真野ちゃんへのプレゼント
私は今、後悔していた。なんでこの怪我を負ったんだろうって。
「真野ちゃんの誕生日がもうすぐなのにプレゼント買いにいけない……!」
真野ちゃんの誕生日は六月三日。今が五月二十二日。あともう少しで誕生日なのにプレゼントを厳選しにいけない……!
これじゃいつも送ってる誕生日プレゼントが送れないではないか!
「この体だと誕生日プレゼント無理そうだね」
「真綾も真野ちゃんに?」
「まあ友達だしファンでもあるからあげるのは当たり前でしょ」
「だよね!」
でも……真綾も私も足を怪我しているからなあ。
まさか真野ちゃんがお見舞いに来て真野ちゃんに真野ちゃんの誕生日プレゼント買いに行かせるわけにはいかないし真野ちゃんをパシリみたいにしたくない。真野ちゃんパシらせるくらいなら私が行く。骨が折れても真野ちゃんのためならば……!
「しゃあない。モデル仲間に頼むか……」
「モデル仲間? 春香?」
「いや、あいつはプレゼント選ぶ素質ないから違う人」
真綾は携帯をいじってどこかに電話をかけていた。
三十分後、その人はやってくる。
「おいーっす真綾。何用事っテ?」
「ん、まず座って」
と、来たのはサングラスをかけた金髪の女の人。
貧乳で……貧乳でっ! ウエストがめちゃめちゃ細い。うわぁ、すっげえスタイルいいじゃん。貧乳っていうのも好ポイント。うん、仲間だね。
どこかで見たことある気はするけれど。
「真綾から呼び出されるなんてどうしたノ? いつも私なのに」
「頼みがある」
「頼み?」
「お金あげるから真野ちゃんに送るプレゼントを見繕ってほしい。隣の子の分も」
「隣?」
金髪のモデルさんは私のほうを向いた。
私は精一杯の笑顔を顔に張りつける。
「初めまして。広瀬 美咲です」
「……可愛い! ねえ貴方! モデルにならなイ!? 社長には私から口添えするわヨ!?」
「え、ええ……」
私に詰め寄ってくる彼女。
サングラスに隠れた目が見える。あ、思いだした。たしか前真野ちゃんと共演していたモデルさんの……! 貧乳で美人だなーって思いながら見ていた……!
「もしかして御手洗 ソマリさん?」
「ビンゴ!」
やっぱり!
たしかハーフモデルなんだっけ? 父がイギリス人で母が日本人の。母のほうの苗字を名乗ってるモデルさんだ。
たしか年齢は27歳という。でもすっげえ昔から衰えないで今も美人の人だ。
「いやぁ、この可愛さなら十分に通じるわネ! ファッションとかどう!?」
「えっ、あー……」
「美咲はファッションには無頓着。誘うだけ無駄だよ」
「そうなの?」
「まぁ普段家ではTシャツにパンツで過ごしてるぐらいですから」
「もったいなイ!」
そう?
見た目より実用性のほうが私は重要視してるんだけど。もったいなくはなくない? いや、確かに見た目も大事だとは思うけど家の中なんだから……。
そもそも私外に出たとしても基本動くからスカートは絶対無理だしデニムも動きにくいから嫌なんだよねえ。
「あなた本当に可愛いのに……。まあいいわ。それよりプレゼント? 私が選んで買ってきてしんぜよう」
「助かるよ。お金は……」
「お金はいいわヨ?」
「自分の金で買ったのじゃないと私が納得しない」
「そう? ならもらうわ」
「おつりでてもいらないからあげる」
「わかったワ。そっちの子はどうする?」
「えっと、五万くらいなら払えるので」
「誕生日プレゼント何買うつもり!? 五万もいらないわヨ!?」
ふっふっふ。
真野ちゃんへのプレゼント選びは手を抜くことはできないんだよ。真野ちゃんへのプレゼントなんだしねえ!
「とりあえず一万でいいワ……」
「わ、わかりました」
私は財布から一万円を取り出して御手洗さんに渡す。
「それじゃ行くわねえ!」
御手洗さんは行ってしまった。




