雪女
アンデッドは個人的に相手をしたくないモンスターナンバーワン。というか、お化け自体無理なのにアンデッドなんかを相手できるかっての。
でも、出るにはやらなきゃいけないんだよなぁ。どうしようかなぁ……。
とりあえず歩いていると急に吹雪きだした。
「急に吹雪いて……。変な気候やなぁ。って、あそこ、誰かおるで?」
……見なかったことにしたい。
多分吹雪いて誰かいるって十中八九あれだろ。絶対あれだろ。妖怪だよな? というか、なんとなく察したぞ。おいおい。こうも会いたくないモンスターに会えるって厄日すぎない?
と思っているとその影は近づいてくる。私たちは戦闘態勢をとる。
吹雪の中現れたのは白い浴衣を着た白い髪の女性。
「……やっと人に会えた!」
と、その女性は抱きついてくる。
え、何この状況。というか、誰だよあなた……。
「あなた、人間!? いや、神! でもいいわ! 私の話し相手になりなさいな!」
「え、ええ……。ってか誰」
「私? 私は雪女のフブキよ!」
やっぱり雪女さんですよね!
なんていうか、抱きつかれてわかるんだけど体温がものすごく低い。NPCと触ると体温は感じるぐらい作りがいい。だけどフブキはめちゃくちゃ体温低い……!
というか、油断させて襲うつもりなのか!?
「ふふ、私は嬉しくなると吹雪を起こしちゃう性質でさ……。周りが怒ってるって勘違いして誰も近づいてくれなくて……。ここ数百年ろくに会話もしてなくて寂しくて寂しくて! 存在してる! 幽霊じゃない! 生身の体だ!」
ぺたぺたと私の体を触ってくる彼女。
いいやつなのかはまだ判断が難しい。一応戦闘態勢は解いておくけれどさ。
「とりあえず小屋いって話そう! 囲炉裏あるよ!」
「雪女が囲炉裏の前に立つって溶けそうだな……」
「私、体は普通に人間みたいなものよ? 人間の体ではないけれど人間に近い体だから溶けないわ。ただ暑いのは無理だけどね! 暑がりさんだからね! 雪女ですから?」
どや顔うぜえ……。
どこにドヤるポイントがあったんだよ。とりあえず小屋に行くことにした。
「はいお茶」
お茶を啜る。うん、ちょうどいいような。っていうか美味しい?
「ふっふっふ。私が降らせることができる雪を溶かして作った雪解け水よ! 巷の女性には美容にいいって評判! 私はこういうこともできますし?」
いちいちドヤるな。
でも美味しいのはたしかだ。
「それであなたはどうしてこの山に? いっちゃなんだけどこの山って山菜取りのじいさんくらいしか訪れない平和な山よ? 魔物もなにもいないし。まさか……私に会いに来たの!?」
「いや、いるの知らなかったし……。なんとなく来ただけなんだけど」
「つまり運命ってわけね」
「どういう風に解釈したらそうなるんですかねえ」
なんかちょっとウザく思ってきた。お暇しようかな。
「じゃあ私たちはこの辺で……」
「でもあなたがた強そうだし頼みたいことあるからいいか」
「…………じゃ」
「ねえ、私を仲間にして? したらいいことあるわよ?」
《フブキを仲間にしますか?》
ええ、普通に嫌なんだけど。
でも、いいことっていうのが気になるな。
「これでも私A級妖怪だから強いわよ?」
「階級あるの?」
「魔物にもあるように妖怪にもあるわよ? A級が最上位。有名な妖怪ほど上位に近いわね。A級は誰もが知ってるような妖怪しかないの」
「ふん?」
「で、妖怪は認知度があるほど力が上がるの。誰もが自分の能力とか特性、名前を知っていれば力が大幅に上がるのよ」
「ふんふん」
「だから妖怪はおどかしてインパクトを与えてるのね。力を得るために」
「ほう?」
なかなか面白いシステムだな。
妖怪ってそんなシステムなのか。だから脅かして知名度を得ようとしているのか。
「ただルールがあるの。自分の名前を言わないで脅かすの。人々がつけた名前で有名になるの」
「なるほど?」
「能力とか、特徴とかで名付けられて、それで有名になってA級になるのよ!」
フブキもそうやって有名になったのか。
「妖怪は基本的に死ぬことはないわね。倒されたとしても数時間で復活するの」
……なんですと?
待ってくれ。それって結構重要な情報なんですけど?