突き飛ばされ、机にぶち当たる。痛い。
「なんでこんなにもいじめられてるのに学校くんの? 頭おかしいんじゃない?」
「うざいから早く消えてよ」
「キモイから早く消えろ」
「「「消ーえーろ、消ーえーろ」」」
シュプレヒコールが湧きがある。
私だって好きで通ってるわけじゃない! 行かないと親に怒られるんだもん……! 辛いのは私だけじゃないって……! これ以上辛い目にあってる子なんていないのにっ……!
思わず、涙が頬を伝う。
「わ、泣いた」
「泣けばいいと思ってるの?」
「気持ち悪いんだよ!」
なら、私はどうすればいいんだよ……。
泣くことも、許しを乞うことも、助けを求めることも何もできなくて。私はどうすればいいの!?
私はふとカッターが目に入った。そして、頭にテレビの番組がフラッシュバックする。
そういえば、前テレビでリスカして死んだ人いたな。私も死ねば楽になれるのかな。
できることがあった。死ぬことだ。
助けを求めることもなにもできないんならひそかに死んでいく。私は帰るといって走って家に向かう。今日は親がいなかった。用事があるといってた。
風呂は溜まってるかな。溜まってるな。
私は風呂の蛇口をひねって水を出す。テレビでいうには血を流れるようにして死ねるとかなんとか。
そして、私は自分の部屋からカッターを持ってくる。
「……死ぬ。死んでやる」
自分の肌を傷つけるのはとても怖い。
けど、私はカッターの刃を出した。前にお父さんに刃を変えてもらったので切れ味には問題はないと思う。
刃を、手首に当てる。怖い。怖い。痛そうだ。血がたくさんでそうだ。
カッターを持つ手が震える。
怖くて、また泣いてしまう。でも、やんなきゃ私は解放されないんだ。死なないと私は幸せになれないんだよ。
死ぬべきだ。私は死ななきゃならないんだ……!
私は、カッターを持つ手に力を込めた。
そして、一思いに手首を思い切りカッターで掻っ切る。痛い。痛くて涙が止まらなかった。血がどぱっと吹き出し、風呂場を赤く染めていく。
私は、すぐに風呂に手首を突っ込んだ。これで、死ねたらいいな。死ねなかったら不幸だな。これ以上私は辛い思いをしたくないな。
そんなことを思いながら痛む左手と排水口流れていく血と水が混ざった液体を眺める。
あぁ、頭がぼーっとしてきた。
意識が持っていかれそうだ。ふふふ、死ねるだろうな……。私は目をつむった。
「ただいまー……って美咲風呂入ってるの? ……って何してるの!? 美咲!?」
目は開けられないけど声が聞こえてくる。そして、すぐに悟った。
邪魔が入ったな、と。
そして、私は意識を手放した。
いじめって聞いて思い出したんでしょうね。
美咲は過去の経験を思い出すことによってなにかを得ようとしてるのかもしれません。




